超特急やDISH//、Vaundyといったアーティストを輩出してきたスターダストプロモーションの音楽レーベル・SDRによるオーディション「超アーティストオーディション」が、今年も行われることが決定。9月30日まで応募を受け付けている。
第4回目となる今回のオーディションの応募対象となるのは、歌手だけでなく、作詞作曲者、その他「音楽で将来を考える人」すべて。グランプリ獲得者には、賞金および活動費として300万円が進呈される。
オーディション開催に際し、音楽ナタリーでは全2回にわたって特集を展開する。第2弾にはJUNEが登場。自身のアーティスト活動のみならず、ONE N' ONLYをはじめとした数々のアーティストの楽曲プロデュース、アレンジ、ボーカルディレクションなどで活躍する彼に、アーティストを“育てる側”から見た“印象に残る人”のポイントや、オーディションに参加すべき理由を語ってもらった。
取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 須田卓馬
SDR Presents 超アーティストオーディション 2025
超特急、DISH//、Vaundyなど、多彩なアーティストを輩出しているスターダストプロモーションの音楽レーベル・SDRによるオーディション。第4弾となる今回は歌手のみならず、作詞作曲などでアーティストを目指す人、その他音楽で将来を考える人、すべての人が対象となる。
グランプリ獲得者には賞金および今後の活躍を期待しての活動費として、300万円が贈呈される。さらに、デビューへ向けて、レーベルが育成契約を締結する。
募集期間
2025年7月17日(木)0:00~9月30日(火)23:59
審査
一次審査:10月初旬(書類審査)※選考通過者には10月初旬までに二次審査を案内予定
二次審査:10月中旬(オンライン)
最終審査:11月のいずれかの土日(東京都にて開催予定)
SDRは非常に面白い団体
──JUNEさんはSDRというレーベルにどんなイメージを持っていますか?
EBiDANのようなダンス&ボーカルグループもいれば、Vaundyさんのようなアーティストもいらっしゃって、ものすごく個性の強い方々が所属しているイメージですね。それに、EBiDANと言ってもグループによってそれぞれ特徴や魅力がまったく違うので、非常に面白い団体なのではないかなと思います。
──そのうえ、いわゆる一般的なアイドル像とは異なる独自の魅力がありますよね。
そうですよね。そもそも“非アイドル”としてEBiDANというものが始まったこともあって、おっしゃるように通常のアイドルとはひと味違ったグループが集まっていると感じます。
──JUNEさんから見たEBiDANの強みを具体的に挙げるとしたら?
アイドルに求められる要素って「カッコいい」や「歌える」「踊れる」など、いくつかありますよね。それらをレーダーチャートで考えたときに、「ファンサービス」の項目に秀でているのが彼らの特徴だと個人的には思っています。例えば楽曲やパフォーマンスには、ただカッコいいだけではなく面白い要素やはっちゃけたシーンなども含まれるのですが、彼らはそれをしっかり、ファンのためにためらいなくやり切れる。それによって親しみを感じさせる、ファンとの距離が近い存在ではないかなと思います。
──一般的にアイドルを目指す男の子たちの場合、「カッコいい」だけをやりたがる人が多そうなイメージはあります。人前でふざけるのなんて恥ずかしい、みたいな。
人によってはそうですね。たぶん超特急の皆さんも、最初からコミカルな表現を志向していた人たちではないと思います。やはりアイドルというものは個性がとても大事なので、「いかにしてほかにないものを作っていくか」という試行錯誤の過程の中で獲得していった武器なんじゃないかなと。
──では、EBiDANの中でもJUNEさんとの関係が深いONE N' ONLYの強みに関してはどうですか?
仲のよさですかね。彼らはグループとして一丸になる姿を見せることができるんです。誰かが失敗したらほかの誰かがカバーする、それが自然にスムーズにできる子たちなので、その姿が「応援してあげたい」という気持ちにさせるんじゃないでしょうか。パフォーマンスのうまさや顔のカッコよさという武器を持っているグループはほかにいくらでもいますが、彼らにしかない強みはそこだと思いますね。また、まったく言葉の通じない南米でTikTokを通じてブレイクしたのも、彼らが“何かを持っている”ことの証明と言えるでしょう。
──長年彼らの楽曲をプロデュースし、その姿を近くで見てきたJUNEさんからすると、メジャーデビューも果たした今の彼らの活躍には感慨もひとしおでしょうね。
自分は彼らのデビュー前、EBiSSHとさとり少年団という前身グループの時代から楽曲を制作させていただいていました。1人ひとりが本当にバラバラな個性や目標を持っている中でグループとして目指すべき方向を定めるにあたって、自分も歌詞の方向性などを一緒に考えましたから、ちょっと“隠れメンバー”のような気持ちもあったりします(笑)。
──いいお話ですね……。
最近の彼らを見ていると、ライブのパフォーマンスにしてもレコーディングにしても、本当に大きく成長したのを感じますね。初めの頃は1曲の振り入れだけでもかなりの時間がかかっていましたが、今では多忙なスケジュールの合間を縫って何曲もの振りを短時間で覚えられるようになりました。その様子を見ていると、ちょっと親心じゃないですけど(笑)、頼もしさを感じてうれしくなります。
──それこそ今では一緒に楽曲制作もするようになっていますしね。
そうなんですよ。彼らはもともと作詞作曲をしたことはなかったのですが、3、4年ぐらい前ですかね。「メンバーみんなで作詞をしてみよう」という話になり、それを見せてもらったときに可能性を感じました。この才能は伸ばしてあげたいなと思い、作詞からスタートして、今ではメンバーの何人かは作曲もできるようになって……この成長は本当に、純粋にうれしいですね。
オーディション経験者は心が折れない
──オーディションを通じてこの世界に入ってきた人とご一緒に仕事をすることも多いかと思いますが、JUNEさんから見て“オーディション上がり”ならではの強さを感じる部分はありますか?
