オンラインシンポジウム「制度設計、実態調査、日本映画のこれからを考える2」が5月27日にYouTubeで配信され、関西学院大学特別客員教授の小西美穂、映画監督の
JFPは、日本映画業界の「ジェンダーギャップ・労働環境・若手人材不足」を検証し、課題解決するために調査および提言を行う非営利型の一般社団法人。シンポジウムでは、映像制作の現場で弱い立場に陥りがちな女性や若手の声をすくい上げ、制度設計に組み込むにはどうすればいいのか、またJFPが実施する「映像制作現場適正化に関するアンケート調査」の途中結果を参照し、日本映画界の労働環境を改善するにはどんな制度が必要かを考えていく。
映画業界で浮き彫りになっている性被害について白石は「最初に(報道が)出たときは衝撃を受けた。具体的にこういうことをしている人がいるんだと強い怒りを感じた。声を上げてくださった人がいるから今の流れができている。その人たちを孤立させないためにみんなで声を上げていくことが重要」と意見を述べた。近藤は「告発しても、(被害者は)救済されたわけではない。まだ苦しみの中にいると思うので、どうしてここまで見過ごされてきたのか見つめ直したい」と訴える。
シンポジウムではJFPが実施した「映像業界ジェンダーギャップ調査2022~映画界の職能団体編~」の結果を発表。「日本映画監督協会」の女性会員は全体の5%以下に留まり、平均年齢も66.5歳であることが明らかになった。結果について近藤は「(協会に)入るかどうかは任意」と説明しつつ、各協会の女性比率の低さを指摘した。白石は「撮影現場においては、技術パートの女性比率はこの数字よりも多いと感じる。ただ、立場が上になるに従って少なくなっている印象。協会に入るような技師レベルになるとこのような数字になるのは納得します」と語った。
JFPでは“量の調査”とともに質的調査としてコラムも発表している。2~3月にかけて女性スタッフに匿名のグループインタビューを行い、現場で困っていることや心配事をまとめたもので、シンポジウムでは「撮影現場でトイレに行きにくい」と悩む声について議論が交わされた。白石は「(コラムを)めっちゃ読みました。映画業界に入って25、6年ですが、まったく変わっていない。女性目線で言うと、男性よりもつらい思いをしていたんだなとショックでした」と感想を述べる。
続いて、浮き彫りになった課題を解決するために必要な制度設計についての議論も。近藤は「性被害の問題を皮切りに声が上がっているのは窓口が欲しいということ。しかしアンケートでは40%の方が『製作委員会内に設置しては意味がない』と答えています」と話した。
神林は「日本の相談窓口の種類は企業内での紛争処理システム(相談窓口)、業界団体で窓口を作る(中間団体)、政府や行政の窓口(裁判に近くなる)の3パターン」と説明し、「問題の種類はいろいろある。窓口によって得意な類の問題は違うので、自分の抱える問題はどのように解決するのが望ましいか考えて、選べるのが理想系」と伝える。木下は窓口の設置に賛成しつつも、「とりわけ性加害に関しては、どれだけ本人にとって重い事情でも、窓口に行った先で『ただちょっと言われただけでしょ?』などと言われてしまう場合もあるのでは」と問題点を指摘した。
現場スタッフの契約書がないという点について白石は「撮影が始まる1~2カ月前にインできるかわからないという状況も多々ある。その状況の中で1人ひとりとお金の話ができないのでは」と考察。神林は「1カ月前に現場にインできるかわからない状況から、結果的にインできるっていうのが異常。契約書を書かなくていいからこのようなことができる」と問題を分析し、「統一契約書を作るべき」と意見を述べた。
また作品がヒットしても、制作時の給料にプラスされないという現状についても話題に。白石は「どんなに映画がヒットしても、もらえるのは大入り袋に500円玉(笑)。儲かったときくらいは還元してほしいですね。映画作りは本来、すごく豊かな作業。一生の仕事としてこんなに楽しい仕事はないと思う。スタッフも、映画に関わってリッチになっていい人生を歩んでいってほしいと願っているのですが......」と思いを吐露した。
なおJFPでは現在、映像制作現場の適正化に向けたアンケート調査を実施中。noteではインタビューコラム「映画界の実態を調査する・現場の声 MushUP」を掲載している。また、JFPの2年分の継続的な活動資金を募るクラウドファンディングがGoodMorningで7月8日まで実施される。
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