ホラーを語るリレー連載「今宵も悪夢を」 第66夜 [バックナンバー]
選者 / 桃月なしこ「スケルトン・キー」
呪いを信じない主人公に共感、でも危ない場所には行かないほうがいい
2024年5月10日 21:00 3
ホラーやゾンビをこよなく愛する著名人らにお薦め作品を紹介してもらうリレー連載「今宵も悪夢を」。集まった案内人たちは身の毛もよだつ恐怖、忍び寄るスリル、しびれるほどの刺激がちりばめられたホラー世界へ読者を誘っていく。
第66夜は
取材・
強くて素敵な主人公、ただ展開は胸糞
今回紹介するのは古呪術をモチーフにした物語で、日本の劇場では未公開の作品です。主人公はホスピスに勤めていた看護師の女の子。人の死が当たり前の場所で、作業的に対応することに嫌気が差した彼女は職場を辞めてしまう。そして次に行ったのが、住み込みで働く屋敷。脳卒中で体がまひしている旦那さんと、その奥さんという老夫婦の家です。
主人公のキャロラインはそこで働き始めますが、旦那さんがおびえていたり、屋敷の中に開かない部屋があったりと、何か引っかかる。キャロラインはすごく素敵なキャラクターで、強い女の子。だからどんどん突き進んでいって開かずの間を開けてしまう。「いったい何を隠してるんですか?」と奥さんに聞いたら、奥さんはその屋敷で黒人奴隷が殺された過去や、古呪術“フードゥー”の話をしてくれるんです。そして、夫はその呪術にやられておかしくなったんだろうと。フードゥーは呪いを信じるものにしか効かないと言われているので、キャロラインは自分には関係ないことだと思っていたんですが、そこからどんでん返しが始まります。
物語は何かしらずっと違和感がある状態が続きます。なぜキャロラインがそこまで旦那さんを助けたいと固執するのか? 夫婦とつながりのある弁護士がやたらと奥さんの肩を持つのはなぜか?といったモヤモヤや伏線は最後、きれいに回収されます。ただ展開は胸糞です(笑)。主人公が、おびえている旦那さんを助けるためにめちゃくちゃがんばってくれるんですけどね。
私は幽霊や呪術を信じていません。だから主人公に共感する部分があるわけです。いやいや、そんなわけあるかいと。でも話が進むうちに、いつの間にか主人公は呪いを信じるようになっていってしまうんです。幽霊を怖がる旦那さんを助けようとするために、呪術を使ってなんとかしようと試みる。そのせいで本人も知らぬ間に呪術という存在を心のどこかで信じてしまう。その結果、恐怖に巻き込まれていくわけなので。すごいグロいとか、人がめちゃめちゃ死ぬとか、そういう話ではないです。ただすごくよくできている物語で、ホラージャンルとして考えなくても面白い映画でした。呪いってなかなかピンとこないですが、危ない場所には行かないほうがいいですね。
桃月なしこ(モモツキナシコ)
1995年11月8日生まれ、愛知県出身。“可愛すぎる現役ナース”として一躍脚光を浴び、ファッション雑誌bisのレギュラーモデル、コスプレイヤーとして活躍している。サカイ引越センターのテレビCMに出演しているほか、「魔進戦隊キラメイジャー」で敵幹部ヨドンナ役に抜擢され、スピンオフ作品「ヨドンナ」シリーズ第1作から第3作で主演を務めた。東映の配信ブランド・Xstream46作品「ようこそ東映殺影所へ」にも主演。2022年放送アニメ「恋は世界征服のあとで」の乱乱役で声優デビューを果たした。現在「おはスタ」(テレビ東京系)に金曜日レギュラーで出演中。参加したドラマ「THE3名様Ω」は5月24日よりFODで独占配信される。
「スケルトン・キー」(2005年製作)
米ニューオリンズにある屋敷に看護師として住み込みで働くことになった女性、キャロラインの恐怖が描かれる。彼女が訪れたのは鏡が1つもなく、至るところに魔よけのレンガくずが撒いてある古い家。脳卒中の結果、まったく身動きできなくなった老夫婦の夫ベンを世話するキャロラインは、妻ヴァイオレットからすべての部屋を開けられる合鍵(スケルトン・キー)を預かることに。ある日、合鍵でも開けられない部屋を発見し、その土地に伝わる古呪術“フードゥー”の存在と、昔この屋敷で起こった惨劇を知ることになる。
「スケルトン・キー」Blu-ray / DVD販売中
税込価格:Blu-ray 2075円 / DVD 1572円
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※上記は2024年5月時点の情報
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大いいホークス @tg0936
@eiga_natalie @nashiko_cos この映画も大いい‼️