今年デビュー10周年を迎えたMrs. GREEN APPLEが6月に神奈川・Kアリーナ横浜で開催したエンタテインメントショー「Mrs. GREEN APPLE presents『CEREMONY』」。同じく10周年を迎えたTVerにて、本公演の模様の独占無料配信が開始された。
「Mrs. GREEN APPLE presents 『CEREMONY』」は、Mrs. GREEN APPLEが新たに立ち上げたエンタテインメントメディア。「ライブやフェスとは異なる、ファッションや音楽、カルチャーが融合した新しいエンタテインメントショーであり、プライズ(PRIZE)とはまた違う、プレイズ(PRAISE)というスタイル」を掲げて今年初開催され、主催者であるMrs. GREEN APPLEに加え、ATEEZ、日向坂46、HY、LE SSERAFIM、M!LK、My Hair is Bad、the engy、TOMOOの計9組が出演した(※My Hair is Badのライブの模様は配信には含まれない)。
音楽ナタリーではTVerでの独占無料配信を記念して、『CEREMONY』の見どころを紹介する。
文 / 小松香里ライブ撮影 / 田中聖太郎写真事務所
音楽とカルチャーが交わり合う祭典の開幕
オープニングでは、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴(Vo, G)、若井滉斗(G)、藤澤涼架(Key)が『CEREMONY』のキーカラーであるグリーンのドレッシーな衣装を着用してステージに登場。「『CEREMONY』へようこそ!」と凛々しい口調で告げた大森は、「目の前に円卓があって、僕自身興奮しています。『CEREMONY』を何かに例えるのは難しいので、皆さんと一緒に作っていけたらなと思ってます。アーティストの方々がお互いのライブを観たり、お互いのカルチャーに触れる機会は意外とありません。ここには2万人の皆さんがいらっしゃるわけなんですが、新たな音楽の発見や気付きや出会いみたいなものがあったら僕らは幸いです。『意外とノーマークだったな』とか、『意外とそこにアンテナ張ってなかったな』だったり、めちゃくちゃ心をつかまれてしまったり、一生の出会いになるかもしれません。特別な1日にしたいと思います。第1回『CEREMONY』、開幕します!」と開幕宣言した。
「お互いの音楽やカルチャーを讃え合い、交わり合うこの祭典を通じて、次世代のエンタテインメントコミュニティのあり方を提唱します」というステートメントが事前に発表されていたが、大森が言うように、これからここKアリーナ横浜でどんなことが起きるのかは未知の領域。ミセスと出演アーティストとオーディエンスによる化学反応がどのように起こり、終演後にはどんな感情が訪れているのだろうか。かつてない試みに、円卓に座ってミセスを見守る出演アーティストたちの表情からもドキドキとワクワクが見て取れた。
トップバッター・the engyが伝えた愛
オーケストラのBGMが流れる中、ミセスの3人は客席最前の円卓へと移動。入れ替わるようにMCのサッシャとノイハウス萌菜が登場し、プレゼンターとしてHYの許田信介(B)と仲宗根泉(Key, Vo)を呼び込む。2人が紹介した最初の出演者は京都出身の4人組バンド・the engy。するとビジョンに彼らの魅力を凝縮した映像が映し出される。このように、『CEREMONY』は出演アーティストがプレゼンターとして次の出演者を紹介し、ライブに移行するというスタイルで進行するのだ。
トップバッターの大役を担うthe engyのフロントマン山路洸至(Vo, G, Programming)は「緊張してるんですけど」とはにかみつつ、艶やかなグルーヴを持つ「She makes me wonder」でライブをスタートさせた。the engyの演奏中、ほかの出演アーティストは皆円卓に座っており、手を上げたり、リズムに乗ったりとさっそくノッている様子。ミセスの3人も楽しそうだ。この1曲目の光景ですでに『CEREMONY』の意義が伝わってくる。『CEREMONY』は、ジャンルも世代もバックグランドも国籍も性別もバラバラのアーティストが集まり、ともに愛する音楽を楽しむ場なのだ。音楽の楽しさを知り、新たな音楽と出会い、音楽を通して誰かとつながることの尊さを再確認させてくれる画期的なエンタテインメントであることが感じられる。
