チュ・ジフンに沼落ちしたい！「トラウマコード」破天荒な天才外科医役で世界を驚かせたイケオジ俳優

文 / 前田かおり 構成 / 小宮駿貴 イラスト / 西村オコ

チュ・ジフンとは

日本での人気も熱を帯び、韓国イケオジ俳優の代表格に

2025年1月にNetflixで配信されるや、世界17の国と地域で1位を獲得するなど大ヒットを記録した医療ドラマ「トラウマコード」で主演したチュ・ジフン。主人公の型破りな天才外科医ペク・ガンヒョク役で、韓国のゴールデングローブ賞とも称される第61回百想芸術大賞の放送部門で最優秀演技賞を受賞したのをはじめ、第4回青龍シリーズアワードで主演男優賞を受賞。さらに国際ストリーミングフェスティバル「グローバルOTTアワード2025」では主演男優賞にノミネートされた。今年3月には日本のオフィシャルファンクラブもオープンし、日本での人気も熱を帯びている。40代の今、韓国のイケオジ俳優として代表格でもあるチュ・ジフンのこれまでを振り返りながら、今からだって沼落ちしたくなる彼の魅力を紹介しよう。

1982年5月16日生まれ、現在43歳のチュ・ジフンはもともとファッションモデルからの転身組。2006年の「宮 -Love in Palace-」で演じたツンデレ皇太子役がハマり、大ブレイク。高身長＆端正な顔立ちでアイドル的な人気を集め、ドラマ「魔王」や、よしながふみの人気コミックが原作の映画「アンティーク ～西洋骨董洋菓子店～」などがヒットし、順調にキャリアアップしていった。そんな中、2009年に起きた薬物スキャンダルが俳優人生に影を差す。微罪に終わるも世間から厳しい非難を浴びることに。だが、この出来事を機に、俳優としてのポテンシャルを大きく高めることになっていく。

兵役で軍に行き、除隊すると、彼は活躍の場を、映画を中心にシフト。2012年の時代劇コメディ映画「私は王である！」では一人二役に挑戦。2016年には韓国ノワール「アシュラ」、2017年から2018年にはファンタジーアクション「神と共に」シリーズなど、今までとは違ったダークで複雑な役どころや泥臭いアクションなど、ジャンルを問わずさまざまな作品に取り組み、その千変万化ぶりが注目された。特に2018年、実話をベースにした犯罪スリラー「暗数殺人」では敏腕刑事を翻弄するサイコパスな悪役で見せた演技が多方面で絶賛された。

そして2019年、時代劇×ゾンビという異色の組み合わせで世界観を紡いだNetflixオリジナルシリーズ「キングダム」が世界配信され、再びトップスターとして返り咲くことに。ドラマ、アクションとコンスタントに出演しながら、2023年にはハ・ジョンウ、ミンホ（SHINee）、ヨ・ジングとニュージーランドを旅するリアル旅バラエティ番組「歩いてチケッティング」に参加し、料理の腕前を披露するなど素顔を垣間見せてファンを喜ばせた。2024年には、ディズニープラスで配信されたドラマ「照明店の客人たち」で謎めいた照明店の店主を好演し話題に。そして2025年の「トラウマコード」でさらなる飛躍をした。待機作には人気ウェブトゥーンをドラマ化した「再婚承認を要求します」などがあるチュ・ジフン。観れば今後の活躍を期待したくなる、お薦めの3作を選んでみた。

渋みも色気もにじみ出る、40代の今だからこそハマった「トラウマコード」

大学病院の重症外傷チームを立て直すために赴任した天才外科医ペク・ガンヒョク（チュ・ジフン）。そんな彼に感銘を受けた肛門科の若手医師ヤン・ジェウォン（チュ・ヨンウ）が外傷チームを潰そうとする者たちと戦いながら、命と向き合っていく。

ガンヒョクは、紛争地域の最前線を駆け巡って来たスーパードクター。ぶっきらぼうで口は悪く、相手が誰であろうが忖度はしないが、重症患者の命を救うために力を尽くし、「稼ぐために医者をやってるんじゃない。使命感だ」とさらりと言ってのける。どことなく「ドクターX～外科医・大門未知子～」の主人公を彷彿とさせる鼻持ちならないキャラクター。一見クールだが、魔法のようなスキルでオペを終わらせて患者に寄り添う人間味もある｡

