上段左からトム・ブラウン みちお、磯村勇斗、SCANDAL RINA。下段左から野水伊織、南波志帆、桃月なしこ。

ホラーを語るリレー連載「今宵も悪夢を」 第67夜 [バックナンバー]

私たちはなぜ“恐怖の世界”に惹かれるのか?

連載最終回に寄稿者6人が原点語る

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ホラーやゾンビをこよなく愛する著名人らにお薦め作品を紹介してもらうリレー連載「今宵も悪夢を」。集まった案内人たちは身の毛もよだつ恐怖、忍び寄るスリル、しびれるほどの刺激がちりばめられたホラー世界へ読者を誘っていく。

最終回となる第67夜は、連載メンバーであるトム・ブラウンみちお磯村勇斗SCANDAL RINA、野水伊織南波志帆桃月なしこが大集合。数々のホラーを紹介してきた彼らは、そもそも“恐怖の世界”になぜ惹かれてしまうのか? 今回は「私が恐怖を求める理由」をテーマに、根源に眠るホラーへの思いや記憶をつづってもらった。

/ トム・ブラウン みちお、磯村勇斗、SCANDAL RINA、野水伊織、南波志帆、桃月なしこ

トム・ブラウン みちお「ホラーとユーモア」

トム・ブラウン みちお

トム・ブラウン みちお

僕がホラーにハマったきっかけはなんだろうと考えた時に思い出すのは、この企画でも紹介したことのある「ドーン・オブ・ザ・デッド」(「ゾンビ」のリメイク)。
この映画からゾンビが好きになりました。

ディストピアな世界観とゾンビのルールやホラーの中にあるユーモア。全て詰まっていたと思います。
お子さまランチみたいに全部盛りで、「ドーン・オブ・ザ・デッド」1本で心が満タンになります。


この映画からディストピア特有のすべての都市機能が止まった雰囲気と、余った資源や場所でサバイバルする感じが好きになったんだと思います。


そしてホラーとユーモアの観点からいうと「死霊のはらわた」シリーズです!
「死霊のはらわた」は若い男女数人で森の小屋に行くというホラーの定番の始まり方で、

ネクロノミコンという死者の書というのを偶然見つけてしまい、仲間が死霊に取りつかれる。

というお話。

めちゃめちゃ怖いけど、いやなんでだよ!とか血の量多いよ!とか心の中で思わず突っ込んで笑ってしまう。

死霊のはらわた II」なんかは、死霊が取りついた自分の手と戦ったりするところが怖いけど滑稽だったり。

「死霊のはらわたIII」(キャプテン・スーパーマーケット)なんかは、井戸から噴き出てくる血の量が多すぎて、怖いより笑ってしまったりする。


僕は恐怖の中に笑ってしまうシーンがあったりアクション要素や人間ドラマがあったりするホラー映画がやっぱり大好きなんです。


ちなみに去年アメリカで公開された「死霊のはらわた ライジング」はむちゃくちゃ怖くて、でも大笑いするくらい面白くて、グッとくる人間ドラマもあってねー、もう面白すぎて痺れる作品です。

監督はリー・クローニンという、苦労人な名前の監督で、

なんとオリジナルの「死霊のはらわた」の監督だったサム・ライミと主役を演じたブルース・キャンベル製作総指揮という最高の布陣。


皆も是非怖くて面白い!をその身で体感してみて。

そして友達に教えてあげて下さい。

僕もホラー映画を通じて尾崎世界観さん、こがけんさんと仲良くお話できたりしました。

ホラー映画を教え合ったり語り合ったりするのって秘密を共有し合ってるみたいでワクワクします。

そしてコメディ要素のあるホラー映画を見るとお笑いのネタが浮かんだりする、そういう意味で仕事にも生きています。

「死霊のはらわたIII」(キャプテン・スーパーマーケット)で、主人公が童謡「ロンドン橋落ちた」を歌いながら、自分の小さい分身を踏み潰そうとする様子に影響をうけて

「ロンドン橋落ちた」の英語バージョンを歌って近づいて相方の布川の首の骨を折る。
みたいなボケをやったこともあったり、

断末魔をリズミカルにして曲にしてみたり。


僕らの漫才はホラーとユーモアでできているんです。

ホラー万歳です。



今後もホラー映画を愛していきたいと思います。


皆さま。


……今宵も悪夢を。

コラム
映画作品情報
映画作品情報
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トム・ブラウン みちお

