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映画超初心者・ミルクボーイ駒場孝の手探りコラム「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」 第9回 [バックナンバー]

CGにはない怖さを感じた「ジョーズ」

スピルバーグ監督、めっちゃすごいですね

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これまで名作をほぼ観たことがないまま育ち、難しいストーリーの作品は苦手。だけど映画を観ること自体は決して嫌いではないし、ちゃんと理解したい……。そんな貴重な人材・ミルクボーイ駒場孝による映画感想連載。文脈をうまく読み取れず、鑑賞後にネット上のレビューを読んでも「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」となりがちな彼が名作を気楽に楽しんだ、素直な感想をお届けする。

第9回は、夏にふさわしいパニックホラーの古典「ジョーズ」。このコラムではあらゆる映画に「難しい」「ここが苦手」と書いてきた駒場だが、今回は「余計な疑問が浮かばなかった」「とにかくめちゃくちゃ怖く、めちゃくちゃ面白かった」とストレートに絶賛している。

/ 駒場孝(コラム)、松本真一(作品紹介、「編集部から一言」

個人的にもお世話になっているあの音楽

こんにちは。ミルクボーイ駒場です。今回鑑賞したのは、1975年に上映された「ジョーズ」です。映画に詳しくない僕でもわかる有名すぎる作品ですが、これもまた観たことはありませんでした。ただ不思議なことに映画ナタリーのスタッフさんから、「次回は『ジョーズ』を観てもらうのですが、これまでに観たことがありましたら違う作品にしますね」と言われたとき、一瞬観たことある気がしました。でも冷静に考えたら観たことなかったです。なぜ一瞬観たことあるような気になったのかなと考えたら、おそらくユニバーサル・スタジオ・ジャパンの人気アトラクション「ジョーズ」にもう数え切れないくらい乗っているからだと思いました。2001年のUSJ開園当時から何回「ジョーズ」に乗ったかわかりませんし、サメのオブジェの前で何枚写真を撮ったかもわかりません。アトラクションのガイドさんの説明も楽しく、覚えるくらい聞かせてもらってきたし、極め付きはアトラクションに乗るまでの並ぶところの壁にも「ジョーズ」にまつわることがたくさん書いてあるので、並んだ時間の分だけ「ジョーズ」に詳しくなっていて、「ジョーズ」情報が十分に備わっていたのです。なので頭の中で「観た」と勝手にすり替わっていました。でも観ていませんでした。あんなに「ジョーズ」に乗ってきたのに一度も「本編を観てみよう」となってこなかった自分の感覚を疑いました。

あと「ジョーズ」と言えば最高に緊張感のある「デーデン デーデン」というテーマソングですが、個人的にお世話になっていて、2歳になるうちの息子がお着替えなどを嫌がって逃げ回り、本人は隠れたつもりだろうけどこっちからは丸見えの状態でカーテンの裏などに隠れているとき、普通に「出てきてー」と言っても「いやー」と言われるだけなのですが、「デーデン デーデン」とあの音楽を歌いながら近付くと「キャー」と言いながらうれしそうにカーテンから走って出てくるんです。そこを捕まえて着替えさせたりしています。「ジョーズ」を知らない2歳児にもあの曲の緊張感は伝わるみたいです。そういう意味でお世話になっているんです。こうなってくるとなおさら、一度も「本編を観てみよう」となってこなかった自分の感覚を疑いました。

「ジョーズ」場面写真(写真提供:Universal Pictures / Photofest / ゼータ イメージ)

「ジョーズ」場面写真(写真提供:Universal Pictures / Photofest / ゼータ イメージ)

今のようなCGの技術がない時代に作られたものなのに、なんなんでしょう

という具合に、情報もある程度入ってるし、難しいストーリーではないだろうと思い楽しみに観始めました。そして冒頭、海の中。カメラが目線になっていて、海藻や珊瑚などをかき分けて泳いでいる雰囲気の映像。そのバックに、いきなりあの「デーデン デーデン」のテーマソングが流れているではありませんか! 「いきなりこれ流れるんや」とちょっとテンションが上がったのも束の間、「これ流れてるってことは絶対サメ来るやん、めちゃくちゃ怖い! ……いや待てよ、これはサメ目線なのかもしらん、そうやとしたら前に人が泳いでてそこに食いかかる感じになるからサメが急に出てくるとかはないか……いやでもどちらにしても怖すぎる!」というとんでもないツカミに圧倒されそこから124分、食い入るように観てしまいました(サメの話してるときに“食い入る”とか絶対言わないほうがいいですよね、でも書き直しません)。

