Japanese Film Project(JFP)の記者会見が本日7月5日に東京・日本外国特派員協会で行われ、JFP代表理事の歌川達人、JFP理事の近藤香南子が登壇した。
JFPは、日本映画業界の「ジェンダーギャップ・労働環境・若手人材不足」を検証し、課題解決するために調査および提言を行う非営利型の一般社団法人。このたびの記者会見では「日本映画業界の制作現場におけるジェンダー調査2022夏」の調査発表が実施された。
本調査で、2021年の興収10億円以上の実写劇映画において女性監督の割合が0%であることが明らかに。歌川は「有識者の先生に結果を解説していただいた。東京大学の田中東子先生は『(興行収入が大きく見込まれるという前提で製作される)予算の大きい、メインストリームの配給会社と提携していると考えられる映画の製作を、女性監督が任されるというチャンス自体が極めて少ない、ということだろう』と分析している。女性が少ないのはわかりきったことだが、2~3年調査していても変化が見られない」と伝えた。
さらに、大手4社(東宝、松竹、東映、KADOKAWA)の作品ラインナップについても言及。この中で2019年~2022年における女性監督は20人に1人という結果になった。歌川は、そのほかの調査結果にも触れながら「ラインナップは、会社の方針によって変えられること。昨今、ビジネスと人権の話はよく取り上げられるが、映画会社が今後どう向き合って行くのかが問われている」と訴えた。
続いて「映像業界ジェンダーギャップ調査2022~映画界の職能団体編~」の調査結果も発表。近藤は「数の調査だけではなく、匿名インタビューも実施している」と述べ、「例えば妊活中の女性が定期的に通院できないという声が挙がっている。これは男性でも、病気と仕事の両立ができないということ」と現場の声を明かす。さらに会見では、「映画制作現場の労働環境改善に向けたアンケート調査2022」の中間発表や韓国映画界のリサーチの報告も行われた。
映画業界の実態に変化がない理由について見解を求められた歌川は「映画の会社と、作っている側が当事者間でやり取りしても、何も進まない。世論や消費者、俳優が問題意識を持つという、“外圧”でしか変わらない。世論や映画を観ている消費者が大事」と回答。
また、調査で明らかになったジェンダーギャップが映画表現にどのような影響をもたらすか尋ねられた近藤は、「女性に限らず、少数者の意見が反映された作品を観客が求めているかどうかを可視化するのは難しい。しかしそのような作品が増えることで、観客の意識も変わっていく。映画が社会を映す鏡として、偏ったジェンダーバランスで作られたものばかりがスクリーンにかけられていいのか。多様な視点を持った作品を海外に打ち出せる国であってほしいのか。そういう視点を大手の映画会社が持つことで変わっていくと思う。前向きな視点から、変化を起こそうと立ち上がってくれる人が増えることを望んでいます」と呼びかけた。
JFPでは、2年分の継続的な活動資金を募るクラウドファンディングをGoodMorningで7月8日まで実施中だ。
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【メディア掲載】
JFP最新調査と記者会見の様子が取り上げられました。
以下抜粋
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「映画の会社と、作っている側が当事者間でやり取りしても、何も進まない。世論や消費者、俳優が問題意識を持つという、“外圧”でしか変わらない。世論や映画を観ている消費者が大事」
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