NICO、バイン兄貴と横浜BLITZ舞台に轟音セッション

昨日11月25日、NICO Touches the Wallsがバンド名にちなんだ恒例の企画ライブ「1125（イイニコ）の日ライブ」を神奈川・横浜BLITZで開催した。

現在バンド史上最長ツアー「TOUR 2012"ALGORHYTMIQUE"」を開催中の彼ら。その合間に行われたライブにはメンバーが兄貴と慕う先輩GRAPEVINEが登場。オープニングからアンコールまで、その相思相愛ぶりを伺わせるセッションやMCが繰り広げられた。

通常のイベントならばトップバッターはゲストバンドが務めることが多いが、この日は光村龍哉（Vo, G）が1人でステージへ。マイクの前に立ち「ようこそお越し下さいました。今日は兄貴と呼ばせていただいているGRAPEVINEを招いてのライブでございます。まずはボーカルの田中さんをお呼びいたしまして……」とGRAPEVINEのフロントマン田中和将（Vo, G）を呼び込む。田中は「緊張してる？」と笑いながら観客に挨拶をすると、光村とともにマーヴィン・ゲイとタミー・テレルの名曲「Ain't no mountain high enough」をデュエット。光村の伸びやかなボーカルと、田中の艶のある歌声が絶妙なハーモニーを奏でる。さらに田中の「Permanentsにしていい？ 光村はパーマじゃないから、Permanents+ツーブロックだけど」という言葉で、高野勲（Key）が合流。今度は光村のメインボーカルでGRAPEVINEの「風待ち」が披露された。みずみずしい空気を届けた光村は、「ここからは愛すべきGRAPEVINE先輩にガツンと盛り上げてもらいます！」と改めて先輩を紹介した。

光村から後を任された田中だが、「別に俺らガツンと盛り上げるタイプのバンドじゃないんで……（笑）」と苦笑い。「洋楽わからないのに友達にフジロックに連れて来られて、全然知らない洋楽のバンド観てるような気分で観ててください（笑）」とフロアに話しかけて笑わせる。そこへ西川弘剛（G）、亀井亨（Dr）、金戸覚（B）も加わり、GRAPEVINEのステージが始まった。

心地良いリズムを刻み、徐々にフロアを温めていった「Darlin' from hell」からGRAPEVINEならではの複雑で深みのある音像を生み出す「NOS」へ。さらに西川と金戸が鳴らす轟音の中に亀井のドラムや田中、高野が叩くパーカッションの音色が響き、カオスな空間を作り上げた「YOROI」と、序盤から彼ららしいディープな世界を展開する。田中はMCでいつものように「元気にしてましたか、シュウマイ野郎ども！（笑）」と毒づくものの、「NICOのお客さんはこういうの傷つきますか？ こういうキャラクターでやってるんです（笑）」とフォローして会場を和ませていた。その後はせつなくも柔らかなメロディが印象的な「指先」を聴かせ、「豚の皿」では静謐なイントロから鬼気迫るアンサンブルへの展開でフロアを圧倒。GRAPEVINEの豊かな音楽性と卓越したテクニックを存分にアピールしていた。

田中はこの日のライブについて「先日光村と一緒に飲んだんです、『作戦会議をしましょう』ってメールをもらって。それで2人で酔っ払う前にいろいろなことを決めたんですけど、そこで決まったこととは全く違う内容になってます（笑）」と裏話を明かす。そんな後輩たちへ贈る彼らのライブも残りわずか。華々しくアッパーなサウンドで会場を盛り上げた「Suffer the child」に続き、ラストは「エレウテリア」でしっとりと締めくくった。

先輩の熱演を受けたNICO Touches the Wallsは、「じゃあNICO Touches the Walls、参りたいと思います！」という挨拶を経て、イベントのテーマ「1125のテーマ」からエンジンをかけていく。さらに古村大介（G）の小気味のいいギターリフと坂倉心悟（B）の奏でる重いグルーヴが響いた「泥んこドビー」、会場全体のハンドクラップが一体感をもたらした「手をたたけ」と起伏に富んだセットリストを展開した。

光村は、去年の時点でGRAPEVINEにオファーをしていたエピソードを告白。そして「デビュー前からかわいがってくれてて、ライブには呼んでくれないけど、打ち上げには呼ばれるという（笑）。一番頼りにしてる先輩で、相変わらずカッコいいなと。そんな兄貴たちに負けない、ロックなセットリストで送るので！」と先輩に宣戦布告をした。そこから突入したのは、NICOのサイケデリックな一面を全開にしたブロック。鋭利なギターと重いリズムがドープな空気を作った「病気」や、フロントの3人が楽器をかき鳴らした「錆びてきた」と続く。中でも「ラッパと娘」では対馬以外の3人が楽器を置き、ドラムやシンセサイザー、カウベルを鳴らす。そのスタイルはGRAPEVINEが披露した「YOROI」のパフォーマンスをほうふつとさせる部分もあった。

ディープなNICO Touches the Wallsをアピールしたあとは後半戦へ。メンバー全員のコーラスが肝となる新曲「夢1号」を届け終えると、「かけら～総べての想いたちへ～」「夏の大三角形」と美しいメロディが光るシングル曲を続けて披露する。最後は軽やかに「THE BUNGY」をプレイして、本編に幕を下ろした。

アンコールを求める拍手が沸く中、舞台では着々とドラムセットやキーボードが配置されていく。そして観客の視線がステージに集まる中、NICO Touches the Wallsの4人が再登場。「まだまだ大騒ぎしようぜ！」と、アンコールの1曲目として「バイシクル」でフロアの熱を上昇させていった。しかしライブのクライマックスはこの先に待ち受けていた。「まだまだお祭りは終わりません！ 本日1日限りのスーパーセッションをお届けします！」という光村の言葉から、GRAPEVINEのメンバーが勢揃い。合計9人のアーティストが集い、ステージは人と楽器でいっぱいに。光村は「人にぼくらの曲を歌ってもらうのは初めてです。お前ら覚悟しておけよ！」と観客に向かって叫ぶと、田中と息を合わせるように「B.C.G」のイントロを鳴らした。亀井と対馬が太いリズムを刻む中、田中と光村はお互いに声を張り上げ絶唱。その横で古村と西川はギターを、坂倉はベースを黙々と爪弾く。一方で高野はアグレッシブな動きで鍵盤を弾き、金戸は菓子をフロアにばらまき、ステージを奔放に行き来するというカオスっぷり。9人は自由なセッションを存分に楽しみ、原曲に比べさらに破壊力あるサウンドに生まれ変わった「B.C.G」でオーディエンスを圧倒した。

無事GRAPEVINEを見送ったあとのNICO Touches the Wallsは、全員が全身汗まみれの状態。「よかったけど……すごかったね。びっちょびちょだし」「ギターとキーボードが途中で電力の容量を超えちゃったし」と口々に先輩とのセッションのすさまじさ振り返る。そして「来年ももし『1125（イイニコ）の日ライブ』があったら来てくれるかな？」と光村が呼びかけると「イイニコー！」という威勢の良い返事が会場に響く。こうして今年の「1125（イイニコ）の日ライブ」は、来年の再会を約束する形で大団円を迎えた。