堂島孝平

私のSAMURAI BLUE Vol. 5 [バックナンバー]

堂島孝平が選ぶ理想の代表イレブン

必要なのはロマン!スキッベ流サッカーを代表でやるとしたら

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4年に一度のサッカーの祭典「FIFAワールドカップ」が11~12月にカタールで開催される。同大会に出場する日本代表チームの応援企画として、音楽ナタリーではサッカーを愛するアーティストに理想の代表メンバーを妄想してもらう連載企画を展開中。第5回となる今回は、Jリーグ・サンフレッチェ広島の熱心なサポーターとして知られ、クラブのマスコットキャラクター・サンチェのテーマソング「サンチェたいそう」の作曲者&作詞共作者でもある堂島孝平に“堂島ジャパン”を編成してもらった。

取材・文・撮影 / ナカニシキュウ

堂島孝平とサッカー

僕は子供の頃は少年野球をやっていて、サッカーをやったことがないんです。ですけど、思いっきり「キャプテン翼」世代でして……ほかにも「オフサイド」「シュート!」「フリーキック!」「がんばれ!キッカーズ」とか、あのへんのサッカーマンガもすごく好きで。だから、サッカーを習っている周りの子たちがうらやましくてしょうがなかった(笑)。もちろん野球は野球で好きだったんですけど、学校の球技大会なんかでは必ずサッカーの試合に出てましたね。あとは高校サッカーを観るのがめちゃくちゃ好きだったのと、テレビ東京で放送していた「三菱ダイヤモンド・サッカー」というサッカー情報番組もよく観ていました。

Jリーグが始まったのが高校生くらいのときで、すごく鮮烈な印象を受けたのをよく覚えています。あのときは世の中が変わったような感じがしましたね。ただ、初期の頃は応援するクラブをなかなか1つに絞りきれなかったんですよ。やっぱり基本的には“おらが街”のクラブを応援するものじゃないですか。でも、僕は大阪生まれなんだけど大阪では育ってないし(※1)、育ったのは茨城県の取手市というところで、同じ茨城でも鹿島アントラーズの本拠地である鹿嶋市はめっちゃ遠いんです。むしろ柏レイソルの千葉県柏市のほうが近いっていう。だからレイソルを応援しようかなとも思ったんですが、そのときに住んでいたのは横浜市で、通っていた学校は平塚市で、という(笑)(※2)。「これはダメだ、決められない」となって。

それで、関東と大阪の間を取って静岡県のジュビロ磐田を応援しようという案もあったんですけど(笑)、とりあえず最初の頃は「全体を楽しむ」という方針でJリーグを観ていました。当時から、いろんなクラブのいい若手選手を見つけるのが好きだったんですよ。それでいろいろ観ているうちに、常にいい若手が育っている印象のあったサンフレッチェ広島が2012年にJ1リーグで初優勝するんですね。そのタイミングで……僕は昔から広島弁を話す女の子に弱かったりとか(笑)、もともと広島という街が好きだったこともあって、いろんな要因が複合的に絡まって結果的にサンフレッチェのサポーターということに落ち着くわけです。今はサンフレッチェ広島を応援しながら、Jリーグ全体もですし、アンダーカテゴリーも含めた日本代表もひっくるめて、いい選手が出てくるのを楽しみにしながら観ている感じですね。

※1. 大阪にはガンバ大阪とセレッソ大阪の2クラブが存在する。

※2. 当時、横浜には横浜マリノスと横浜フリューゲルス、平塚にはベルマーレ平塚があった。1999年シーズンに横浜マリノスと横浜フリューゲルスは合併し横浜F・マリノスに、2000年シーズンにベルマーレ平塚は湘南ベルマーレに名称を変更した。

堂島孝平

堂島孝平

やってみてわかる監督の苦労

では本題の、“堂島ジャパン”のメンバー選考ですが……現実味を取るかロマンを取るかで悩んだんですけど、今回はロマンを取ろうかなと。まず、システムは3-5-2(※3)で。これは今サンフレッチェ広島のミヒャエル・スキッベ監督がチームで採用しているフォーメーションで、とてもいいサッカーを見せてくれているんですよ。日本人のアジリティを生かすサッカーと言うんですかね。「フォーメーション込みで人を生かす」みたいなところをうまく日本人の特性に合わせて落とし込んでくれている気がしていて。なのでこのフォーメーションを軸に、その形を生かすメンバー構成をしていこうかなと考えたんですが……やっぱりいろいろ矛盾は出てくるんですよ(笑)。使いたい選手とやりたいフォーメーションを合致させるのって、本当に難しくて。みんな、ポイチ(森保一監督の愛称)さんのことを簡単にあれこれ言いますけど、「この難問に対して非常に前向きに取り組んでくれているんだな」と改めて感じました。やってみてわかったというか。

