映画「
吉田修一の同名小説を映画化した本作では、任侠の一門に生まれながら歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生を捧げる立花喜久雄の一代記が描かれる。吉沢が喜久雄を演じ、横浜流星、高畑充希、寺島しのぶ、渡辺謙らも出演。実写の邦画としては22年ぶりに興行収入100億円を突破し、第98回米国アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表に選出された。
数日にわたって行われた今回のキャンペーン。現地時間11月18日には、ロサンゼルスのThe Academy Museum of Motion Pictures(アカデミー映画博物館)内にあるTed Mann劇場にて「国宝」の特別上映会が実施された。これは、ジェトロ(日本貿易振興機構)ロサンゼルス事務所主催のイベント「J-SCREEN」の一環として行われた企画だ。
舞台挨拶に登場した李は、長い間歌舞伎に関する作品を撮りたいと考えていたことに触れ「特に女形という存在に非常に魅了されました。美しさはもちろんのこと、ちょっとしたグロテスクさもあり、多分たくさんのものを失いながら一生涯をかけて芸を究めていく。非常に純粋で稀な生き物な気がしています。なぜ彼らがそこまで高みを目指すのか、彼らの人生の見えない部分を知りたい、解明したいと思ってこの企画に着手しました」と明かす。「撮影監督であるソフィアン・エル・ファニとどのように協力して異なる時代を視覚的に表現したのか?」と質問が飛ぶと、李は「ソフィアンと相談して、歌舞伎を3つのレイヤーで撮ると設計しました。まず1つ目のレイヤーでは、歌舞伎全体の美しさがしっかり伝わるように歌舞伎の様式美を捉える。2つ目のレイヤーでは、客席など歌舞伎役者の世界から見た視点で歌舞伎を捉えました。一番重要なのは3つ目のレイヤー。その舞台にいる彼らの内面です。喜久雄が今どんな重圧をかけられて、どういった内面的な爆発を抱えながら舞台にいるか。光と影の影の部分まで映るよう撮る。その3つのレイヤーで設計しました」と言及した。
1年半もの時間を歌舞伎の稽古に費やした吉沢は、本物の歌舞伎役者のレベルには決して到達できないと悟ったそう。「僕はただ、芸術への献身に集中しました。それは喜久雄の中にもある思いで、喜久雄という役を演じるうえで相乗効果があったと思います」と振り返る。また「人生の異なる段階にいる喜久雄をどのように演じ分けたのか?」と問われると、「李監督からはだただ稽古したことを美しく踊るのではなく、舞台に立っている喜久雄の心境になって踊ってくれと言われました。『曽根崎心中』のお初という役ではなく、お初を演じている喜久雄でいてくれと。今そこに喜久雄が立っている覚悟や恐怖、内側から出てくるもので踊ることを意識していました。ほかの歌舞伎役者さんと手法は全然違うと思いますが、そのときの喜久雄の心境によって少しずつニュアンスは変わっていたと思います」と回想した。
その後、一行はロサンゼルスからニューヨークへ。吉沢と李は、現地時間11月22日にAngelika Film Centerで行われた舞台挨拶に登壇した。吉沢は喜久雄を「日常と舞台の境界線がどんどんなくなってしまう役」と分析し、「舞台に立てば立つほど、日常の幸せが舞台に吸い取られてしまうイメージで演じていました。喜久雄ほどの、ある種狂気じみた覚悟は自分にはありません。ただ歌舞伎役者さんも我々のような役者も芝居をしているときにしか感じられない幸せの瞬間というのがあって、それは非常にわかります。芝居しているときが一番生きている実感があり、そういう部分は理解できると思いながら演じていました」と語った。
翌11月23日に、吉沢と李が向かったのは創設から115年の歴史を誇るジャパン・ソサエティー・ニューヨーク。もっとも難しかったシーンに話が及ぶと、吉沢は「喜久雄としてお初を演じたり、踊ったりすることが一番難しかったです」と述べ、「最初に李監督から演出を受けたときは、何を言っているのかわからなかったんですが、それまでの喜久雄の人生、今そこに置かれている状況を含めてお芝居してくれというお話でした。実際の歌舞伎役者さんに比べて非常に感情的になる部分も多い。様式美として見せるところをあえてエモーショナルなお芝居で演じた部分は、特にドラマチックになっていて、完成した作品を観て李監督が言っていたことがわかったんです。と同時に、歌舞伎役者さんではなく、我々のような役者が選ばれた意味がわかりました」と口にした。
「国宝」は上映中。
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「国宝」吉沢亮がロス&ニューヨークの観客と交流、李相日は歌舞伎を捉えた3つのレイヤー語る(写真23枚)
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