1984年12月29日生まれ、北海道出身。同じ高校の布川ひろきと2008年より活動を開始し、2009年に正式にコンビ結成。「M-1グランプリ2018」決勝で披露した“合体漫才”で注目を集め、現在「有吉の壁」(日本テレビ)などに出演している。トム・ブラウン単独ライブ2024「たろう7」が5月から6月にかけて愛知、北海道、大阪、福岡、東京で開催中。

磯村勇斗「彼を追い求めて」

磯村勇斗

磯村勇斗

僕がホラー映画を観始めたのは、中学生の頃。兄と一緒に「週末ホラー映画祭」を開催していた。毎週二人でレンタルビデオショップに行き、お互い観たいホラー映画を手に取り家で鑑賞していた。ジョージ・A・ロメロ作品と出会ったのもこの頃だ。ジャンルとしてはゾンビが多かったが、スプラッター系やゴースト系とホラー全般を兄と一緒に楽しんでいた。学生の頃の思い出の時間でもある。
なぜここまでホラー映画に拘っていたのか、それは子供の時にふと観てしまった「バタリアン」がきっかけだろう。深夜寝る前、TVで偶然放送していたバタリアンを観た時、僕はバタリアンの姿に惚れてしまったのである。恐怖より何か神秘的なものを見たような感覚だった。それ以降、彼のことが忘れられなく夢にまで出てくるようになっていた。僕は「あの」造形が好きだったのだと中学生の時に気づいた。そこからは、バタリアンの衝撃を追い求め、様々なホラー映画を見漁るようになっていた。今となってはホラー映画を観る際、人間のエゴや、物語、刺激感度にフォーカスして鑑賞するようになったが、今尚バタリアンを超える大恋愛はしていない。運命の出会いを求め、僕はこれからもホラー映画を観続ける。
最後に、ここまでコラムを拝読して下さった皆様ありがとうございました。コラムを通して、皆様が少しでも運命のホラー映画に出会えていたら僕は嬉しいです。

映画作品情報
コラム

磯村勇斗(イソムラハヤト)

1992年9月11日生まれ、静岡県出身。特撮ドラマ「仮面ライダーゴースト」のアラン / 仮面ライダーネクロム役、連続ドラマ小説「ひよっこ」でヒロインの夫となる役を演じ脚光を浴びる。第47回日本アカデミー賞では映画「月」の演技で最優秀助演男優賞を獲得した。連続ドラマW-30「演じ屋 Re:act」が本日5月24日から放送・配信され、10月11日に主演映画「若き見知らぬ者たち」、10月に映画「八犬伝」が公開される。

SCANDAL RINA「刺激的な世界へ気分をトリップさせてくれる。」

SCANDAL RINA

SCANDAL RINA

私が恐怖を求める理由。
夢がないようにも感じてしまうのだけど、どこかで、絶対にあり得ないものを見せてくれて、気分をトリップさせてくれるのがホラー映画だと思っている。現実に戻ったときの安堵感や、そこでしか体験できない刺激が病みつきになっているのだと思う。それに、ある意味で好き嫌いが分かれるジャンルだという事実も特別な孤高感があって魅力的だ。ストーリーや設定は勿論、ダークな雰囲気の中で表現される独特の美しさにも惹かれる。
コラムにも取り上げた「エスケーピング・マッドハウス」などは、実話が基になっているし例外はあるのだけど、自分の人生では経験しないだろうなと思うと、やっぱりトリップできる。
敢えて明るい世界観で作られた作品も毒と甘さが混じっていて何だかときめく。
この連載のお話を頂いたときは、作品を見てある程度のボリュームの文章を書き続けられるのかドキドキしていた。だけど、意外にも一度も悩み苦しむことなくスラスラと言葉が溢れてきて、改めて、映画が好き。文章を書くのが好き。と強く思わせてくれる大切な場所になっていた。
音楽活動とはまた違う脳の使い方ができる深呼吸の時間でもあった。リレー形式で皆さんがどんな作品を選ばれるのかも毎回楽しみだったし、個性的なメンバーの中に入れて頂けてとても嬉しかったです。素敵な機会を本当にありがとうございました。最高に楽しかったです!