具体的な人選についてですが、まず今の代表選手の中でカギになる選手ということで言うと、僕は伊東純也(スタッド・ランス / フランス)をどうしても使いたい。ただ、このフォーメーションで伊東を使おうと思ったら、右のウイングバック(※4)に置くしかないんですよね。めちゃくちゃ守備をしてもらうことになってしまう。ここで早くも矛盾が生じているんですが(笑)、これ以外に方法がないんですよ。南アフリカ大会(2010年)のとき、両サイドハーフに入った松井大輔(Y.S.C.C.横浜)と大久保嘉人が死ぬほど守備をがんばったじゃないですか。ああいう仕事を伊東にも期待しようと。そうなるとけっこう早いタイミングで体力を使い果たすことが予想されるので、この位置は堂安律(フライブルク / ドイツ)もいけると思うから、2人で1ポジションみたいな使い方はどうかなと思っています。どっちが先でもいいんですけど、前半と後半で分担してもらうイメージですね。

そして、広島のサッカーを実現するうえでもっとも重要になってくるポイントは、野津田岳人(サンフレッチェ広島)のワンボランチ(※5)起用。皆さんには伝わりづらい話かもしれませんが、今の広島はこの形でものすごくうまくいってるんですよ。最初は広島サポですら「岳人がそこを1人で?」と疑問に思ってたんですけど、フタを開けてみたらめちゃくちゃ機能していて。デュエル(※6)にも球際にも強いし、パサー(※7)としても機能するし、そのうえプレースキッカー(※8)としても秀でたものを持っている。野津田を代表のワンボランチに据えるというのは、僕にとってすごいロマンですね。その野津田の前には、田中碧(デュッセルドルフ / ドイツ)と守田英正(スポルティング / ポルトガル)を配置します。特に守田は欠かせないなと思っていて……僕はこのチームを3-4-2-1(※9)としてもやれるように考えているので、その場合は野津田と守田のダブルボランチにしたいなと。

※3. DF(ディフェンダー)が3人、MF(ミッドフィールダー)が5人、FW(フォワード)が2人のフォーメーション。

※4. 守備時はサイドバック、攻撃時はウイング(左右に開いて攻撃を行うFWのこと)のような役割を担うMFのこと。ポジション名に「バック」が含まれるためDFの一種と誤解されがちだが、MFの一種。基本的にはサイドバックを置かないスリーバックシステムでのみ採用されるポジション。

※5. 「ボランチ」はディフェンスラインの前方にポジションを取る守備的MFのこと。ポルトガル語で「ハンドル」を意味する語で、攻守のバランスを取りながら試合をコントロールする役割が求められる。この役目を1枚で担うのが「ワンボランチ」、2枚の場合は「ダブルボランチ」。

※6. 1対1の攻防のこと。英語で「対決」を意味する語。日本ではヴァイッド・ハリルホジッチ監督が多用したことで広まった表現。

※7. パスの得意な選手のこと。「pass」+「er」=「passer」。

※8. 「プレースキック」はフリーキックやコーナーキックなど、一時中断したゲームをリスタートする際に止まった状態のボールを蹴るプレーのこと。プレースキックを担当する選手が「プレースキッカー」。

※9. DFが3人、守備的MFが4人、攻撃的MFが2人、FWが1人のフォーメーション。

堂島監督が掲げる理想の戦術

あと、これはちょっとあり得るのかわからない起用になりますけど、遠藤航(シュトゥットガルト / ドイツ)をセンターバックの真ん中に置きたくて。センターバックとしては高さに不安があるかもしれないけど、例えば4-4-2(※10)に移行するようなケースも考慮すると、遠藤は置いておきたいんですよ。その両脇には冨安健洋(アーセナル / イングランド)と板倉滉(ボルシアMG / ドイツ)にいてもらって、野津田を含めた4人でビルドアップ(※11)をしてもらいたいなと思っています。で、左のウイングバックには相馬勇紀(名古屋グランパス)。チームのために走れる人ですし、けっこう現実的にもあり得る人選かなと思いますね。