「いつも自分らがやってることがこんな素敵なところにつながってると知れて感動しています」と話す山路に、大森は思わず立ち上がって拍手を送った。まさに「PRAISE(賞賛する)」な光景だ。また、山路の「最後、思いっきり愛を叫んで帰りたいと思います」という言葉にATEEZが楽しそうに拍手をする場面も。『CEREMONY』がなければthe engyとATEEZが交わる機会は生まれなかったかもしれない。山路は「Hold You Again」を歌いながら「やりすぎちゃっていいですか?」と前置きして、ステージからアリーナエリアに降り、オーディエンスに近付いた。そのまま円卓エリアへと向かい、大森とハグ。若井と藤澤も立ち上がる。照れや遠慮が先行してしまいがちな国民性もあり、日本の音楽イベントではこういった光景はなかなか見られない。『CEREMONY』はそういった音楽を楽しむうえでのバリアのようなものを取っ払う意義も内包しているのだろう。
the engyのライブ後、ATEEZのYUNHOは興奮しながら「パワフルなエネルギーをもらってとても楽しかったです。このエネルギーが『CEREMONY』の最初に合っていた」とコメント。ミセスの3人はうれしそうにその言葉に耳を傾ける。ジャンルや世代やバックグランドが違っても音楽でひとつになれるということを『CEREMONY』はさっそく証明した。「エネルギーをいっぱいもらえました。もっとステージが観たいし、僕たちもこのあとがんばります」と気合いを入れるHONGJOONGの様子から、目の前でほかのアーティストのパフォーマンスを観ることで、次にライブを控えるアーティストにエネルギーが引き継がれて連鎖が生まれることがわかる。My Hair is Badの椎木知仁(Vo, G)がthe engyについて「すごい熱量でカッコよかったです。パッと見たらコワモテなんですけど、ライブを観て絶対いいヤツなんだろうなと思いました」とうれしそうに言うと、山本大樹(B, Cho)と山田淳(Dr)も「まったく同じです」と同意。アーティストがフェスや対バンで競演する場合、出演者はステージ袖や客席エリア端の関係者エリア、もしくはPA卓付近でライブを観ることが多い。しかし、『CEREMONY』はステージ目の前の特等席でライブを観ることができるのだから、出演者はいつもと違った楽しさを感じられるだろう。そもそもアーティストになる前はみんな1人の音楽好きだったのだから。
日向坂46とATEEZがもたらした至福の時間
次のプレゼンターであるLE SSERAFIMのSAKURAとHONG EUNCHAEが紹介したのは日向坂46。ライブの途中で大森が手の形がカタカナの「ヒ」を表す日向坂46のポーズをしていることに気付いた正源司陽子は「ありがとうございます!」と歓喜。「Love yourself!」のパフォーマンスを観ながら振付を完璧に踊り、感無量の表情でステージを見つめる藤澤の姿も目に入った。主催者であるミセスが一番『CEREMONY』を楽しんでいるのかもしれない。
M!LKの山中柔太朗が「ダンスがお上手すぎて僕らも練習しないとって思わされました」と日向坂46に賛辞を送ると、佐野勇斗はほかのメンバーとともに立ち上がり、振りの練習をすると見せかけて、自分たちの楽曲「イイじゃん」の“ビジュイイじゃん”ポーズを披露するという小芝居を繰り広げた。ライブの合間に出演アーティストのリラックスしたやりとりが見られるのも『CEREMONY』の魅力だ。
the engyがプレゼンターとして「ダンスがキレキレなのに先ほどお会いしたら笑顔がとても素敵だった、こちらの方です」と紹介したのはATEEZ。彼らはキレのあるダンスが映える「Lemon Drop」を日本初披露した。the engyやミセスの面々はATEEZのライブを観ながら心地よさそうに体を揺らす。MCではSANが「音楽やカルチャーが交差する空間に僕たちATEEZもご一緒できて光栄です」と『CEREMONY』へのリスペクトの意思を示し、続いてベートーヴェンの交響曲第9番をサンプリングしたド迫力のナンバー「WONDERLAND (Symphony No.9 "From The Wonderland")」が披露されると、ミセスの藤澤はたまらずステージへ拍手を送った。
それぞれの輝きを放ったTOMOOとM!LK
プレゼンターとして登場したHYの新里英之(Vo, G)は「なかなか2万人集まることはないので」と切り出すと、オーディエンスを巻き込んでウェーブを行う。「フェスでライブをやる前は(ほかの出演者の)ライブが観れないことが多いけど、今回は観れる。フェスだと袖で観るけれど、今回はみんなと同じ気持ちで観られるので幸せです」と『CEREMONY』ならではの幸せを噛み締めた。そんな新里らHYに紹介されたのはTOMOOだ。
