「キャプテン・アメイジング」はイギリス出身の劇作家アリスター・マクドウォールが2013年に発表した、スーパーヒーローに扮する男とその娘の6年間の記憶を描く一人芝居。今回、近藤・田代・松尾がトリプルキャストで出演する。
一人芝居への出演を決めた思いを問われると、近藤は「戯曲を読んで感じた正直な気持ちは、『これ、どうやるの?』でした。でも読んでいくと本当に面白くて、ハードルが相当高いだろうなという怖さと同時にワクワクを感じて、挑戦したいと思いました」と返答。田代は「一人芝居のオファーをいただける役者って、果たしてどのくらいいるんだろう?と考えたとき、『もしここで断ったら、僕は一生一人芝居をやる機会がないかもしれない』と思ったんです。また僕は今、幼い子供がいるので、自分とリンクする部分もたくさんあり、その経験が生かせるんじゃないかと期待して、未知の世界に足を踏み入れてみようと思いました」と話す。松尾は「一人芝居の怖さはもちろんありますが、それよりも僕は寂しがり屋なので、一人で芝居するっていうのがどうも……それに一人芝居だと“誰かのせい”にできないですから」と話して場を和ませつつ、「ただ田代くんも言っていた通り、やっぱりせっかく一人芝居のオファーをいただいたのだから挑戦してみたいと思いました」と率直に語った。3人の話をうなずきながら聞いていた田中は、「この戯曲では場面や時間たびたび変わるので、私も最初は、どういうことなんだろう?と感じる部分も多かったんです。でも、読み進めるうちに“一人芝居でやる理由”みたいなものがあるような気がして、『これは面白くなるんじゃないか』と感じました」と作品の印象を語った。
また今回、タイプの異なる3人の俳優が同じ役を演じるという点も、興味深いポイントの1つ。トリプルキャストは「初めて」という近藤・松尾に対し、「僕はけっこう多いです」と答えた田代は、「ただ過去の出演作をみると3人も全くバックボーンが違うから、『まさかここで交わるとは』という顔合わせですよね!」と言うと、近藤と松尾も笑顔でうなずいた。田中によると、稽古は3人一緒ではなくそれぞれ1人ずつ別進行で展開する予定だそうで、近藤は「かつて一度落語に挑戦させていただいたとき、言葉を身体に乗せるのがすごく難しかったんです。今回の稽古では、一人芝居の中でどう“会話”を成立させるかということにまずトライしたいですね」と意気込む。田代は「お稽古に毎回、麻衣子さんがびっくりするようなサプライズを何かしら持って行きたいと思っています……そんな余裕があるのかまだわかりませんが(笑)」、松尾は「僕はこれまで、何回読んでもわからないというような翻訳ものの舞台が多かったんですけど、実はそういう本って、ちょっと身体を動かすと『あっ!』という発見があったり、解釈が自由にできたりする。今回も稽古場でさまざまなトライをしていきたいと思っています」と話した。
演出家・田中麻衣子の印象について問われると、以前一緒に仕事した経験がある田代は「これまでの作品では、みんなを引っ張っていくというより、押し上げてくださるイメージが強くて。『そんなところも見ていてくれたの!?』と思うような小さな部分までちゃんと見ていてくださるから、自分が自由になれる感じがしたんです。今回も作品をご一緒できることが楽しみです」と田中に信頼を寄せる。近藤は「まだ少しお話ししただけですが、優しく受け止めていただけそうだと感じたので、安心してさらけ出せそうです。また田中さんだけでなく、一緒に作ってくれるスタッフさんにも甘えたり委ねたりしながら、みんなで作っていけたらいいなと思います」、松尾は「田中さんのお話を聞いていると、あまりカチッとしたものを好まれない方なのかなと。僕もそのタイプなので、稽古を通して一緒に発見していけそうだと、今から楽しみです」と印象を語った。
3人が演じる主人公の男は、相対する相手や居る場所によって、さまざまな一面を見せる。ある時はスーパーヒーローとして、またある時はホームセンターの従業員として、またまたある時は幼い娘を持つ父親として……。田中に「キャスト3人の、それぞれどんな一面が主人公に通じると思うか」と尋ねると、「松尾さんはビジュアル撮影のときの様子を拝見していても、『やんちゃだな』という印象。人は皆、昔は子供だったわけですが、松尾さんは今もやんちゃな感じがあって、そこが主人公の男に通じるのではないかなと。田代さんは、普段あまり出ないようなタイプのお芝居だと思うので、これまで見たことのない表情を絶対に引き出したいと思っていますが、中でも純粋“すぎる”感じが出たら面白いんじゃないかなと思っています。近藤さんは、信じられないぐらい実直そうなものを感じてまして、そこに主人公と通じるものを感じています」と語った。
田中の発言を受けてキャストにも、役のどんな一面にピンときているかを尋ねた。松尾は「男性っていつまで経ってもヒーローに憧れてるところがあると思うんですよね。だからこの主人公の彼がすごく特殊な人間かというと、そういうわけではないだろうなと。ただ、娘にとっては彼は、世界に1人しかいないスーパーヒーローだと思うので“スペシャルだけど普遍的な人”という印象を感じています」と返答。田代は「劇中で、キュンとしたシーンがあって……娘が倒れてベッドに横になっていると『お父さん、一緒に遊んであげられなくてごめんね』って娘が言うんですね。人って周囲の期待に応えようと背伸びをしがちだけれど、実はそんな期待は誰もしてなかったり、自分で自分に期待をかけてしまっているだけかもしれないということがよくあって、この主人公の男は知らず知らずのうちに、娘を“そういう(考え方をする)子”に育てていたのかもしれない。そう思うと、彼自身にとっても娘にとっても、スーパーヒーローって一体何なんだろう?と感じて。そのことをお客さんたちにも考えながら観ていただきたいし、僕自身、自問自答しながら演じるんじゃないかと思っています」と真摯に語った。近藤は「麻衣子さんに “実直そう”とおっしゃっていただいたのですが、屈折してるところでは僕、誰にも負けないと思っていまして(笑)。主人公自身もすごく屈折したところがあり、内向的なところ、口下手なところ、共感するところがたくさんあります。でも口下手ながらも、娘とのやり取りの中で、何とか自分の中から言葉を紡ぎ出していて、たどたどしくもハッとさせられるような真実めいたことを言葉にするところが、すごくいいなと思っています。そういうところを自分の中でどう進化させていくのか、すごく楽しみにしています」と語った。
なおこのたび、公演ビジュアルが公開。さらに公演の詳細も発表された。公演は7月26日から8月3日まで東京・シアタートラム、23・24日に愛知・春日井市東部市民センターにて行われ、東京公演は6月1日にチケットの一般前売りがスタートする。なお愛知公演は近藤と松尾のWキャストでの上演となる。
せたがやアートファーム 2025「キャプテン・アメイジング」
2025年7月26日(土)〜8月3日(日)
東京都 シアタートラム
2025年8月23日(土)・24日(日)
愛知県 春日井市東部市民センター
スタッフ
作:アリスター・マクドウォール
翻訳:永田景子
演出:
出演
※五十音順。東京公演はトリプルキャスト、愛知公演はWキャスト。
※東京公演はペア(一般1名+高校生以下1名)割引、トリプルキャストセット券、U-24・高校生以下割引あり。
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