観終わった率直な感想としましては、とにかくめちゃくちゃ怖く、めちゃくちゃ面白かったです。いよいよこれを観てこなかった自分の感覚が大嫌いです。話もわかりやすく登場人物の数も多すぎずちょうどいい、それぞれのキャラクターもわかりやすい。本編に余計な疑問が浮かばないので、とにかく何も考えず純粋にサメの恐怖と向き合えるのです。かなり面白かったです。それにしても何年も昔の作品ですし、今のようなCGの技術などない時代に作られたものなのに、めっちゃ怖いしめっちゃリアルでした。なんなんでしょう、今の映画のCGのすごさはもちろんわかるんですが、すごすぎて逆に、「CGやもんな」という、言い方難しいですがめちゃくちゃ微妙に少しの安心感がある気がするんです。もちろんゴジラなど、CGとはいえ死ぬほど怖かったですしすごかったんですが、なんか少しそんな感じがする。でも「ジョーズ」は模型とリアルを使い分け、役者さんも完全に生身で、ほんまに海上でいろいろとやっている、1つひとつの船の小道具であったり海水の浸食してくる感じなど、ごまかしの利かない全体の緊迫感やリアリティが、なんとも言えない怖さに結び付いていた気がするんです。舐めていた訳ではもちろんありませんが、そこまで怖いことはないかなと思っていたのですがめちゃくちゃ怖かったです。何回も1人でウワッ!となりました。とにかく面白かったです。

ただ、今回の「そんなこと言うてた?」は、本編とは少し関係ないですが「『ジョーズ』ってサメの名前じゃないって言うてた?」です。これは驚きました。観終わってからネットを見て知ったのですが、「jaw」が顎という意味で、「s」がついて複数形なので「jaws」というのは“歯を含めた上下の顎骨(がっこつ)”みたいな意味らしいのです。絶対あのサメの名前が「ジョーズ」やと思っていました。これは皆さん知ってることなんでしょうか? 初めて知った僕はびっくりしましたし、「顎」というタイトルの映画やったんや、と思うと別の意味で少し面白くなりました。

あと、本気で今さら何言うてんねんと言われることを承知で言わせてもらいます。スピルバーグ監督、めっちゃすごいですね。今までは、みんなが言うからすごいんやなぁと思ってたくらいですが、この「ジョーズ」を観てしっかりすごさを実感しました。本当に面白かったです。スピルバーグ監督のすごさを身をもって知れたのは、僕からしたら大成長です。映画のコラムを書かせてもらって本当によかったです。より一層映画の海に引きずり込まれた気がします。これからもどんどんいろんな作品を観ていきたいと思います!

編集部から一言

「ジョーズ」がサメを指すと勘違いしてしまう要因としては、本来このシリーズとは関係ないにもかかわらず、邦題に「ジョーズ」と勝手に入れてしまう映画が多いことも大きいようです。そのあたりはサメ映画学会会長・サメ映画ルーキーさんが詳しいです(参照:サメが好きだと叫びたい!“サメ映画学会員”戸松遥、会長との対談で愛を語る)。

「JAWS」が「顎」という意味だということは、自分は「サメって『シャーク』じゃない? じゃあジョーズって何?」と気付いて調べたことがありますが、知らない人は知らない絶妙なラインのあるあるネタだと思います。映画ナタリー内でもアンケートを取ってみましたが、知らない人も数人いたので安心してください!

「ジョーズ」(1975年製作)

「ジョーズ」場面写真(写真提供:Universal Pictures / Photofest / ゼータ イメージ)

「ジョーズ」場面写真(写真提供:Universal Pictures / Photofest / ゼータ イメージ)

ピーター・ベンチリーの同名小説をスティーヴン・スピルバーグが映像化した海洋パニック。平和な海水浴場に突如、巨大なホオジロザメが出現し、若い女性が食い殺されてしまう。サメには懸賞金がかけられたために多くの人が集まり、第2、第3の犠牲者も発生し町はパニックに。そんな中、警察署長のブロディと海洋学者のフーパー、地元の漁師クイントはサメ退治に乗り出す。
「ゴッドファーザー」の記録を破り、1977年に「スター・ウォーズ」に抜かれるまで世界歴代興行収入1位を記録する大ヒットとなった、スピルバーグの出世作。また本文でも触れられた、ジョン・ウィリアムズによるテーマ曲もあまりにも有名だ。第48回アカデミー賞では作曲賞、音響賞、編集賞の3部門を受賞した。

駒場孝(コマバタカシ)

1986年2月5日生まれ、大阪府出身。ミルクボーイのボケ担当。2004年に大阪芸術大学の落語研究会で同級生の内海崇と出会い、活動を開始。2007年7月に吉本興業の劇場「baseよしもと」のオーディションを初めて受け、正式にコンビを結成する。2019年に「M-1グランプリ2019」で優勝し、2022年には「第57回上方漫才大賞」で大賞を受賞。現在、コンビとしてのレギュラーは「よんチャンTV」(毎日放送)月曜日、「ごきげんライフスタイル よ~いドン!」(関西テレビ)月曜日、「ミルクボーイの煩悩の塊」「ミルクボーイの火曜日やないか!」(ともに朝日放送ラジオ)など。またミルクボーイが主催し、デルマパンゲ、金属バット、ツートライブとの4組で2017年から行っているライブ「漫才ブーム」が、2033年までの10年を掛けて47都道府県を巡るツアーとして行われる。

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(c)映画「鬼太郎誕生ゲゲゲの謎」製作委員会

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