TOMOOはマイルドかつ伸びやかな歌声で「Grapefruit Moon」を歌唱。「『CEREMONY』楽しいですね! 本当ピースフルな時間だなって。始まったときは、緑のきらびやかさと“魔法感”と非現実味に圧倒されていたんですけど、いざ音楽のステージが始まったら、当たり前ですけど出演している自分たちもお客さんも本当にみんな違うよなーってしみじみしています。円卓のテーブルにフルーツやお花が置いてありますが、いろんな色と輝き方があるよなって感じて、だからここに集えて幸せだなと思ってます」と話すTOMOOの言葉に、大森は大きくうなずく。『CEREMONY』を深く理解してくれていることに感銘を受けているように見えた。
続いてはATEEZのYUNHOとSANがプレゼンターとしてM!LKを紹介。YUNHOは「(先ほどの)僕たちのパフォーマンスを楽しんでくれているのを感じてパワーをもらいました」と、『CEREMONY』を通してアーティスト間での“パワーの循環”を実感していることを明かした。M!LKは「エビバディグッジョブ!」「テルネロファイター」と彼らならではのアゲアゲのナンバーを連発。観客の温かさに、佐野勇斗は「みんなめっちゃ優しくない? 親御さんに会ってみたい」と冗談を飛ばす。そしてM!LKは発表したばかりの新曲「wan」に続いて、「イイじゃん」を披露。円卓で踊ったり歌ったりしていたYUNHOは「楽しいですから……“イイじゃん”」と笑顔を浮かべた。自らのライブに対してほかのアーティストがすぐに反応を返してくれるのも、出演アーティストにとっては新鮮でうれしいことだろう。
大森は「TOMOOさんもおっしゃってくれましたが、すごくピースフルな空間。お互いのカルチャーに触れ合うことは、ミュージシャンはなかなかないので、僕ら自身とても楽しいですし、音楽の力をすごく感じています。出演者それぞれにちゃんとブランドがあるし、歴史があることを改めて目の当たりにしてグッときています」と『CEREMONY』に手応えを感じていることを言葉ににじませた。
みんなの距離を近付けたHYとLE SSERAFIM
HYのプレゼンターとして登場した日向坂46の髙橋未来虹は「私たちはお客様がペンライトを持っていない状態でのライブがおそらく初めてだったので緊張したんですが、お客様もアーティストの皆さまも立ち上がって応援してくださったのでうれしかったです」とコメント。出演アーティストもオーディエンスも『CEREMONY』特有のピースフルな空気感にすっかりなじんでいるようだ。
HYのライブは「366日」でスタート。円卓のアーティストたちは立ち上がって気持ちよさそうに体を揺らす。「AM11:00」の演奏中には名嘉俊(Dr)が「大好きだ、『CEREMONY』!」と叫んだ。また「ホワイトビーチ」では新里の掛け声に合わせてアーティストもオーディエンスも一斉にジャンプする。仲宗根が「アーティストの皆さん、前に来てください!」と呼びかけると、ミセスや日向坂46の面々がステージに集まり、メンバーと並んで腕をぐるぐる回してダンス。日向坂46の宮地すみれは「一緒に盛り上がることができてとても楽しかったですし、大好きな楽曲を聴けて本当に幸せです」と感激していた。
この頃にはTOMOOがミセスの円卓に加わったり、M!LKとATEEZのメンバーが同じテーブルを囲ったり、日向坂46の円卓に藤澤が加わったりと、出演者同士の距離がグッと近くなっていた。これも『CEREMONY』のなせる業だろう。
TOMOOに紹介されたLE SSERAFIMはグローバルヒット曲の「DIFFERENT」や「UNFORGIVEN (feat. Nile Rodgers)」で実力を見せつける。TOMOOが「『現実かな?』って思うようなとろけちゃうような美しさかつスパイシーな中毒性があってたまらなかった」とLE SSERAFIMのパフォーマンスへの感想を口にすると、日向坂46の富田鈴花も「開いた口がふさがらないというのはこのこと。妖精のような5人が現れたと思ったらパワフルで一糸乱れぬパフォーマンスに魅了されてしまいました」と賛辞を送った。
音楽の垣根を超えたMrs. GREEN APPLE
トリはもちろん主催のMrs. GREEN APPLEだ。1曲目に披露されたのは「ANTENNA」。曲中、大森は「CEREMONY!」と思いきり叫んだ。続いて「Magic」が演奏されると、ATEEZのYUNHOはジャンプをしながら恍惚の表情を浮かべる。大森は巻き起こるシンガロングに対して「もっと!」とアジテート。多くの出演者が立ち上がって手を上げながらリズムに乗る。大森はこの生まれたばかりのイベントを愛おしむかのように何度も『CEREMONY』の名を叫んだ。