ツートップ(※12)には、まず鎌田大地(フランクフルト / ドイツ)を使いたいです。彼は本来トップ下(※13)とかインサイドハーフ(※14)に適性のある選手だと思うので、少しサイドに流れたりもしながら起点を作るセカンドトップ(※15)の役割をやってもらおうかなと。一番迷ったのが、トップは上田綺世(セルクル・ブルージュ / ベルギー)なのか古橋亨梧(セルティック / スコットランド)なのかというところなんですけど……やっぱりこの3-5-2の形だと、ある程度ハイプレス(※16)を仕掛けてショートカウンター(※17)を狙っていくことになると思うので、攻守の切り替えスピードだったりプレッシング(※18)、とっさに来たボールをワンタッチで沈める技術みたいなところを考慮して、スタートには古橋を選んでみました。

GK(ゴールキーパー)は、やはり心情的にも大迫敬介(サンフレッチェ広島)を選びたいですね。若さゆえのミスもまだあるのは確かなんですけど、見事なファインセーブもよく見せてくれるので。あとはキャッチングの技術も高いから、普通ならパンチングではじきそうなボールでも彼は捕れたりするんですよ。それによってすぐさま自分たちの攻撃の時間に持っていけるというのはアドバンテージになると思います。そういう意味では、シュミット・ダニエル(シントトロイデン / ベルギー)にも控えにいてほしくて。あと、東京オリンピックで大迫とのポジション争いを制した谷晃生(湘南ベルマーレ)もメンバーに選びました。

堂島孝平ジャパンのフォーメーション

堂島孝平ジャパンのフォーメーション

戦い方としては、スリーバック(※19)ではあるんですけど守備時にファイブバック(※20)にするかというと……伊東が最終ラインに入るイメージはないですよね(笑)。だからウイングバックは相手のウインガー(※21)に張り付くイメージかなあ。攻撃面では、ツートップがポストプレーヤー(※22)タイプじゃないこともあるので、サイド攻撃が中心になってくると思います。その中で、鎌田がどちらかのサイドに流れて起点を作るケースが多くなると思うので、それによって空いたスペースに田中や守田が出てくるとか。あるいは片方のサイドで起点を作っておいて、空いた逆サイドに振って伊東なり相馬なりが決めるみたいな……すごい理想だけで言ってますけど(笑)。そういうサッカーを観たいなっていう。

※10. DFが4人、MFが4人、FWが2人のフォーメーション。世界的にもっともオーソドックスと言えるバランスのいい布陣で、カウンター戦術に向いていると言われる。

※11. 自陣後方からパスやドリブルを用いて攻撃を組み立てること。一般的にはロングボールではなくショートパスをつないで前線へ攻め上がる攻撃を指すことが多い。

※12. 「トップ」はセンターFWの選手を指す語で、そのポジションが1枚の場合は「ワントップ」、2枚なら「ツートップ」と呼ばれる。

※13. トップのすぐ後方(つまり「下」)にポジションを取る攻撃的MFのこと。攻撃を組み立てる役割や決定的なパス出し、自らシュートを放ち得点する能力などが求められる。

※14. FWと守備的MFの間にポジションを取る攻撃的MFのこと。

※15. トップの選手よりも若干引いた位置で攻撃を担うFWのこと。「トップ下」と似ているが、トップ下はMFの一種で、セカンドトップはFWの一種。なお「セカンドトップ」に対して最前線の選手を「ファーストトップ」とは(なぜか)呼ばない。

※16. 「プレス」はプレッシャー(ボール保持者への圧力)のことで、敵陣ゴール寄り(つまり高い位置)から積極的にプレスを掛けていく戦術のことを「ハイプレス」と呼ぶ。

※17. 「カウンター」は相手のボールを奪って一気に攻撃へ転じること。通常は自陣ゴール寄りの位置から始まるプレーだが、これを敵陣ゴール近くから短い距離で行う場合にしばしば「ショートカウンター」という表現が用いられる。

※18. プレスを仕掛けること。

※19. センターバックを3枚配置する布陣のこと。現代サッカーのフォーメーションは大きく分けてスリーバックとフォーバックの2種類が主流となっており、フォーバックの場合はセンターバック2枚+サイドバック2枚の形が基本。

