新・帝国劇場の建築コンセプトは“THE VEIL”、2030年度のリニューアルオープン目指す

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新・帝国劇場の概要に関する記者発表会が、本日1月16日に東京・帝国劇場で行われ、東宝の池田篤郎常務執行役員 エンタテインメントユニット演劇本部⻑と、新・帝国劇場の設計を手がける建築家で、法政大学教授でもある小堀哲夫が出席した。

現・帝国劇場ロビーで行われた、新・帝国劇場の概要に関する記者発表会の様子。左から東宝の池田篤郎常務、小堀哲夫。

現・帝国劇場ロビーで行われた、新・帝国劇場の概要に関する記者発表会の様子。左から東宝の池田篤郎常務、小堀哲夫。

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初代・帝国劇場は1911年に開場。2代目となる現・帝国劇場は菊田一夫による陣頭指揮のもと、建築家の谷口吉郎が設計を手がけ、1966年にオープンした。その後は約59年間にわたってさまざまな演目が上演されてきたが、再開発のため2月をもって休館する。

新・帝国劇場の概要に関する記者発表会の様子。左から東宝の池田篤郎常務、小堀哲夫。中央は新・帝国劇場の模型。

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既報の通り、3代目となる新・帝国劇場の設計にあたり、東宝では2022年に、同社が実績、デザイン、将来性などを踏まえて指名した設計候補者だけが参加できる指名型プロポーザルコンペを実施。有識者を含めた選定委員会による審査の結果、小堀が選ばれた。池田常務は小堀が選ばれた理由について「どの提案も素晴らしかったが、小堀さんの設計をひと目見て『これが帝劇だ』と私は感じた」「帝国劇場の歴史やロケーションの長所を研究されていて素晴らしい」と厚い信頼を寄せつつ説明した。

新・帝国劇場の劇場エントランスイメージ。©Tetsuo Kobori Architects

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新・帝国劇場は、観客や俳優、スタッフ、丸の内の街の人々にとって“ここちよい帝劇”を目指すという。建築コンセプトは“THE VEIL(ベール)”。皇居に面した劇場が水や光、豊かな緑などの自然に包み込まれるイメージを通じ、豊かな観劇体験を作り上げる。コンセプトについて小堀は「人々の思いをベールで受け止め、包み込むような劇場になれば」と語った。

新・帝国劇場の劇場エントランスイメージ。©Tetsuo Kobori Architects

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新・帝国劇場は、地上4階、地下2階の6フロアからなる。新劇場のメインエントランスはこれまでと同様に丸の内5th Street側になるが、劇場の配置が90°回転することでエントランスの正面に客席が配置され、開演、終演時の混雑を緩和。また現・帝国劇場と同等数の客席数を設けながらも、より見やすいサイトライン(観客の視線)を備えた、ゆとりある座席となる。現在と同規模の舞台空間には、世界レベルの最先端の舞台技術を導入し、楽屋やスタッフスペースの快適性にも配慮。ロビー、ホワイエではカフェやバーの営業も予定されているほか、劇場の有楽町駅側の南東の一角には一般客も利用できるカフェ等が併設され、地域に親しまれる劇場を目指す。さらに新劇場では、屋外から客席まで段差なくアクセス可能。地下にはエレベーター、エスカレーターを設けた劇場ロビーが新設され、多様な観客が訪れやすい計画となっている。

新・帝国劇場の客席イメージ。©Tetsuo Kobori Architects

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現・帝国劇場の特徴であるせりや盆といった舞台機構は廃止されるが、新劇場ではフレキシブルなユニット機構を用いることで複雑な演出にも対応。現在は歌舞伎公演も可能な劇場として、花道に対応するために客席の傾斜がゆるやかになっているが、新劇場では傾斜をつけることでより舞台が観やすくなるという。これについて小堀は、3DモデルとVRを使用し、全座席からの見え方を検証しながら設計を進めていることを明かした。

会見では記者が、トイレの個数について質問する場面も。池田常務は「今よりもトイレを大幅に増やし、またロビーの空間を行列が占拠しないような状態を目指す」と答え、小堀も「シミュレーション技術を使い、トイレの個数や行列の人数を検証した。居心地の良いホワイエにしたいので、トイレの動線にも気を付けながら計画しています。今よりも格段に良くなるのでは」と続けた。なお池田常務により、ロビーのみならず楽屋側にも多目的トイレが備えられる予定であること、複数箇所に車いすユーザーのための客席を設置することを検討中であることが明かされた。

東宝の池田篤郎常務。

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新・帝国劇場の施工業者や、新劇場のオープニングラインナップは未定。リニューアルオープンは2030年度を目標としているとしつつ、池田常務は「建築情勢や働き方改革の影響でコントロールできない部分もある。また動きがあればお知らせしたい」とコメントする。また再整備のため閉館している東京・国立劇場の話題も。池田常務は「国立劇場は伝統芸能を担い、我々はエンタテインメントをお届けしている。この両軸が回転しなければ、日本の文化を受け継いでいくことは難しい。国立劇場が、1日も早く再開場できることを心から祈っています」と語った。

小堀哲夫

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新・帝国劇場の建築に向け、池田常務は「菊田一夫先生のような偉大な先人にはなかなか追いつけないかもしれませんが、新・帝国劇場に同じ魂を吹き込んでいきたい」と改めて思いを語る。小堀も「今が不安定な時代であることをポジティブに捉え、『だからこそこの局面を乗り越えよう』という感覚で打ち合わせを重ねている。素晴らしい劇場ができると信じています」と笑顔を見せた。

現・帝国劇場では、2月7日までミュージカル「レ・ミゼラブル」を上演中。その後14日から28日までスペシャルコンサート「CONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』」が、現・帝国劇場で最後の演目として開催される。

「新帝国劇場」紹介ムービー

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アムール・タカラヅカ @AMOUR_TKRZKA

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