ハク。メジャーデビュー記念インタビュー、大阪発4人組のルーツや楽曲制作のこだわり、今後のビジョンは

ハク。が配信シングル「それしか言えない」でTOY'S FACTORYよりメジャーデビューを果たした。

ハク。は、あい(G, Vo)、なずな(G)、カノ(B, Cho)、まゆ(Dr)が高校生時代の2019年に結成した大阪発の4ピースバンド。10代を対象とした関西最大級の才能発掘プロジェクト「十代白書2021」でグランプリを獲得したあと、テレ東系「シナぷしゅ」2024年12月の“つきうた”に選出された「あいっ!」や、映画「6人ぼっち」の主題歌「南新町」でデビュー前からネクストブレイク候補として注目されてきた。MONO NO AWAREの楽曲「かむかもしかもにどもかも!」のカバー動画も話題を呼び、再生数はInstagramで1700万回を突破して海外のリスナーにも広がった。

そんな彼女たちの記念すべきメジャーデビュー曲「それしか言えない」は、エネルギッシュなギターサウンドと印象的なフレーズが耳に残る鮮烈なロックチューン。音楽ナタリーではデビュー曲の制作の裏側に加えて、それぞれの音楽的なルーツや未来へのビジョンについて4人に語ってもらった。

取材・文 / 柴那典撮影 / 山川哲矢

高校生の頃はこんな未来を想像していなかった

──8月9日に開催された「ハク。の日」のライブでメジャーデビューを発表しましたが、実感はありますか?(参照:ハク。とドミコの熱狂ツーマン終演 満員の大阪JANUSを揺らした5年目の「ハク。の日」

あい(G, Vo) メジャーデビューを発表する日が決まったときはまだ現実感がなかったんですけど、「それしか言えない」が完成したときに「これでメジャーデビューするんだ」と納得できる1曲になった感覚がありました。メジャーデビューは大きなステップですし、気持ちもすごく高ぶるものがあったんですが、私としてはちゃんと地に足をつけてありのままで行こうという気持ちでした。

なずな(G) 発表のときは少し気負っていたところがあったんですけど、ライブでファンの方に直接伝えられて、喜んでくれる姿を見て、安心しました。

まゆ(Dr) 最初は「本当にメジャーでやっていけるかな」という不安な気持ちもあったんですけど、発表してからはよりメラメラしてきたというか、「もっとやるぞ」という気持ちになりました。

カノ(B, Cho) 私もそうですね。きっとこの曲をリリースしたらさらに自信が付くんじゃないかなと思います。

ハク。

ハク。

──これまでの歩みについてもうかがえればと思うんですが、皆さんが出会ったのは高校生のときですよね。

あい そうですね。7年前です。

──バンドを組んだときに今のような未来を想像していましたか?

なずな いいえ、全然、全然。

カノ まったくしていなかったですね。ここまで続ける意識もなかったし、ハク。が始まってすぐの頃は「オリジナル曲をやろうね」くらいの感覚でした。それが変わったタイミングはもちろんありましたけど。

──スイッチが入ったタイミングはこの7年の間でいくつかあったと思うんですが、本腰を入れてバンドに取り組むようになったのはいつ頃でしたか?

カノ 最初は専門学校に入るときでした。そもそも高校生のときは大学に進むつもりだったし、ほかにもやりたいことがあったんですけど、ハク。を始めて1年半くらいの間に高校生限定の大会とか10代限定の大会で優勝して、「こうやって私たちの音楽が広がっていくんだ」と実感したんです。そこから本格的にバンドをやりたいと思うようになって、今のマネージャーの方と一緒にちょっとずつ進んでいきました。

サカナクション、落日飛車、フォーリミ、ミセス……それぞれのルーツ

──あいさんは高校時代から聴いていたサカナクションが音楽的なルーツだということですが、どういうところに影響を受けましたか?

あい 私が最初にいいなと思ったのは、やっぱり歌詞の部分です。難しい言葉をあまり使わず、身近な言葉で歌詞を書いているのが魅力的だと思って。歌詞を読むたびに考えさせられるし、そこも面白いと感じました。

あい(G, Vo)

あい(G, Vo)

──最初に出会った曲は覚えてますか?

あい 出会いは忘れてしまったんですけど、すごいと思ったのは「M」という曲です。めっちゃ考えながら歌詞を読んだ記憶があります。音も好きですけど、一番の魅力はなんですか?と聞かれたら、やっぱり言葉選びですね。

──ハク。の音楽性の土台になったアーティストはサカナクションのほかにもいろいろ挙がるんじゃないかと思うんですが、どうでしょう? あいさんはソングライティングの面でどんなアーティストに影響を受けたと言えますか?