大いにあります。やはりオーディションを勝ち抜いて今の立ち位置を手に入れた人たちというのは、よほどのことがない限り心が折れないですし、“常に勝負”という競争心を胸の中に秘めているので、それがレコーディングやパフォーマンスにおいて大きな財産になっているんじゃないかと感じますね。皆さん強いです。
──JUNEさんの周囲で、そういった“心の強さ”を感じた具体的なエピソードは何かありますか?
“常に勝負”という環境に身を置いて活動しているという点でワンエンのTETTAの例を挙げますと、以前はレコーディングでハマっちゃうことが多かったんですよ。「ハマる」というのは、正しいメロディラインを歌うことができずにどうしても違うメロディが出てしまうことで、例えば本来ドの音程で歌うべきところがどうしてもミになってしまうみたいな、意外とプロの現場でもあることでして。
──なんとなくわかる気がします。「この流れでその音程には行きづらい」みたいなのって、たぶん人それぞれあるんですよね。
で、一度ハマってしまうとなかなか抜けられないものなんです。そういうとき、普通の人はある程度のところで「ちょっとわからないっす」とあきらめてしまう。でも彼はすごく努力家なので、空いている部屋にこもって30分ぐらい延々とそのメロディを繰り返し体に叩き込みました。そして「やれます!」と出てきたけど、またできなくて(笑)。それでももう一度30分こもって、最終的にはちゃんと歌えるようになって帰ったということがありましたね。
──あきらめずに挑む姿勢も素晴らしいですし、結果的にできてしまうというのがまたすごいですね。
TETTAのそういうところは本当に尊敬します。あとはHAYATO(ONE N' ONLY)に関しても、常に練習量がすごいです。僕が仮歌を歌ったメロディやラップを渡すと、必ずその精度をはるかに超えた歌を仕上げてきます。そこは毎回レコーディングのたびに驚かされていますね。
──「求められる水準をただ満たすだけではつまらない」というハングリー精神があると。
はい。彼らはその精神を強く持っているので、本当に学ぶところが多い。ベストを目指すのは当然で、その中のさらにベストを貪欲に取りに行く姿勢がある。例えばLDHの方々と仕事をするときにも、毎回同じような強さを感じていますね。
オーディション落選は“失敗”ではない
──例えばJUNEさんがなんらかのオーディションで審査を務めるとなったら、どんなポイントを重視しますか?
それはもう完全に個性ですね。「この子は何か違うな」と感じさせるエネルギーがすごく大事だと思います。歌がうまかったり、演技が上手だったり、ダンスができたりという人はいくらでもいますし、努力さえすればある程度のところまではたどり着けるもの。しかし、個性は努力では手に入りません。なので自分はその人が持つ現状のスキルではなく、可能性を見るかもしれないですね。
──スキルが優れているだけでは印象に残らない場合がある?
そうですね。やはり第一印象で何を感じるか。その人が醸し出すオーラと言いますか、「何かがありそう」と感じさせる方に目が行くと思います。
──ということは、オーディションを受ける方は現状スキル面に不安があっても、そこまで気にする必要はない?
気にしなくていいです。目的がしっかりあって、その水準にちゃんとたどり着きたいという思いさえあれば、スキルはあとからいくらでも身に付けられるからです。そういう人であれば周りも目をかけますし、結局のところ人と人の関係性の中で行われるお仕事ですので、“人をその気にさせる”ということが一番大事なのではないかと思いますね。その人が持っている、人を惹き付ける力と言いますか。
──でもそれって、たぶん自分ではわからないですよね。
おっしゃるとおりです。自分にその力があるかどうかは自分では判断できないことですので、まずは他人の評価を受ける場に一歩踏み出してみてほしいですね。応募するだけならタダですし、もしオーディションに落ちたとしてもそれは“失敗”ではないですから。そこから新たな人生が広がっていきますので、どんどんチャレンジしてほしいなと思います。
──例えば、オーディションを受ける方へ向けて「これだけはしないほうがいい」とアドバイスできることは何かありますか?
よくオーディションの場で悔しくて泣き出してしまう方がいらっしゃるのですが、あまり弱い気持ちは見せないほうがいいです。もちろん涙というものは勝手に流れてしまうものなので仕方がない面もあるのですが、それを審査員たちが見ているということを忘れないでください。「あの子は心の弱い子なのかもしれない」と思われてしまうのは致命的です。
──確かに、そのオーディションの先にアーティストとしての活動があることを考えると、その人はみんなの希望になるべき存在なわけですもんね。
そういうことですね。何かを与える側の人間になることを目指しているはずですので。もちろん、ファンの方々に「この人を応援してあげたい、助けてあげたい」と思っていただくことも非常に大事なことなのですが、それ以前にやはり「この人はとてもいいパワーを放っている」と感じさせないと、なかなか特別な存在にはなれません。これはけっこう大事なことです。
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自分がどうしたいのかが一番大事