コラム

SCANDAL RINA

1991年8月21日生まれ、奈良県出身。2006年にHARUNA(Vo, G)、MAMI(G, Vo)、TOMOMI(B, Vo)と結成したガールズバンド・SCANDALでドラムとボーカルを担当。2008年にシングル「DOLL」でメジャーデビューを果たし、翌2009年にシングル「少女S」でレコード大賞新人賞を受賞した。2019年にはSCANDALのプライベートレーベル・herを設立。現在「SCANDAL TOUR 2024 “LUMINOUS”」が国内・アジア各地で開催中で、5月開催の「森、道、市場2024」、6月開催の「FLOW THE FESTIVAL 2024」、7月開催の「LuckyFes'24」、10月開催の「聴志動感 2024 ~umeda TRAD Last Season~」「TOKYO ISLAND 2024」への出演も決まっている。

野水伊織「死を知ろうとする者」

野水伊織

野水伊織

物心ついたときには、恐怖にまつわるものが身近にあった。心霊番組、ホラー漫画、「ゲゲゲの鬼太郎」、実際に見た幽霊。
母と祖母がそういった類のものが大好きで、私も怖いと言いつつ楽しんでいたのだが、ホラー映画に関しては別だった。
レンタルビデオ屋に並ぶ、ティム・カリー演じるペニーワイズがこちらを見つめる「IT」(1990)のジャケットが怖くて、「ホラー映画を観たい」と自分から言うことはついぞなかった。
しかし、大人になり自分の意思で映画を観るようになった時、「ホラー好きなんだから、やはりホラー映画も観るべきでは」と「IT」を手に取った。
するとどうだ。あれほど怖かったペニーワイズはとってもキュートで、話の内容もジュブナイルに近い。大満喫したものの、私の頭には疑問が浮かぶ。「あれ? ホラーってもっと怖いはずじゃなかったっけ」と。
そこからさらなる恐怖を求めてホラー映画を漁ってゆく内に、私はことにゴアジャンルが好きだと気づく。そういえばペニーワイズは怖がったくせに、「デスファイル」を観たがって母に止められたっけ。
なぜこんなにもホラーへの興味が尽きないのか、私としては「普段見られないものが見たい」という好奇心だと思っていた。けれどかつて、仕事で出会ったスタッフ氏に言われたことが頭をよぎる。
「野水さんは、死ぬことがとても怖いんじゃないですか? だから死を知ろうとしているんじゃないですか?」
ああなるほど。どうやら私は、常に死を、感じていたいらしい。

と、いつも堅苦しい文章でホラー映画を語ってきましたが、楽しかったこの連載も今回で最後ということで寂しくなりますね……。
とはいえホラー映画はこれからもたくさん生まれます。皆さんも、楽しいホラーライフをお過ごしください!
ありがとうございました!

映画作品情報

野水伊織(ノミズイオリ)

北海道出身、声優。2009年放送のアニメ「そらのおとしもの」で本格的に声優としてのキャリアをスタートさせ、以降テレビアニメ「デート・ア・ライブ」「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」、ゲーム「艦隊これくしょん-艦これ-」に参加している。現在は配信番組「まろに☆え~るのYouTube LIVE」に出演中。

南波志帆「私はなぜだかどうしても生き残りたい」

南波志帆

南波志帆

「今宵も悪夢を」案内人のすいか生肉ゾンビが大好きな南波志帆です。私はこのホラーコラムにて、ホラー縛りにもかかわらず、好き勝手に面白ゾンビ作品を紹介してきました。映画ナタリーさん、そして、読者のみなさんの懐の深さに感謝でございます。

そんな私は小さな頃から、謎の強烈なサバイバル精神があり、いつどんな状況になっても、生き残りたいと考えていました。

実際に起こったあらゆる事件や事故、災害など、自らの生命が脅かされる可能性があるものを把握したい気持ちも強くて、どんな風に行動したら助かるのかと考えるのが日常でもありました。

そんな中、2012年に起きた「マイアミゾンビ事件」をきっかけに、ゾンビが蔓延る世界がやってくるのでは?と真剣に考えるようになり、ゾンビ作品を研究するようになりました。

私が一番好きなのはゾンビ作品ですが、その他のホラー作品を観ることも好きです。それは考えたこともなかった角度からのあらゆる想定をしたいからで、把握することで対処法や戦い方を学び、安心したいのだと思います。

人間は知らないものに対して恐怖を覚えると思うので、私は知恵と知識をつけることで、何が起きても動揺しない、強い自分を目指してきたのだと思います。それはすべて有事の時に役立たせ、大切な人たちを守るため。

ここ数年特に実感しましたが、様々なことが巻き起こる不安定なこの世界で、賢く逞しく生きていきたいですね。
みなさん、また会う日まで、一緒に生き残りましょう……!!

