「百物語」ファイナルに向け白石加代子が感慨「大切なものを教えていただいた」

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岩波ホール発 白石加代子『百物語』シリーズ アンコール公演第5弾」に向けて本日9月20日に大阪府内にて、白石加代子の取材会が行われた。

白石加代子

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「百物語」シリーズは白石がライフワークとして行っている公演。このシリーズでは、明治から現代の日本の作家の小説を中心に、“恐怖”というキーワードで選ばれた作品を白石が朗読する。2014年、白石は泉鏡花「天守物語」をもって「百物語」の全99話を語り終えたが、現在はそのアンコール公演が行われており、アンコール公演の第5弾となる今回が、シリーズ最後の公演となる。さらに11月21日に大阪・東大阪市文化創造館で行われる公演が、大千秋楽となる。

白石加代子

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本日の会見には、白石と本シリーズのプロデューサー・笹部博司が出席。ファイナルを迎える心境を問われると、白石と笹部は一瞬「ふふふ」と顔を見合わせてから、笹部が「僕がそろそろ辞めようかと言ったんです」と口火を切った。笹部は「やっぱり1人で全部をやるのは本当に大変だし、舞台を終えたあとの白石さんの疲れ方を見て、その思いが強まって。ただ、すでに『百物語』とは別に、今年上演した「『大誘拐』~四人で大スペクタクル~」など、白石さんを軸にしたいろいろな企画が始まっている。これからは“白石さんと誰か”という形の企画をやっていったほうが良いんじゃないかと思ったんです」と話した。

笹部博司(左)と白石加代子。

笹部博司(左)と白石加代子。[拡大]

笹部の話をうなずきながら聞いていた白石は「1992年のスタートから22年間にわたって『百物語』シリーズをやらせていただき、その後はアンコール公演という形で続いてきました。笹部さんがおっしゃるように、まず年齢がだいぶはるばるやってきたな……という思いもありますし、99本ある演目の中には1時間越えの作品、動きが多い作品もあって、なかなか再演が厳しい部分もあって……。そのようなこともあり、シリーズとしては今回が一区切り、ということになったのだと思います。なので『百物語』から逃げるわけじゃなくて、また新たな道を見つけよう、という感じです」と心境を語った。

過去公演より、高橋克彦「遠い記憶」を読む白石加代子。

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今回上演されるのは高橋克彦作「遠い記憶」と阿刀田高「干魚と漏電」の2作。両作に対する思い出について白石は「二つとも衣裳が印象に残っていますね」と回答。「『干魚と漏電』はちょっと不思議なお婆さんのお話なんです。文章の中に“姉さんかぶりをちょいっと直して”というような一節があるんですけど、演出の鴨下信一さんは、私にローラアシュレイの服を着せたんですね。この衣裳を着て語ると、“ちょっと外れちゃったお婆さん”という印象がよくわかる(笑)。一方、『遠い記憶』では大島紬を着ているんですけど、この作品は男の語り口で自分のお母さんの話をするっていうもの。オシャレでいてちょっと中性的な印象を与える泥大島を着て語るのが、私もですけど、鴨下さんご自身も楽しまれたんじゃないかと思います。鴨下さんはそういうふうに毎回、『へー!』と思うような衣裳を着せてくださいました」と語った。

過去公演より、阿刀田高「干魚と漏電」を読む白石加代子。

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また作品の内容について白石は「『遠い記憶』は、作家の高橋さんが盛岡出身なので、冒頭ではまず盛岡の土地の観光を語り出すんですね。わんこそばの話、五百羅漢や青龍水の話など、まずは読者を盛岡の中を連れ回すような感じで展開する。でも本作の怖い部分は、自分の母親にまつわるお話で……高橋さんはよくお母さんのことをお書きになるんだけど、『遠い記憶』では予期せぬ感じでお母さんの話が出てきてゾッとします。『干魚と漏電』も、散々笑わせておいて最後の1行で(恐怖に)いざなうんですよ……ね?」と、隣の笹部にチラッと目線を向けると、笹部も「とても細かく計算されている作品。改めて、小説家ってものすごい緻密に作品を作っているんだなと思います」とうなずいた。

さらに白石は大阪でのエピソードとして「『百物語』は当初、怖いお話をやるということで出発したんですが、大阪でやったとき、私が舞台に出ていくとなぜか忍び笑いのようなものが起きて、皆さん面白がるんです(笑)。怖いお話をしに行ってるのに最初に笑われるなんて……それは大阪でだけの経験(笑)。大阪のお客様と過ごしたあの時期は大切な思い出です」と明かした。

白石加代子

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最後に記者が、「百物語」シリーズは自身にとってどんな演目かと尋ねると「やっぱりたくさんのことを教えていただいた作品です」と白石。「『百物語』をやらせていただくことで、人間として女として役者としても、たくさんのことを学ばせていただいたという実感があります。私が元いた劇団は様式的な舞台だったので、あまり『百物語』で使えるような日常的な動きをしたことがなかった。だからシリーズが始まった当初は、作品の中に描かれているような日常的な動きを上手に表現できる自信はなかったんです。でも鴨下さんがいろいろな助言をしてくださって、笹部さんはじめ皆さんのおかげで、毎回1つの作品を作り上げてきました。女優として大切なもののほとんどを『百物語』で教えていただいたという思いがあります」と、まあるい笑顔を見せた。

公演は10月12・13日の東京・シアター1010公演を皮切りに、20日に東京・亀戸文化センター カメリアホール、26日に東京・練馬文化センター 小ホール、11月2日に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール、4日に茨城・水戸芸術館 ACM劇場、11日に北海道・共済ホール、11月12日に北海道・江別市文化ホール(えぽあホール)、16日に神奈川・相模女子大学グリーンホール 多目的ホール、18日に新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場、21日に大阪・東大阪市文化創造館 大ホールで行われる。

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岩波ホール発 白石加代子「百物語」シリーズ アンコール公演第5弾

2024年10月12日(土)・13日(日)
東京都 シアター1010

2024年10月20日(日)
東京都 亀戸文化センター・カメリアホール

2024年10月26日(土)
東京都 練馬文化センター 小ホール

2024年11月2日(土)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

2024年11月4日(月・振休)
茨城県 水戸芸術館 ACM劇場

2024年11月11日(月)
北海道 共済ホール

2024年11月12日(火)
北海道 江別市文化ホール(えぽあホール)

2024年11月16日(土)
神奈川県 相模女子大学グリーンホール 多目的ホール

2024年11月18日(月)
新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場

2024年11月21日(木)
大阪府 東大阪市文化創造館 大ホール

スタッフ

原作:阿刀田高「遠い記憶」 / 高橋克彦「遠い記憶」
構成・演出:鴨下信一

出演

白石加代子

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