※20. 最終ラインを5枚で守る守備陣形のこと。

※21. 両サイドに開いて攻撃を行うFWのこと。「ウイング」とも。

※22. 「ポストプレー」は前線で相手DFを背負いながらボールをキープし起点を作るプレーのこと。そのプレーを得意とする選手を「ポストプレーヤー」と呼ぶ。ちなみに「ポスト」は英語で「杭」を意味する語。

堂島孝平

堂島孝平

サブメンバーについて

このチーム的に欠かせないなと思っているのは、実は菅原由勢(AZアルクマール / オランダ)なんですよね。「今の代表から伊東を外すわけにはいかない」という理由でウイングバックに伊東を無理やり入れましたけど、本来ここに使うべきなのは菅原かなと思っていて。それと、旗手怜央(セルティック / スコットランド)。彼は本当にどこでもできる万能タイプですし、このチームにはぜひ欲しい選手です。

「今の代表から外すわけにはいかない」で言うと、三笘薫(ブライトン / イングランド)も完全にそういう選手ではあるんですけどね。僕自身、今の森保ジャパンでは三笘と伊東という両翼がストロングポイントだよなと本当に思いますし……ただ、繰り返しになっちゃいますけど目指すサッカーと使いたい選手はそう簡単に両立しないんですよ(笑)。今回は本当に「スキッベさんのサッカーを代表で見たい」というロマンの部分を優先させてもらいました。

堂島孝平の登録メンバー

堂島孝平の登録メンバー

自分をサッカー選手に例えると?

僕はたぶん、ポジション的にはトップではないと思うんですよ。一般的にはソロアーティストってセンターFWタイプの人間がやる仕事だとは思うんですけど、僕の場合は表に立つ活動だけじゃなくて、裏方もやるので。だからポジションで言うと1.5列目(※23)とか、シャドー(※24)とかになるのかなと。周りを生かして試合をコントロールするボランチへの憧れも正直あるんですけど、人に使われることに対する喜びもけっこうあるタイプだし、無駄な走りとかも好きだし(笑)。

具体的にそれを選手名で言うなら……この名前を挙げていいかはわからないですけど、岬太郎かもしれないです。「キャプテン翼」の(笑)。僕、小さいときからずっと岬太郎になりたかったんですよ。僕も岬くんと同じく転校生というか、これまでレーベルを転々としてきまして(笑)。わりと1つのところにとどまらず、いろんな人と組んだり接点を持つことで今があるミュージシャン人生だと思うんですよね。以前、佐野元春さんから「堂島くんはミュージシャン界のハブだね」と言われたこともあるんです。「いろんな人と人とをつなげる接点になれる人だ」って。それで言うと岬くんも、翼くんとも日向小次郎ともうまくやれるタイプじゃないですか(笑)。考えれば考えるほど岬太郎ですね。我ながら、今めちゃくちゃ腑に落ちてます。

※23. 一般的に最前線に位置取るFWを「1列目」、攻撃的MFを「2列目」と呼ぶ。現代サッカーでは1列目と2列目の中間的な役割を担う選手が増えてきていることから、これを俗に「1.5列目」と表現する。具体的には、トップ下やセカンドトップ、シャドーストライカーなどを指す場合が多い。

※24. 「シャドーストライカー」の略。センターFWの少し後方に影のように位置取り、得点を決める仕事が求められるポジション。

堂島孝平

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※カッコ内の所属クラブは2022年9月23日(金・祝)12:00時点

堂島孝平

1976年2月22日大阪府生まれのシンガーソングライター。1995年2月にシングル「俺はどこへ行く」でメジャーデビューを果たす。1997年にアニメ「こちら葛飾区亀有公園前派出所」のテーマソングでもある「葛飾ラプソディー」をリリースし、全国区で注目を集めた。2019年に自主レーベル「Quwabara² Records」を設立し、配信シングル「頬」をリリース。2022年8月には眉村ちあき、坂本真綾、土岐麻子らが参加したアルバム「FIT」を発表した。ソングライターとしての評価も高く、KinKi Kids、藤井フミヤ、山下智久、Sexy Zone、PUFFY、THE COLLECTORS、藤井隆、Negicco、アンジュルムなど数多くのアーティストへ楽曲提供したりサウンドプロデュースしたりしている。
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堂島孝平 (@Dojima_Kohei) / Twitter

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この企画ほんとに楽しくって全然時間が足りなかったです。ロマン重視の3-5-2! https://t.co/mdOB563ocK

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