南波志帆(ナンバシホ)

1993年6月14日生まれ、福岡県出身のシンガー。2008年11月にミニアルバム「はじめまして、私。」でデビューを果たし、デビュー10周年を迎えた2018年には初のベストアルバム「無色透明」をリリースした。2014年からNHK-FM「ミュージックライン」のDJを務めている。6月29日には自身初のディナーショー「THE NANBA DINNER SHOW~15th Anniversary~」を東京・ブルースアレイで開催する。

桃月なしこ「日常の中の非日常を求めて」

桃月なしこ

桃月なしこ

私は以前より夢の一つとして「ホラー映画に出演したい」と言うくらい映画のジャンルの中でもホラー映画が好きです。
今回のコラムテーマが「私が恐怖を求める理由」という事だったので、なぜホラー映画を好んで観てしまうのか一度考えてみました。

“ホラー作品”と言っても幽霊が出てくる作品だったり、人同士の醜さを描いている作品だったり、殺人鬼や呪いなどホラーの中にも様々なジャンルがあります。今までこの連載企画で紹介してきた作品を見ての通り、今でこそ私は人間の醜さだったり対人間だからこその怖さを感じられる作品が好きですが、最初にホラーというものを認識した作品は貞子(「リング」)でした。
初めて観た時が幼少期だったため、「お化け怖い!」という一種のトラウマを植え付けられました。
それのせいでしょうか。その後一度だけ、実家の階段で長い黒髪で顔が隠れており、白いワンピースを着た女性が立っているのを見かけたのです。テレビで観た貞子そのものすぎて、恐ろしく、声が全く出なかったのを覚えています。とても恐ろしかったはずなのにあの時のドキドキとした恐怖心が未だに忘れられず、またトラウマレベルの恐怖を感じることが出来たら、似たような恐怖体験ができるのではないかと……普通の日常では感じられないスリリングをホラー映画を観ることで追い求めているのかもしれません。今はもう大人になってしまったので、幼い時に見えていた幽霊は見えなくなってしまいました。だからこそ一番身近にいる「人間」に恐怖を求めて、「人間」の恐怖を描いた作品を好んで観るようになったのかもしれませんね。人は、普段理性や社会のルールや常識で抑えられている感情や言動が、窮地に追い込まれると抑えられなくなるんですよね。その姿を見て、普段は取り繕ってはいるけど人間は本来醜いものなのかもしれないと感じたり、自分が窮地に追い込まれた時はどんな姿を見せてしまうんだろうと考えると怖くなってしまい、それって今は見えない幽霊よりよっぽど恐ろしいことなんじゃないかなと思うようになりました。
今回の連載企画で、ホラー作品を好きな方々が沢山紹介してくれたおかげで知らなかった作品や、いつもは観ることない作品ジャンルを知ることもできました。まだ紹介されている作品全てを観れているわけではないので、一つひとつ観ていって、新たな恐怖を感じられたら嬉しいなと思います。

映画作品情報

桃月なしこ(ももつきなしこ)

1995年11月8日生まれ、愛知県出身。“可愛すぎる現役ナース”として一躍脚光を浴び、ファッション雑誌bisのレギュラーモデル、コスプレイヤーとして活躍している。サカイ引越センターのテレビCMに出演しているほか、「魔進戦隊キラメイジャー」で敵幹部ヨドンナ役に抜擢され、スピンオフ作品「ヨドンナ」シリーズ全4作で主演を務めた。東映の配信ブランド・Xstream46作品「ようこそ東映殺影所へ」にも主演。2022年放送アニメ「恋は世界征服のあとで」の乱乱役で声優デビューを果たした。現在「おはスタ」(テレビ東京系)に金曜日レギュラーで出演中。参加したドラマ「THE3名様Ω」は本日5月24日よりFODで独占配信。

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トム・ブラウンみちお🐸 @tom_mitio

ホラーコラム最終回!!
今宵も悪夢と共に。 https://t.co/49WNhdU1xA

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