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能町みね子

それぞれのNHK紅白歌合戦 第2回 バックナンバー

実家で“ながら見”を続ける能町みね子

過去2年の名場面や能町流の楽しみ方

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大晦日の「紅白歌合戦」の放送に向けて、各分野で活躍する3人に番組の楽しみ方や「紅白」にまつわるエピソードなどを聞き、さまざまな視点から「紅白」の魅力に迫るこの連載。第2回には2016年の放送中、Twitterに番組に対する独自の見解を投稿していたことが話題になった能町みね子が登場し、過去2年の番組内容を振り返りながら、今年の見どころと能町流の楽しみ方を教えてくれた。

取材・文・構成 / 中村佳子(音楽ナタリー編集部) 撮影 / 阪本勇

最近、楽しみになってきた

2016年の大晦日に初めて「紅白」を最初から最後まで観ました。そもそも私、子供の頃はテレビっ子ではなかったんですよ。小さい頃、たまが「さよなら人類」で出た回はうっすらと覚えています。たまはアルバムを何枚も買うくらい大好きだったので。中高生の頃は親が「紅白」を観るから私も観るという感じで、特に好きなアーティストが出るわけではなかったし、アイドルに夢中っていうこともなかったので、自分でチャンネル権を持つようになってからは観なくなりました。でも自分の年齢的なものなのかはわからないですけど、最近になって「紅白」をストレートに楽しめるようになってきています。昔は家族団らんで、1台のテレビでみんなで観るスタイルが主流だったと思うんですけど、今ってそういう番組はほとんどなくて、「紅白」が唯一それに当たるのかなっていう気がします。「紅白」は実家で親と観るんですけど、「紅白」に限らずテレビを観てると「どこか変だな」って思うところに目がいくじゃないですか。誰でもそうだと思うんですよね。で、それがさらに穿った見え方をしたときに親に言うことでもなかったりするから、2016年はそれをTwitterに流していました。

2016年はタモリさんとマツコ・デラックスさんが、なぜか2人で舞台裏を中継していましたよね。この年はゴジラが出ることによっていろいろと食い違いを起こしていて、実況のしがいがあったというか。NHKホールに接近しているゴジラに音楽を聴かせると、ゴジラが凍結するという設定で。X JAPANのYOSHIKIさんが「相葉(雅紀)さん、有村(架純)さん、僕たちが止めます」って棒読みで言ったのは印象的でした。初出場の方もいっぱいいたようですけど……X JAPANに持って行かれましたね。それと、THE YELLOW MONKEYの出場もうれしかったです。出演者や曲を見ると、この年は30代向けに作られたような印象だったんですよ。若い頃は大人が昔の曲を聴いて懐かしがっている光景について行けないところがあって。でもイエモンが「JAM」を歌っているのを聴いて、「あの頃の大人たちの感覚に追い付いちゃった」と思ったんです。世代的に高校生の頃に聴いていた曲だったし、30代後半になって、自分たちが社会の中でもまあまあな位置に来ちゃったんだなっていう感慨がありましたね。

2017年の大晦日はAbemaTVの「朝青龍を押し出したら1000万円」をどうしても観たかったので、2番組をザッピングしていました。2016年にTwitter実況をしたことへの反響は確かにあったんですけど、そのために必死になって観るのも嫌だったし、あんまりそこに義務感持つもの違うなと思って。私はこたつに入ってスマホで朝青龍を観つつ、隣の居間のテレビで親が観ている「紅白」を覗いていました。それと2017年は実家に帰るのが遅くなって、最初からは観られなかったんですよ。三山ひろしさんのけん玉の失敗は目撃しましたけど。「124人連続成功というギネス世界記録に挑戦」って言いながら14人目で失敗するっていう。あの14人目の方が好きすぎて似顔絵も描きましたから(笑)。「あの人、今年はリベンジするのか?」というところも気になります。エレファントカシマシは昔から普通に好きだったからすごく楽しみにしていたんですけど、朝青龍のいいところと時間的に被っていてしっかり観られませんでした。

今年の注目ポイント

今年の出演者では、石川さゆりさんはコンサートに行くくらい好きなんです。曲が気になるというより着物が見たいんですね。本人の所作もそうだし、帯締めを斜めに締めるスタイル。私は勝手に“さゆり締め”と呼んでいますが、そういう立ち姿に注目しているんです。島津亜矢さんは本当に歌がうまいので、ただただそれが楽しみです。彼女は演歌歌手なんですけど、J-POPのカバーを歌ってもめちゃくちゃうまいんですよ。あとは純烈も気になります。私、これまでどうしてもアイドルにハマれない人生だったんですけど、純烈って背が高くてちょっとおじさんだからちょうどいい。 “元力士”にはちょっと敏感なので、元力士で綱ノ富士という四股名だったセンターの白川裕二郎さんは特に注目してます。三浦大知さんは去年、無音の中で踊るっていうパフォーマンスをしてましたけど、今年は何をするのか楽しみですね。あと私、DA PUMPがISSA以外のメンバーがいなくなった頃に急に好きになって、昔のCDを買い漁った時期があったので返り咲きはうれしいです。DA PUMPの昔の楽曲って今聴いてもよくて、一時期カラオケでDA PUMPばっかり歌ってましたもん。今年は「U.S.A.」を披露するということなので楽しみですね。

