ステージナタリー

相反するものの間で格闘し続けた蜷川幸雄の生涯をつづる、長谷部浩「権力と孤独」

164

「権力と孤独 演出家 蜷川幸雄の時代」(岩波書店)が、4月21日に発売される。

「演出術」(ちくま文庫)の共著や幾度にもわたる取材で、生前の蜷川幸雄と親交のあった長谷部浩が、蜷川の生涯をつづる本書。蜷川が関わってきた戯曲とそれぞれの時代の空気感を、蜷川の生の声と「あえて書き込もうと思った」という長谷部の“私的な思い”を交えながら、39章にわたり描く。

「二二 藤原竜也十四歳の出現」の章では、藤原竜也が蜷川の葬儀で読んだ弔事と、それに対する木場勝己の印象も書き留められている。第一線で活躍しながらゴールド・シアターやネクスト・シアターを率い、古いものを壊し新しいものを取り入れてきた蜷川が、“権力と孤独”、“王道と異端”、“中央と辺境”と、相反するものの間で格闘する姿を現場から収めた貴重な1冊だ。

「権力と孤独 演出家 蜷川幸雄の時代」(岩波書店)

目次

一 蜷川幸雄はバイクのヘルメットを隣席にどさりと置いた
 「稽古場という名の劇場で上演される三人姉妹」 一九八四年秋

二 キューポラの町に生まれて
 「下谷万年町物語」 一九三五年秋

三 美術への憧憬。開成中学・高校時代
 「制服」 一九四八年春

四 青俳養成所。俳優から演出家へ
 「コースト・オブ・ユートピア」 一九五五年春

五 現代人劇場とラディカリズム
 「真情あふるる軽薄さ」 一九六九年夏

六 敗れ去った者の情念的伴走者として
 「ぼくらが非情の大河をくだる時」 一九七二年秋

七 櫻社解散と参宮橋事件
 「泣かないのか? 泣かないのか一九七三年のために?」 一九七四年夏

八 市川染五郎のロミオは疾走する
 「ロミオとジュリエット」 一九七四年春

九 唐十郎への恩義。三島由紀夫への反発
 「唐版滝の白糸」 一九七五年冬

一〇 劇作家秋元松代最大のヒット作
 「近松心中物語」 一九七九年冬

一一 海外への道筋。東方から来たメディア
 「王女メディア」「NINAGAWAマクベス」 一九八三年夏

一二 押す者のいない乳母車
 「にごり江」 一九八四年冬

一三 一発の銃声で青春が終わった日
 「タンゴ・冬の終わりに」 一九八四年春

一四 蜷川スタジオの誕生と過酷な演出
 「NINAGAWA少年少女鼓笛隊による血の婚礼」 一九八六年夏

一五 大新聞に、一部の壁新聞で対抗する
 「ハムレット」 一九八八年春

一六 そして中劇場へ。目線を演出する
 「三人姉妹」 一九九二年冬

一七 背水の陣で小劇場へ
 「夏の夜の夢」 一九九四年春

一八 階段をのぼり、権力へとすりよる
 「ハムレット」 一九七八年夏

一九 蜷川幸雄の横顔。翻訳家の目
 「ハムレット」 一九九五年秋

二〇 激情と思慮のただなかで
 「ハムレット」 二〇一五年冬

二一 栄誉と芸術監督
 「身毒丸」 一九九五年冬

二二 藤原竜也十四歳の出現
 「身毒丸」 一九九七年春

二三 野田秀樹作品に挑む
 「パンドラの鐘」 一九九九年冬

二四 国が倒れるすさまじい音
 「グリークス」 二〇〇〇年夏

二五 ベトナム戦争の悪夢
 「マクベス」 二〇〇一年冬

二六 「蜷川イヤーズ」とレセプショニスト
 「マクベス」 二〇〇一年冬

二七 大竹しのぶ寺島しのぶ。獰猛にして果敢な
 「欲望という名の電車」 二〇〇二年春

二八 吉田鋼太郎主演のシェイクスピア
 「タイタス・アンドロニカス」 二〇〇四年冬

二九 野村萬斎は生を嘆く
 「オイディプス王」 二〇〇四年春

三〇 歌舞伎、その前近代的な闇と死
 「NINAGAWA十二夜」 二〇〇五年夏

三一 怒り「ペリクリーズ」 二〇〇三年冬

三二 井上ひさしとの蜜月
 「天保十二年のシェイクスピア」 二〇〇五年秋

三三 オールメールキャスト。スキャンダラスな匂い
 「お気に召すまま」 二〇〇四年夏

三四 ゴールド・シアターとネクスト・シアター。車の両輪のように
 「真田風雲録」 二〇〇九年秋

三五 村上春樹をアクリルの空間に収める
 「海辺のカフカ」 二〇一二年春

三六 香港のリア王
 「鴉よ、おれたちは弾丸をこめる」 二〇一四年秋

三七 もう少し優しくしとけばなあ。演出補井上尊晶の述懐
 「鴉よ、おれたちは弾丸をこめる」 二〇一四年秋

三八 生とは猥雑にして神聖ではないか
 「リチャード二世」 二〇一五年春

三九 長いお別れ。もう、この劇場の主はいない
 「尺には尺を」 二〇一六年春

あとがき

ステージナタリーをフォロー