重厚なアンサンブルと大森の鬼気迫るボーカリゼーションが会場を掌握した「Loneliness」に続いて、鍵盤の音色が響き、大森が「Hey!」と声を上げると若井のギターソロへ。昨年「日本レコード大賞」に輝いた「ライラック」だ。歌詞を口ずさむアーティストの姿が次々とビジョンに映り、大森の「Say!」という言葉を合図に出演者とオーディエンスの歌声だけが響いた。再び「行けるか、『CEREMONY』!」という大森の声。場内の空気がひとつになる中、大森は「あの頃の青を 覚えていようぜ 苦味が重なっても 光ってる」と歌う。そして藤澤によるしっとりとした鍵盤の音色から、大森の初主演映画「#真相をお話しします」の主題歌「天国」へ。この日がライブ初披露ということもあり、場内がざわめく。大森の驚異的なハイトーンボイスからは、切り裂かれんばかりの愛憎と絶望が伝わってきた。大森はステージに跪き、絶唱。あまりの切迫感に圧倒される。
緊張感あふれるムードから一転、続いては晴れやかな歌とメロディが貫く「ケセラセラ」へ。誰しもに優しく寄り添う「なるようになるのさ」というメッセージによって場内はえも言われぬ幸福感に包まれ、ミセスと『CEREMONY』に盛大な拍手が送られた。その後、ビジョンには記念すべき第1回『CEREMONY』のハイライトが流れる。ギターロックもK-POPもブラックミュージックもポップスもダンスポップもアイドルソングも……改めて、多様な音楽を鳴らす一流アーティストが一同に介したすごいイベントだったと感じる。あらゆる垣根が消失し、出演者やオーディエンスの「音楽を好き」という共通点が際立っていた。新たなアーティストに出会えた人も、新たな音楽の楽しみ方に出会えた人も多くいただろう。ハイライト映像のあとには、来年2026年6月10、11日の2日間にわたって第2回目の『CEREMONY』が行われることが告知された。この画期的なイベントは続いていく。来年も音楽を通じた多くの出会いを創出することだろう。
プロフィール
Mrs. GREEN APPLE(ミセスグリーンアップル)
2013年結成。2015年にEMI Recordsからミニアルバム「Variety」でメジャーデビュー。「青と夏」「僕のこと」「ロマンチシズム」といったヒット曲を生み出し、2019年12月から行われた初の全国アリーナツアー「エデンの園」では8万人動員の東名阪公演を即日ソールドアウトさせるも、メジャーデビュー5周年となる2020年7月8日に“フェーズ1完結”を宣言して活動休止期間に入る。約1年8カ月の活動休止期間を経て、2022年3月に“フェーズ2開幕”を告げて活動を再開した。2023年にリリースした楽曲「ケセラセラ」で「日本レコード大賞」を受賞。同年に「NHK紅白歌合戦」初出場を果たす。2024年4月に発表した楽曲「ライラック」はリリースから1年を経ても配信チャートで独走し、ストリーミングの累計再生回数は7億回を突破している。同年7月に日本のバンド史上最年少となるスタジアムツアー「ゼンジン未到とヴェルトラウム~銘銘編~」を開催。年末にはバンドとして史上初の「日本レコード大賞」連覇を果たした。2025年5月に音楽アワード「MUSIC AWARDS JAPAN 2025」で最優秀アーティスト賞を受賞。6月には神奈川・Kアリーナ横浜でエンタテインメントショー「Mrs. GREEN APPLE presents 『CEREMONY』」を開催した。7月から東京ディズニーリゾート®のスペシャルイベント「サマー・クールオフ at Tokyo Disney Resort」にて、日本人アーティスト初となるコラボレーションを実施。同月にデビュー10周年ベストアルバム「10」をリリースし、アニバーサリーライブ「MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE ~FJORD~」を神奈川・山下ふ頭特設会場で行った。10月から12月にかけて5大ドームツアー「Mrs. GREEN APPLE DOME TOUR 2025 “BABEL no TOH”」を開催する。国内の楽曲ストリーミング総再生が100億回を突破した史上初のアーティスト。
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