Aぇ! group正門良規ら、舞台上で“登山”を実現！「タッチング・ザ・ヴォイド」開幕

正門良規（Aぇ! group）が主演する「パルコ・プロデュース2024『Touching the Void タッチング・ザ・ヴォイド～虚空に触れて～』」が、昨日10月8日に東京・PARCO劇場で開幕。これに先駆け同日昼、フォトコールと開幕前会見が行われた。

「Touching the Void」（邦題「死のクレバス」）は、イギリスの登山家ジョー・シンプソンが1988年に執筆した回顧録。同書には、ペルーのアンデス山脈の難関である標高約6400mのシウラグランデ山への登頂時に体験した、壮絶な遭難事故の様子がつづられている。イギリスでベストセラーとなった同著は、2003年に映画化もされた。舞台版は、デイヴィッド・グレッグの脚色、舞台「ウォー・ホース ～戦火の馬」の共同演出で知られるトム・モリスの演出により、2018年に初演された。ジョーとサイモン・イェーツのペアは、前人未踏のルートでシウラグランデ山への登頂を成功させた。ところが下山途中、ジョーは氷の崖から落ちて宙吊りになってしまい……。

日本初演となる今回は、オリジナル版を手がけたモリスが演出を担当。主人公のジョー役を正門が演じ、ジョーの姉セーラ役を古川琴音、ジョーと共にシウラグランデ山に挑んだサイモン役を田中亨、サイモンのテント番として2人の帰りを待つリチャード役を浅利陽介が務める。

フォトコールではまず、作品前半のパブのシーンがかいつまんで披露された。舞台上にはテーブルと椅子、ジュークボックスなどが置かれており、両袖の壁ではそれぞれ男性用 / 女性用トイレのドアが点灯している。また両袖の壁には床から天井に向かって複数の椅子が貼り付けられている。このシーンでは、「ジョー（正門）が死んだ」と聞かされたセーラ（古川）がサイモン（田中）やリチャード（浅利）に「なぜ山に登るのか」を尋ねた。登山の魅力を説明しようとするサイモンに言われるがまま、セーラが自身の足や手を椅子やテーブルに乗せていくと、突然サイモンがテーブルの片側をグッと持ち上げる。その途端、音と照明が吹雪を想起させるものに変わり、テーブルの斜面にしがみついたセーラはまるで岩壁に登っているかのような姿になっていた。

フォトコール後半では、雪山のシーンが登場。舞台後方の暗闇に畳まれていたセットが、舞台空間をめいっぱい使うように立ち上がり、雪山をイメージした大きな骨組みとなって姿を表した。骨組みの1本1本には、雪が積もっているかのように白い紙がまとわりついている。正門と田中は身体能力を生かして、骨組みの内や外を縦横無尽に移動。ジョーとサイモンが一晩を過ごすために雪の斜面に穴を掘るシーンでは、2人は全身を使って骨組みから白い紙を取り払い、力を合わせて重い雪をかき出す様子を表現した。

フォトコール後の会見には正門、古川、田中、浅利、モリスが登壇した。モリスは「初の日本版を作り上げることができ、幸せな時間を過ごしています。キャストたちのスキルや素晴らしさには感銘を受けました。稽古場を訪れた人々からは『え、こんなの舞台でできないでしょ！』と言われましたが、この4人はやってのけてしまう」と信頼を寄せ、「スリリングな作品ですが、笑える瞬間もあります。笑いたくなったら思い切り笑ってください」と観客へメッセージを送る。

正門は「ついに初日が来たか、とワクワクドキドキしております。セットや道具を使うなど、キャスト4人にしてはやることが非常に多く、その分感動やエネルギーが詰まった作品。お客様にはすごく期待をして足を運んでいただけたら」と自信をのぞかせる。古川は「今すぐ舞台を降りて、観客として観てみたいシーンがたくさん。そう思える作品に出演できていることが感無量です」と喜びを噛み締める。田中は「段取りが鬼のように多く、1つひとつの動きに危険が伴うので、僕らとしては慎重に、丁寧にやっていけたら」と話し、「『舞台でこんなことやっていいの？』が盛りだくさんなので、お客様の反応がすごく楽しみ」と期待を込めた。

カンパニーのメンバーはシウラグランデ山のセットを、アンデス山脈にちなんで”アンディ”という愛称で呼ぶ。浅利は「近年稀に見るくらい大変な仕事に携わったなという実感があります。（正門と田中の）2人がアンディに登りますが、僕たちもアンディのリアルなセットのおかげですごく良いお芝居ができている。後半では、実際のシウラグランデ山がどのような姿なのかが明らかになるのでお楽しみに」と呼びかけた。

正門は、登山経験について「番組ロケで六甲山を3人4脚で登ったことはありますが、アルパインスタイルでアイスピッケルを使ってといった本格的な登山に出会うのは初めてだったので、勉強勉強の日々でした。ゲネプロをご覧になった（山岳）監修の方に『良かったよ！』と興奮したテンションで褒めていただき、自信が付きました」と胸を張る。

「本作に向けてどんな身体作りをしてきたか？」と記者から問われた正門は、稽古の一環で全員でピラティスやHIITというトレーニングに取り組んでいたこと、個人的にジムに通っていることを明かした。浅利は、そんな正門に対し「肩周りや背中が日に日にデカくなっていってない？ 亨も腕が太くなっている」と述べ、モリスも「ヨシとトオルにとってはオリンピックのような、とても身体を使う公演なんです。2人とも日に日に動く体になっていて、ハーフタイム（休憩時間）では汗だく（笑）」とエピソードを明かした。

上演時間は休憩含む約2時間40分。東京では10月11日までのプレビュー公演ののち、12日から11月4日まで本公演が行われ、その後は10日から17日まで京都・京都劇場でも上演される。