選者 / トム・ブラウン みちお「哀愁しんでれら」

文 / トム・ブラウン みちお（コラム）、田尻和花（作品紹介）

3人の気持ちがねじれを生んでどんどんねじれてひとつの槍みたいになっていきます

この映画は、ホラー映画というよりかはスリラーなんだけど、なぜこれを提示したか！

今宵も悪夢を。という言葉にぴったりで神経の奥の奥から「もうやめて」と思うくらい怖いからです。

この映画を見ると、なんか浮ついているキラキラしたところから、奥深くの神経を揺さぶる恐怖に進んでいきます。

それが本当に面白くて恐怖を感じて続きが気になって、え、これどうなっちゃうんだー!??と僕の相方の布川のような声を皆さん出してしまうのではないでしょうか。


いったいどういう映画なのかというと、前半は土屋太鳳さんが主役で相手が田中圭さんのラブストーリーです。


土屋太鳳さん演じる主人公・小春は小さい頃に母親が出ていったので父子家庭で育ちます。


児童福祉の仕事をしている小春は子どもをしっかり育てられない母親に対して、自分を捨てた母親を重ねて嫌悪感を抱きます。

そんなある日、一晩で立て続けに不幸が起きてどん底になる小春。

そこで田中圭さん演じるキラキラしたヒーロー、開業医の大悟が登場します。

ロマンティックな出会いをした二人は恋に落ちていきます。

大悟は事故で奥さんを失っていて子供を一人で育てています。


小春は母親として愛情を注ぐことを決意して二人は結婚。

ここまでが序盤のあらすじです。

そしてここからどんどん「もうやめて」という展開になっていきます。身の毛もよだつほどにね。


土屋太鳳さんはこの役を引き受けるのを何回か断ったらしいですよ。

まじ、お弁当のシーンがあるんですけどね。

あー！ ダメだよ！ タオちゃん！ もうやめて！ 痛いよー！

ボキボキと僕の背骨が崩壊する音が聞こえる。

それくらいの衝撃!!


娘への愛情を注ぐ時に周りが見えなくなる大悟役の田中圭さんも怖い！

周りが見えてない人ってほんと怖い！


あと娘役のCOCOちゃんが凄い！ インスタグラマーらしいんですけど、めっちゃ可愛い顔したかと思えば、めちゃめちゃ憎たらしい表情をするのよ。

まさに可愛さ余って憎さ百倍！


この3人の気持ちがねじれを生んでどんどんねじれてひとつの槍みたいになっていきます。

その槍が見ている人間にゆっくりゆっくり深く刺さっていきます。

「エヴァ」のロンギヌスの槍みたいに。


もう刺さないでもうやめてと目を背けたくなりますが続きが気になるあなたは最後まで見続けることでしょう。

3人の愛はこじれて、こじれてどうなっちゃうんだー!?

哀愁しんでれら！



是非暖房ガンガンの暖かい部屋でみてください。



……背筋がカチコチに冷たくなってしまうから。

トム・ブラウン みちお

1984年12月29日生まれ、北海道出身。同じ高校の布川ひろきと2008年より活動を開始し、2009年に正式にコンビ結成。「M-1グランプリ2018」決勝で披露した“合体漫才”で注目を集め、現在「有吉の壁」（日本テレビ）などに出演している。

「哀愁しんでれら」（2021年製作）

母に捨てられた過去を抱え、児童相談所で働いていた小春は、ある晩怒涛の不幸に襲われてすべてを失ってしまう。そんなとき彼女が出会ったのは開業医の大悟とその娘ヒカリ。出会って間もないながらも、優しく裕福な大悟からのプロポーズを受け入れた小春は、どん底から幸せの絶頂に向かっていったはずだったが……。
キャストには土屋太鳳、田中圭、COCO、山田杏奈、ティーチャ、安藤輪子、金澤美穂、中村靖日、正名僕蔵、銀粉蝶、石橋凌が名を連ねた。監督は「かしこい狗は、吠えずに笑う」の渡部亮平。

「哀愁しんでれら」Blu-ray / DVD販売中

税込価格：Blu-ray 6380円 / DVD 5280円
発売元：カルチュア・パブリッシャーズ
販売元：株式会社ハピネット・メディアマーケティング