短編集の本読みで10日間…濱口竜介「偶然と想像」各話キャストが驚きの演出語る

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濱口竜介の新作短編集「偶然と想像」の舞台挨拶が12月17日、18日に東京のBunkamura ル・シネマで3回行われ、各話のキャストが登壇。海外映画祭からの帰国後、隔離期間中の濱口は電話をつなげる形で出席した。

「偶然と想像」舞台挨拶の様子。左から占部房子、河井青葉。

「偶然と想像」舞台挨拶の様子。左から占部房子、河井青葉。

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「偶然と想像」ポスタービジュアル

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17日の初日には、地元の宮城・仙台で20年ぶりに再会した2人の女性のすれ違いを描く第3話「もう一度」から占部房子河井青葉が登壇。濱口の演出は出演者が脚本を読み合わせる“本読み”を何度も行うことで知られる。河井は撮影前に10日間も本読みをしたことに触れながら「撮影中も『撮影が終わったので、じゃあ本読みしましょう』『おはようございます、じゃあ本読みしましょう』みたいな。撮影よりもそっちのほうが長いんです」と明かす。占部も「台本を読んでこなくて大丈夫です。僕と一緒に覚えましょう」という濱口の言葉を紹介し「河井さんと一緒に本読みをしながら、セリフを1つひとつ知っていくという感じでした」と振り返る。

「偶然と想像」の1編「もう一度」。

「偶然と想像」の1編「もう一度」。[拡大]

「10日間も本読みをすると、どうなるのか?」という質問に、占部は「セリフを覚えていく(笑)。そして『セリフ覚えましたね』って監督が喜んでくれる(笑)。優しいですよ」と笑顔で話すと、河井も「台本は読まなくていいよ、セリフは覚えなくていいよ、セリフが言えたら『すごいね』って(笑)」と濱口独特の演出を明かした。濱口は「本当に感動しちゃいました。自分が書いたテキストですが、お二人がやるとこうなるのかっていうところがあって、単純にお二人のファンとして楽しみました。ありがとうございます」と感謝を伝える。

左から中島歩、古川琴音、玄理。

左から中島歩、古川琴音、玄理。[拡大]

18日昼の上映回には自分の元彼を親友が意識し始めたことで思案するモデルを主人公にした第1話「魔法(よりもっと不確か)」から古川琴音中島歩玄理が出席。濱口作品に初めて出演した古川は、本読みで感情抜きでセリフを読み、覚えようとせずに自然にセリフを体に馴染ませるやり方を現在も続けているそう。「台本に書かれている言葉は自分の言葉ではないので、口にすることに慣れていないんですけど、自分の耳で聞きながら感情を入れずにつぶやくと、口も慣れるし、何回もストーリーを流すことになって、自然と心情が流れるようになり、余計な力を抜いて相手との芝居、本番に集中できました」と回想。中島も本読みの段階を「相手を信頼する作業」としつつ「本番で初めて集まってセリフを言うのと違って、相手の声で覚えていくこともできる。撮影のときにセリフ以上のコミュニケーションが生まれるやり方だった」とその効果を口にした。

「偶然と想像」の1編「魔法(よりもっと不確か)」。

「偶然と想像」の1編「魔法(よりもっと不確か)」。[拡大]

「偶然と想像」の1編「魔法(よりもっと不確か)」。

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玄理からは古川演じる芽衣子とのタクシーでの会話シーンの前段階や中島演じる男性との出会いなど、映画本編にはないシーンの撮影があえて行われていたことも明かされた。濱口は「そっちのほうがやりやすいんじゃないかと思ったからです。役者さんの想像力はすごいので、最終的にはそれに頼らないといけないけど、“体験”することの密度は大きいと思います」と意図を説明。玄理は「それはすごく助けになったし、これまでもそういう部分を想像してやっていましたが、実際に演じてみると、より深く演じられて、感情の準備も肩の力を抜いてできました」と語った。

左から甲斐翔真、渋川清彦、森郁月。

左から甲斐翔真、渋川清彦、森郁月。[拡大]

18日夕方の上映回には芥川賞作家の大学教授と彼に恨みを抱く男子学生、そして1人の女子学生の関係を軸にした第2話「扉は開けたままで」から渋川清彦森郁月甲斐翔真が登壇。渋川と森のシーンは3日間で撮影されたが、渋川は「初日で半分くらい撮れたんだけど、次の日にもう1回、やり直した」と苦笑い。森も「3日目には全部を通しで撮りました」と重ねる。甲斐は「本番よりもむしろリハーサルのほうが記憶に残っています。とにかくスパルタで、セリフを覚えこませ、しみ込ませていく。『身体的に会話をする』というすごい経験をしました」と充実感を明かした。

「偶然と想像」の1編「扉は開けたままで」。

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「偶然と想像」の1編「扉は開けたままで」。

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甲斐はリハーサルで濱口から「自分の胸の中に“鈴”があると思って、相手のセリフを受けて鈴が鳴ったと思ったら返してください」「相手の鈴を鳴らすつもりで話して」と言われたそう。渋川は「わかるはずがない」と笑い、森は鈴と聞いて「ドラえもんの絵が浮かびました(笑)」と当時の困惑を明かす。甲斐は「『本当に届くってこういうことなのか?』と思ったりしましたけど『(相手の胸の中の鈴が)鳴った!』と思ってるときほど、鳴ってないんです……」と撮影を振り返った。

第71回ベルリン国際映画祭で審査員グランプリ(銀熊賞)を受賞した「偶然と想像」は、東京のBunkamuraル・シネマほか全国で公開。

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(c)2021 NEOPA / Fictive

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横川シネマ @yokogawacinema

【偶然と想像】横川シネマにて上映中です。みんな観てね。

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