あい ソングライティングとしては、高校生のときにずっとハマっていた中村佳穂さんとか、青葉市子さんにも影響を受けました。あとは3年前くらいにスネイル・メイルとかガール・イン・レッドをすごく聴いていた時期があって。ガール・イン・レッドはライブ映像を観たら曲からは想像がつかないような暴れ方をしていて、そのギャップがカッコいいと思ったし、スネイル・メイルはものすごい顔で歌っていて「こんな表情で歌ってみたい」と思った。でも、お手本にしてみたらどっちも自分には合わなかったですね。ほかにも好きな曲はいっぱいあるし、時期によって聴く音楽も変わるので、ジャンルにはとらわれてないと思います。そのときに聴いていた音楽の影響で曲ができたりもします。

──カノさんはいかがですか? 好きな音楽や、プレイヤーとして憧れの対象のミュージシャンは?

カノ ずっと聴いてきたのはORANGE RANGEとかLOSTAGEとかAge Factoryです。あとはアジア系の音楽が好きで、台湾のMidnight Ping PongやSunset Rollercoaster(落日飛車)はけっこう聴きますね。DSPSはメンバーと一緒にライブを観に行ったりしました。プレイヤーとしてはハマ・オカモトさんがずっと好きです。ラジオ番組やライブにお邪魔させてもらって、何度かお会いしたことがあるのですが、トークやプレイの仕方からまっすぐな心が伝わってくるなと感じました。そんなお人柄がベースマンとして憧れます。ベースもハマ・オカモトさんのシグネチャーモデルを使っています。

カノ(B, Cho)

カノ(B, Cho)

──まゆさんはいかがですか?

まゆ 高校の頃から04 Limited Sazabysが好きでずっと聴いています。ハク。を始めてからは、ドラムを叩きながらなかなかいい感じのノリを表現できないことに気付いて。そのときに聴いていたのはTwo Door Cinema Clubですね。今もずっと好きでよく聴きます。ドラムに関しては「誰のプレイをマネしたい」とかはあまりないんですけれど、最近、石若駿さんがドラムを叩いているところを生で観る機会があって。これはすごいなと。ああいうふうにドラムだけで魅せられる人になれたらいいなと思いました。

──なずなさんはどうでしょう?

なずな 私が最初にハマったバンドはMrs. GREEN APPLEです。あとは初めて観たWet Legのワンマンライブに衝撃を受けて。女性のギタリストの方がカッコよくて凛々しくて、私もこういう女性になりたいなと思いました。

ハク。の中でNGは

──ハク。がどんなふうに曲を作っているかも聞ければと思うんですが、あいさんはどこを取っかかりに曲を作ることが多いですか?

あい 最近はギターリフかドラムから作ることが多いです。テンポを決めて、ドラムを入れて、そこから「こういうリフがいいかも」と思いついてギターリフを入れることもありますし。

──詞先じゃなくて曲先が多いですか?

あい 最近、曲先になりました。以前は同時が多かったんですけど、タイアップが増えてきて、「こういうニュアンスの曲をお願いします」と言われたときに、詞が書けなくて。曲を作ってから歌詞を書くことが増えました。

──例えばバンドの音楽的なルールってあったりします? こういうことをやったらハク。っぽくなくなっちゃうな、という決まりごと。

カノ どうなんだろう? NGある?

あい いや、あんまりない気がする。例えばすごくパンキッシュなドラムでもギターがカバーすればハク。っぽくなると思うし。誰かがバランスを取るように指示してるかも。

カノ 「あいちゃんにこういう曲は作ってほしくないな」とかは特にないし、自分たちも「こういう曲はやりたくないな」というのは特にないです。

──メンバーの間でハク。らしさのポイントとして感覚的に共有しているものはありますか? あえて言語化するならば。

あい 肝はギターフレーズだと思います。ハク。の楽曲を色付けしてくれるし、攻めてくれる。あとはギターフレーズにしても、ベースにしても、ドラムにしても「それはちょっと気持ちよくない」とか「そこにそのフレーズを入れても面白いかな?」と言うことはあります。

まゆ サウンドにもこだわって曲を作ってるよね。

ハク。

ハク。

──初期に比べると、ここ最近の曲はサウンドがより豊かでアレンジも奥深いものになってきてますよね。そういう変化は感じていますか?

カノ 音のこだわりは増えてるかもしれないです。曲に関しては、あいちゃんが上げたデモをもとに、プロデューサーの河野圭さんと一緒に作っていく流れです。私たち個人やあいちゃんとかにはない引き出しが河野さんにはあって、ハク。の曲にさらに深みが出てきたと思います。サウンドに関しても、メンバーそれぞれが「これがカッコいいんじゃないか」という意見を持ってディスカッションできるようになってきた。言葉で「こういう音にしたい」と伝えられるようになったから、大きく変化したんじゃないかなと思います。

──持っている武器は変わらないけど、見えるものが徐々にクリアになっているような変化があったり?

あい そうですね。私は音に対して、海が見えるとか、海の中を潜ってるみたいとか、1つのフレーズから自分なりに想像するところがあって。そういう感想をみんなに伝えたときに「あ、見えた」と共通認識を持てるようになったのがめちゃくちゃうれしいです。音からイメージが湧くことは昔からあったけど、伝え方が難しかったり時間がかかったりしていたんです。でも、今はそのイメージをみんなで共有し合うことができています。