SPECIAL OTHERS「PB」ツアー野音で感動のフィナーレ
2009年5月18日 17:57 1
この日の天気は薄曇りで、気温も最高気温22度と5月中旬にしては低め。絶好の野音日和とまではいかなかったが、オーディエンスの表情は晴れやか。超満員の会場には、SPECIAL OTHERS初の野音ワンマンへの期待感が充満していた。
陽がだいぶ落ちた17時30分過ぎ、野音のステージを踏みしめるようにゆっくりとした足取りでメンバーが登場する。その姿を確認すると、座っていた人たちも立ち上がり彼らを大きな拍手で迎えた。4人は定位置に着くと、1音1音を確かめながら演奏準備に取りかかる。ゆっくりと時間をかけて音を重ね、空気が整ったところでライブは「Surdo」からスタート。開放的な空気は演奏にも反映され、4人の紡ぎ出す音が全方位に広がっていった。
続けて肌寒さを吹き飛ばすような「Title」で一気に観客のボルテージを上げると、挨拶を兼ねたMCで宮原良太(Dr)は、「ついにこの日が来てしまったという感じです……」と感慨深げ。「雨が降らないといいですが、ゆっくり楽しんでいってください」と語り、アルバム「PB」の中で異彩を放つレゲエ調のナンバー「Potato」で会場を熱くする。どっしりとしたリディムを観客は体を揺らしながら全身で受け止めていた。
その後、4人は曲ごとに特別なアレンジを加えながら、この日だけのライブをその場で作り上げていった。音数の少ない「SPinWednesday」では息のあったプレイを見せつけ、おなじみの「Uncle John」ではイントロから違うアレンジを展開。時折加わる宮原と芹澤優真(Key)のコーラスは、大きな会場を意識してか心なしかいつもより大きめだ。しかし、4人の佇まいは普段よりもリラックスしており、何度も会場を見渡しては幸福を噛みしめるような表情を浮かべていた。
ほどよく会場もあたたまったところで第1部が終了。観客はアルコールの補充に向かったりと、第2部を楽しむべくコンディションを整える。そして、少し空気が落ち着いたところで、いよいよ第2部がスタート。民族音楽的な音色から始まった「Life」では、太いリズムが野音を支配。そして、トリッキーでクセのあるリズムが光る「PB」に続いては、「Stay」で会場をリゾート気分に。起伏の激しいこの曲では、幾度となくクライマックスが訪れ、そのたびに4人の紡ぎ出すキラキラとして音の洪水がオーディエンスを飲み込んだ。
再び口を開いた宮原は「ついに野音でワンマンです。雨も降ってないし、俺たちついてるよ」と満足な様子。「初めてのFUJI ROCK FESTIVALのときも晴れたし」と芹澤も“晴れバンド"っぷりを強調する。そして宮原は「音楽を続けてきて、マジで幸せだっていう瞬間です」「数々のアドベンチャーを経て、野音にたどり着いたわけですが、最高のアドベンチャーになりました!」と何度も喜びを言葉にした。「sunrise」では宮原はボンゴ、芹澤はピアニカ、柳下武史(G)はアコースティックギターを手にステージ前方に移動。手作り感あふれる楽曲をCDの雰囲気そのままに、最小限の楽器で再現。野外にこの上なく似合うナンバーに誰もがニヤリとしたことだろう。
終盤のMCで柳下が「バンドを始めた頃は、友達3、4人しかライブに来てくれなくて」「(ライブに来てくれた)2人のために作った曲なんかもあったりして……」と口にすれば、宮原は「2人からこんなに増えちゃって、不思議な感じがします」と続ける。そして「これからもSPECIAL OTHERSをごひいきにお願いします」と深々と頭を下げ、「IDOL」へと繋げた。
アンコールでは地鳴りのような歓声を浴びつつ、メンバーがステージに再登場。宮原は「ついにこのアドベンチャーも最後です。このアドベンチャーを締めるのにふさわしい俳句を」と、柳下にツアー中の恒例であった俳句の読み上げるよう促す。柳下は躊躇しながら、一旦それを保留し「私事なんですけど……」と前置きした後、15歳のときにギターを始めたことや、そのきっかけが公立高校に合格した記念に父親にギターを買ってもらったことであるエピソードを披露。その父親が今日還暦を迎えたことを口にすると「Happy Birthday」をムーディーなアレンジで弾いた。
そして、いよいよツアー最後の俳句コーナーへ。スポットライトの下で柳下は大きく息を吸い込むと、「僕たちの/アドベンチャーは/これからです」と決意表明とも言うべき俳句を読み上げ喝采を浴びた。アンコール1曲目は「AIMS」。陽気なサウンドが野外の空気と融合し、心地よい空間を生み出していく。4人は演奏の手を休めることなく、そのまま「BEN」へとなだれ込み、ギターを歪ませたりとそれぞれが自由に音を奏でながら、ライブを完成させていった。
演奏終了後、4人は揃ってステージ前方へ。1列に並び深々とお辞儀をするも名残惜しそうにステージ上を歩き回り、客席にタオルを投げ込んだりとファンサービスを続ける。ひとしきり挨拶を終えると、「楽しかったです。また夏に会いましょう」とファンに向けて再会を約束し、ステージを去った。
ツアーファイナルだからと飛び道具的なものを用意するわけでもなく、凝った演出やパフォーマンスも一切なし。しかし、この上なくSPECIAL OTHERSらしいアットホームなライブは、オーディエンスを十二分に満足させる内容であったことは間違いないだろう。
なお、この日の模様はSPECIAL OTHERS初の映像作品集として8月12日にDVD化されることが決定。野音の空気を封じ込めた、開放感と多幸感あふれるものとなりそうだ。
※記事初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
SPECIAL OTHERS「QUTIMA ver.10 -PB Adventure -」
5月16日 日比谷野外大音楽堂セットリスト
<1st set>
01. Surdo
02. Title
03. Potato
04. SPinWednesday
05. Uncle John
<2nd set>
01. Life
02. PB
03. Stay
04. Sunrise
05. Laurentech
06. IDOL
EN1. AIMS
EN2. BEN
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音楽ナタリー @natalie_mu
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