「ドライブ・マイ・カー」濱口竜介が西島秀俊の起用や179分の尺、車について語る

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ドライブ・マイ・カー」の一般試写イベントが本日7月31日に東京・スペースFS汐留で行われ、監督を務めた濱口竜介がオンライン舞台挨拶を行った。

「ドライブ・マイ・カー」一般試写イベントの様子。

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「ドライブ・マイ・カー」ビジュアル

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本作は村上春樹による同名の短編小説を原作に、妻を亡くした俳優・演出家の家福が寡黙な専属ドライバーのみさきと出会い、喪失感と向き合っていく物語。同じ短編集に所収された「シェエラザード」「木野」の要素も投影されている。西島秀俊が家福、三浦透子がみさきを演じたほか、霧島れいか、岡田将生もキャストに名を連ねた。第74回カンヌ国際映画祭ではコンペティション部門の脚本賞のほか、独立賞に当たる国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞も受賞している。

日本の観客に向けてはこの日が初めての上映となった。濱口はカンヌ帰国後の隔離期間中のためリモートで出席。映画祭での前評判が非常に高かったことについて「非常にありがたいこと。嫌われるようなタイプの映画ではないので、好いてくれる人はいるかもしれないとは思ってました」と振り返る。受賞の可能性を考えたか問われると「評価が高まってくると『もしかして……?』という気持ちになってくるから、人間ってのは嫌なものですね」とほほえむ。カンヌで印象に残ったのは、共通の知り合いがいたフランスの俳優マチュー・アマルリックと同じテーブルで食事したこと。また自身が100件以上の取材で忙しくするなかプロデューサーがずっと海で泳いでいたことを挙げ、笑いを誘った。

「ドライブ・マイ・カー」

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企画の始まりは、濱口がプロデューサーから村上の小説の映画化を打診されたことだった。当初の内容では難しいと判断していたが、濱口が2013年の発表当初から読んでいた「ドライブ・マイ・カー」ならば「映画化できるかもしれない」と考えたそう。「自分が映画で扱っていた題材と重なるものがあり、とても惹かれるものがありました。電車や船とは違う、車という閉鎖されたプライベートな移動空間。そこで、なかなか自分のことを話さない人物たちが『この人にはこのことは言っていいかもしれない』と少しずつ領域を広げていく感じ。あとは人生と演じることの関わり、というテーマ。この小説は自分のやっていることに引きつけて読めて面白かったんです」と明かす。

「ドライブ・マイ・カー」

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映画では家福とみさきが長い時間を過ごす車が重要なモチーフとなっている。車種はスウェーデンの自動車ブランド、サーブがかつて製造・販売したサーブ 900。原作では黄色のオープンカーだったが、映画では赤色の屋根付きのタイプに変更されている。村上にも変更の可能性は事前に伝えていたそうで、濱口は「映画では車の中での会話が中心になってくる。自分は現場の声を使いたいと思っていたので、オープンカーだと風が吹き付けるので録るのが難しい。そして日本の風景の中を車で走り抜けるのが核。黄色は緑と多少近い色で、風景の中に埋もれてしまう。赤い色だと十分目立つだろうと思っていました」と理由を説明した。

「ドライブ・マイ・カー」

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また西島を主演に起用した理由については「昔からずっと好きでした。2000年代にはよく西島さんの出ている映画ばかり観ていた」と、黒沢清「LOFT/ロフト」や北野武「Dolls(ドールズ)」といった映画を挙げる。「そのときから『佇む力、その場にいる力』があると思っていました。できれば、そういった役者さんと仕事がしたい。西島さんが(前作の)『寝ても覚めても』を気に入ってくださっていて、いつか仕事ができるかもしれないと思っていたんです」と語った。また劇中における家福の演出論が監督自身と似ているか問われると「7:3で似てる」と回答。映画には家福の演出で俳優がひたすら本読みをする場面があるが、これは本読みを重ねて「いい演技」を目指す濱口自身の手法と同じだという。

第74回カンヌ国際映画祭で受賞した脚本賞のトロフィーを見せる濱口竜介。

第74回カンヌ国際映画祭で受賞した脚本賞のトロフィーを見せる濱口竜介。[拡大]

これまでに自主制作で255分の「親密さ」、317分の「ハッピーアワー」を発表してきた濱口。「ドライブ・マイ・カー」の上映尺も179分と長く、初めて商業ベースで長尺の映画を手がけた。観客から「時間へのこだわり」を聞かれると「長い、短いに関わらず重要なのは、キャラクターと最後まで付き合うこと。『これで大丈夫』と思うまで描くことだと思います。それはキャラクターや抱えている問題によって長くなったり、短くなったりする」と返答。本作については「今回の2人は簡単にしゃべる間柄ではなくて、しゃべったと思ったら映画が半分過ぎている。物語の都合でしゃべらせずに、2人が自然と口を開くまで、(脚本を)書きながら待っているという感覚でした」と長尺となった理由を明かす。また「長い時間がかかるものもあれば、短く終わるものもある。これはどうしたらいいのかな?と思ってます」と笑みをこぼしつつ、「リスクを負うのは一緒に作っているプロデューサー。そのリスクを請け負ってくれるすごいプロデューサーたちがこういう時間の映画を生み出すんです」と感謝の言葉を贈った。

「ドライブ・マイ・カー」は8月20日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー。

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