そんなカリスマ性あるキャラクターは、40代に突入し、大人の渋みも色気もにじみ出るチュ・ジフンのハマり役に。役作りにあたっては、実際の医療従事者からレクチャーを受け、現場での言葉のやり取りや手技などを研究し、外傷チームを率いる姿にもリアリティーを与えている。この演技に、「人生最高の作品」「代表キャラクター」などと評する韓国のメディアもあるほどだ。

本作では、そんなガンヒョクに無茶ぶりされながらも彼のオペ技に惚れ込んでいくジェウォンとの師弟愛も見どころ。バディを組むチュ・ヨンウとの相性もよく、高身長の彼らが連れ立って手術室に向かうシーンや、白衣を翻しながら走り出すシーンは痺れるほどカッコいい。医療ドラマにしては珍しくラブロマンスはないが、最終話で見せる2人の濃厚な絆……。代わりに彼らのブロマンスで胸を焦がしてほしい。

韓国ドラマ「トラウマコード」予告編

恋に素直になれない“こじらせ男”を体現、熱唱姿も貴重な「愛は一本橋で」

体育教師ユン・ジウォン（チョン・ユミ）が勤める高校に、新しい理事長として赴任してきたソク・ジウォン（チュ・ジフン）。実は2人は代々いがみ合う家に生まれ、幼い頃から“希代のライバル”だったが、高校時代には心を通わせたときもあった。そんな2人が18年ぶりに再会したことから、思いがけない恋の駆け引きが始まる。

近年はクライムサスペンスやミステリー、SFアクションなどでクセ強な役どころが多く、チュ・ジフンにとっては「宮 -Love in Palace-」以来のラブコメディ。ストーリーは王道だが、クールで知的なイメージの彼だけにギャップ萌えは必至。今も初恋の相手への思いを抱える“こじらせ男”の胸の内をファニーな表情や変顔で覗かせるコメディ演技はたまらない。

ヒロインを演じるのはドラマ「保健教師アン・ウニョン」や映画「82年生まれ、キム・ジヨン」などで知られるチョン・ユミ。チュ・ジフンと絶妙に息を合わせ、お得意のツンデレぶりを全開にして、いい年になったからこそ素直になれない大人のじれったい恋模様でキュンキュンさせてくれる。特に、第8話では「宮 -Love in Palace-」のOST「Perhaps Love（もしかして恋なのかな）」をチュ・ジフンが歌う。彼の歌声が聴けることはもちろん、初恋の彼女との思い出、記憶がテーマの本作で、懐かしの「宮 -Love in Palace-」のチュ・ジフンを観直したくなる……。

韓国ドラマ「愛は一本橋で」予告編

韓国ドラマ「愛は一本橋で」第1話特別無料公開中

グローバルな活躍への足掛かりに、Kゾンビ時代劇「キングダム」シリーズ

架空の朝鮮王朝時代を舞台に、王が病に倒れたといううわさが広まるなか、国内に謎の疾病が発生。感染した者は人肉をむさぼる怪物になってしまう。王位継承者の世子イ・チャン（チュ・ジフン）は朝廷を牛耳る重臣チョ・ハクチュ（リュ・スンリョン）の陰謀で謀反人にされながらも、国と民を守るため謎の疾病の原因を探っていく。

韓国時代劇の王道である宮廷内の権力闘争と、ゾンビスリラーを融合させた異色作。Netflixで世界に配信され、“Kゾンビ”という言葉も生まれるなど大ブームになり、主演したチュ・ジフンは時代劇だけでなくホラーもこなせる俳優として演技力の幅の広さを証明。聡明だが世間知らずな世子チャンが、ゾンビから民を守るため試練を乗り越えるなかで王の資質を開花させていく姿は見もの。

「ムービング」「パイン ならず者たち」のリュ・スンリョンとの演技合戦も凄まじいだけに物語に引き込まれずにはいられない。また、わらわらと襲い来るゾンビの群れを、斬って斬って斬りまくるアクションも必見。長身のジフンの立ち回りもかっこよく、現代劇とは違う彼の魅力にハマってほしい。

韓国ドラマ「キングダム」シーズン1 予告編

韓国ドラマ「キングダム」シーズン2 予告編

前田かおり

ライター。映画やドラマのレビュー、キャスト・スタッフへのインタビューを多数手がける。キネマ旬報ムック「韓国テレビドラマコレクション」や韓国映画「密輸 1970」「ボストン1947」の劇場用パンフレットほか、情報誌、Webで各種エンタテインメント情報を紹介。2025年現在のお気に入りはドラマ「瑞草洞＜ソチョドン＞」「私たちの映画」「暴君のシェフ」。