日本テレビほかで放送中のテレビアニメ「Turkey!」。本作はタツノコプロのアニメ制作レーベル・BAKKEN RECORDが手がけるオリジナルアニメで、長野県一刻館高校ボウリング部に所属する女子高校生5人が戦国時代にタイムスリップするという衝撃的な展開でアニメファンの注目を浴びている。
音楽ナタリーではアニメの放送を記念し、挿入歌 / エンディングテーマ担当アーティストと主要キャラクターの声優陣を迎えた特集を計5回にわたって展開している。第3弾には第6話のエンディングテーマ「sincerity flower」を手がけた結城アイラと、劇中キャラクター・一ノ瀬さゆりを演じる声優・岩田陽葵が登場。本作の中でも一際シリアスな内容となった第6話で描かれるドラマや、「sincerity flower」の制作エピソードについて話を聞いた。
取材・文 / ナカニシキュウ
感じるものって共通するんだなあと
結城アイラ 最初、この「Turkey!」という作品は女の子たちがボウリングで青春を謳歌するアニメなんだろうと思っていて、「みんながいろんな技を繰り出したりするのかな?」と勝手に想像していたんです。でもシナリオを読み進めていったら、「あれ、様子がおかしいぞ?」と。
岩田陽葵 あははは。第1話の終わりでいきなり戦国時代へタイムスリップしちゃいますからね。
結城 まさかそんな展開になるとは(笑)。そのまったく先が読めない感じは、さすがオリジナルアニメですねと思いました。
岩田 私はオーディションのときに作品についての詳細な資料をいただいていたので、正直あまりそこへの驚きはなかったんです。しかも、脚本の蛭田(直美)さんがキャラクター1人ひとりに対して「この子は普段こういう言動をするけど、本当はこういう子だと思うんです」みたいな、愛にあふれたメッセージをその資料に書かれていて。
結城 へえー!
岩田 そんな熱い資料をいただいたのが、私はこの作品が初めてで。製作委員会さんも何年も前からこの企画を準備されていて、皆さんの作品に対する強い愛情を当初からひしひしと感じていました。なので「なんだこの設定?」というよりは(笑)、こんなに作品愛のある方々が描き出す物語がどんなものになるのか見てみたい、という興味を引かれた感じでしたね。
結城 そのお話にはすごく納得できます。最初はやっぱりトリッキーな設定に「ええっ?」と驚かされるんですけど、いつの間にかものすごく夢中になって観てしまう作品なんですよね。キャラクター1人ひとりの内面がしっかり深掘りされていきますし。
岩田 そうですね。例えば私が演じさせていただいたさゆりで言えば、蛭田さんから「臆病で自分に自信がないけど、周りを包み込むような優しさを持っていて、誰よりも強くて勇気のある女の子です」とご説明いただいて。確かに引っ込み思案なところはあって、前に出るというよりは後ろからみんなを見守っているような存在なんですけど、だからこそ人の痛みに寄り添うことができる強さを持った女の子なのかなって思います。
結城 私もまったく同じように思いますね。さゆり自身は気が付いていないんだけど、奥のほうに芯の強さがあるのを感じます。私は今回、“さゆり回”にあたる第6話のエンディングテーマ「sincerity flower」を書かせていただきましたが、彼女のそういう部分をうまく楽曲に落とし込めたらいいなと思っていました。歌詞でいうと、「本当の優しさ 強さを 知ってゆくのかな」のところなどにつながっていくんですけど。
岩田 うんうんうん。
結城 なので今、岩田さんのお話を聞いて「感じるものって共通するんだなあ」と思いました。
岩田 ね! うれしいです。
劇場版かな?みたいな
結城 その第6話には本当に感動しました。あの短い時間で、さゆりがすごく成長する回ですよね。全12話の中でもとくにシリアスな回というか、題材が重めの内容で、考えさせられるところがいっぱいあって。この話数でエンディングテーマを担当できてよかったです。
岩田 そう言っていただけてうれしいです! 「Turkey!」って実は人間ドラマを描いたお話で、それぞれの担当回がけっこうしっかり深くて重いんですよね。「こんなところまで描くんだ?」っていう、キレイなだけでは終わらないところがあって。
結城 そうそう、そうなんですよね。
岩田 それだけに、やっぱり第6話は演じるのが難しかったです。まず脚本を読み解いて、自分の役に落とし込むのに苦労しました。それと、これは言っていいのかわからないんですけど……実は私、喉を壊してしまって数週間アフレコに参加できない期間があったんです。まさにこの6話を録る前後のタイミングだったんですけど。
結城 ええー! それは大変でしたね……。
岩田 なので私のパートだけを後日改めて録ることになったんですけど、そのときに傑里役の井上喜久子さんが「私も一緒に録らせてください」と自ら名乗り出てくださったんです。もちろん喜久子さんはご自身の収録を終えていたんですけど、2人でアフレコをさせていただけることになって。
結城 なんて素敵なお話……!
岩田 そのおかげですごく、すっごくパワーをいただけました。おそらく1人で考えて1人で演じるだけでは生まれなかったであろうものが残せたと思うので、喜久子さんには感謝してもしきれないですね。内容も内容だし、大先輩がそんなふうに一緒に演じてくださるし、本当に命を削るような思いでお芝居に臨むことができました。
結城 へええー……そのお話を聞いて、ひとつ答え合わせができた気がします。というのは、今回の曲はフィルムスコアリング(映像のタイミングに合わせて楽曲を制作すること)で作っていったので、事前に曲がかかる場面の映像をいただいていたんですね。なのでお二人のお芝居に合わせて曲作りを行ったんですけど、完成映像を観たときに「あれ? なんか演技がパワーアップしておる!」と感じたんですよ。そういうことだったんだ、って今すごく納得できました。
岩田 なんかもう、いろんな方々にご迷惑をおかけしてしまったんですけど。
結城 でも、そのおかげであれだけのシーンになった部分もあるかもしれませんよね。あのときのさゆりが震えながら言う「殺してもいいと思っちゃいました」というセリフとか、彼女の中に渦巻いていたであろうものすごい葛藤がお芝居から感じ取れて、とても印象深かったです。
岩田 あのシーンでさゆりは傑里と2人で人を殺してしまっているわけで、戦国時代ならではの“殺すか殺されるか”の世界が他人事ではなくなってしまった瞬間なんですよね。もうきれいごとでは済ませられない中で、善悪さえも整理しきれないまま行動を迫られて、傑里と同じ運命を背負ってしまう。なので本当に、私自身も感情を噛み砕けないまま演じていたような気がします。
結城 でも実際そうですよね。あんな場面に直面したら、現代人である我々はたぶん誰も自分の感情を噛み砕けないんじゃないかと思います。
岩田 だけどあのシーンって、映像としてはめちゃくちゃ美しくて……。
結城 そう! 作曲時点で私が観ていたのは未完成映像だったので、てっきり夕方のシーンなのかと思っていたんですけど……。
岩田 めっちゃ光!みたいな(笑)。私もアフレコ時点では夜とかなのかなと思ってたんですけど、強い光の中だからこそ、咲いている花に飛び散った血がとても鮮烈で。そこにアイラさんの聖母のような歌声が重なってくることで、もうなんか「劇場版かな?」みたいな壮大さを感じて鳥肌が立ちました。あのシーンは私もすごく好きです!
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