あとは出演歌手メッセージ動画も観たんですけど、YOSHIKIさんはよかったですよ。「お・も・て・な・し」の発音で「ど・ぎ・も」って言ってましたね。どういうことなんだろう……やりたくなっちゃったんでしょうか。今年はYOSHIKI feat. HYDEでの出演なんですね。YOSHIKIさんのグランドピアノの側面に“YOSHIKI”と“KAWAI”って並んで書いてあって、だんだん彼のフルネームに見えてくるのが好きなんですよ。毎年楽しみにしてるのは水森かおりさんの衣装です。これまでで一番好きなのは2013年の東南アジアのサラダをイメージした衣装で、2014年はイカからタコに変わる衣装でしたね。実際のコンセプトは違うと思いますよ、勝手に私が言ってるだけですから(笑)。あとLDHの人たちは“一番厳しい体育会系の学校”みたいにいつも全力で「ケガしちゃうんじゃないか」って思うくらい踊るじゃないですか。一方ジャニーズの人たちはいい感じに力が抜けてて。そのダンスの差もいつも見比べちゃうんです。

能町流・紅白の楽しみ方

「紅白」って終始本気になってかじりついて観るもんじゃないというか、“ながら見”するくらいがちょうどいい“正しい見方”な気がします。(大晦日の番組表を見ながら)昨年は朝青龍がありましたが、今年の地上波の裏番組を観る限り「紅白」以外はそこまで観なくてもいいかなって感じですね。「紅白」をまた4時間ぶっ通しで観ちゃう可能性はあります。AbemaTVが去年の朝青龍を超える番組を当ててきたらわからないですけど。私、基本“相撲ウォッチャー”だから、相撲が絡むとそっちも観ちゃうんで。

毎年演歌歌手の方って「紅白」では新曲より代表曲、みんなが知っている曲をやってくれるじゃないですか。石川さゆりさんはここ11年ずっと「天城越え」か「津軽海峡・冬景色」を歌っていて、むしろそれでいいんですよ。日本歌手協会がやっている「歌謡祭 / 歌謡フェスティバル」というイベントがお正月の昼に放送していて(「第45回歌謡祭 / 歌謡フェスティバル2018」は1月2日(水)BSテレビ東京で12:00から一挙12時間放送予定)、昭和にヒット曲を出した大御所も続々出るし、フィンガー5とかがアイドル枠で出ていて。で、五木ひろしさんとか現役で「紅白」に出ている歌手はそこでちゃんと新曲を披露するんです。近年はそれと「紅白」をセットで楽しんでいますね。Twitter上で言うと「紅白」が大好きなライターの前川ヤスタカさんや、「紅白」での出演者の発言や歌詞の解説をしている辞書編纂者の飯間浩明さんの投稿をそれぞれ興味深く読んでます。

私たちが子供だった1990年代って、ロック系の人たちが「紅白」を避けていたような印象があったんですけど、最近はそうでもなくなった気がしますね。だから出そうにない人にもこれから出てほしいです。スピッツとかクロマニヨンズとか。SCANDALとかCHAIとか、ガールズバンドももっと出ていいと思うんですよね。「裏紅白歌合戦」あるじゃないですか、あれもすごく好きなんですけど、それと「紅白」の中間くらいの感じで「“30代40代大満足”紅白歌合戦」をやってみたいですね。石川さゆりさんは絶対に出演してほしいし、アイドル枠はごめんなさいですが少し減らしつつ。司会は誰がいいですかね……想像するだけで夢が広がりますね(笑)。

能町みね子

北海道出身、茨城県育ち。コラム、エッセイ、イラスト、漫画ほか執筆を中心に活動し、相撲愛好家としても知られる。「ほじくりストリートビュー」(交通新聞社)、「中野の森BAND」(ロフトブックス)「文字通り激震が走りました」(文春文庫)、など著書多数。2018年11月には、幻冬舎より初の自伝的私小説「私以外みんな不潔」が出版された。

※記事初出時、プロフィールに誤りがありました。お詫びして訂正します。

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