「継ぐのはモーリス・ベジャールのフィロソフィ」BBL芸術監督ジュリアン・ファヴローが思い語る

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9・10月に「モーリス・ベジャール・バレエ団2024年日本公演」を控えるモーリス・ベジャール・バレエ団の芸術監督ジュリアン・ファヴローによるオンライン合同取材が、去る8月27日に行われた。

ジュリアン・ファヴロー(c)Jennifer Santschy

ジュリアン・ファヴロー(c)Jennifer Santschy

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ファヴローは17歳でモーリス・ベジャール・バレエ団(以下BBL)に入団し、在籍約30年となるバレエダンサー。今年2月に芸術監督ジル・ロマンが解任され、次期芸術監督としてファヴローに白羽の矢が立った。6月にファヴローの芸術監督就任が正式に決定し、9月からの新シーズンより、ファヴロー芸術監督の新体制でBBLが動き出すこととなる。なお、ファヴローは芸術監督業に専念するため、12月末でダンサーとしての活動を終了。9月21日より東京・兵庫・北海道で行われる、3年ぶり19回目の来日公演「モーリス・ベジャール・バレエ団2024年日本公演」が、メインダンサーとしての彼の踊りを日本で観られる最後の機会となる。

ファヴローはロマンの突然の解雇を振り返り、「シーズン中の出来事で、ダンサーたちはとても戸惑っていました。BBLが存続できるのか、自分たちの仕事がなくなってしまうのではないか、外部から誰かがやって来るのか……とパニック状態の彼らを見ながら、モーリス・ベジャール時代、ジル・ロマン時代を生きてきた私が、もう一度カンパニーを前進させ、ベジャール作品を上演していく役目を担うべきだと実感したんです。それが一番柔らかに物事が着地する、正当な判断でした」と、芸術監督を引き受けた経緯を語る。

さらに芸術監督業務が多岐にわたり、エネルギーと時間が必要なこと、そして2年前のアキレス腱切断を機に、良い形でダンサーとしてのキャリアを終わらせたいと考えていたことを明かし、「ダンサーを辞める決断は難しくなかったのかと聞かれますが、コンディションを整えることが厳しくなってきていましたし、三十代でキャリアを終えるダンサーもいる中、私は47歳まで踊り続けてこられました。今後はダンサーとして大きい役ではないものの、演技を中心とした役なら出演することもあるかなと考えています」と話した。

「バレエ・フォー・ライフ」より。(c)Kiyonori Hasegawa

「バレエ・フォー・ライフ」より。(c)Kiyonori Hasegawa[拡大]

今回の日本公演ではAプロに、十代の頃から踊ってきた「バレエ・フォー・ライフ」がある。ファヴローは、「モーリスから『君はどんなロックスターになるのか』と言われたことを思い出します。この作品では、放出されるスターオーラ、フレディ役としての身振り、ヴェルサーチの衣裳からインスピレーションを得て、デヴィッド・ボウイ、ミック・ジャガーといったロックスターのイメージを混ぜ合わせて踊ってきました。最初の頃は身体的に突き抜けた表現ができなかった部分もありましたが、モーリスやジルの助言によって、“感情のパレット”のような取り合わせを得ることができた。キャリアを振り返ってみても、日本やフランス、南米でたくさん踊ってきた重要な役。年齢を重ねてきたことも経験として生かせたらと思っています」と語る。

「ボレロ」より。(c)BBL- Lauren Pasche

「ボレロ」より。(c)BBL- Lauren Pasche[拡大]

また、9月27日公演ではBプロ「ボレロ」でメロディ役を務める。「『ボレロ』はいつ踊っても“御せない”、人間が作品よりも強く在ることが難しい作品です。毎日200回踊ったとしても、毎回違う感覚が現れる、まるで魔法のよう(笑)。日本で『ボレロ』を踊るのは今回が最後になるでしょう。17歳でダンサーのキャリアをスタートし、早い段階から日本のお客様の前で踊らせていただきました。約30年の円環をここで、自分で閉じることができるのは幸福です」と微笑んだ。

最後に、芸術監督としてのビジョンを問われると、「私のミッションはモーリス・ベジャールのフィロソフィ(思想)を継ぎ、BBLを継続していくこと。このカンパニーには素晴らしいダンサーがそろっていて、彼らはモーリスの作品も、ほかの振付家の作品も踊ることができます。モーリスの言葉を借りれば、困難、変化の先には革命ではなく進歩がある。我々は何としてもショーを続けなければいけません。SHOW MUST GO ON!」と力強く語った。

「モーリス・ベジャール・バレエ団 2024年日本公演」Aプロは9月21日から23日までの東京・東京文化会館公演、10月2日の兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール公演、6日の北海道・札幌文化芸術劇場hitaru公演で上演。Bプロは9月27日から29日までの東京文化会館公演で披露される。

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モーリス・ベジャール・バレエ団2024年日本公演

2024年9月21日(土)〜23日(月・祝)、27日(金)〜29日(日)
東京都 東京文化会館

2024年10月2日(水)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール

2024年10月6日(日)
北海道 札幌文化芸術劇場 hitaru

スタッフ

Aプロ「バレエ・フォー・ライフ」

振付:モーリス・ベジャール
音楽:クイーン / W.A.モーツァルト

Bプロ「だから踊ろう…!」

振付:ジル・ロマン
音楽:ジョン・ゾーン
シティパーカッション / ボブ・ディラン

Bプロ「2人のためのアダージオ」

振付:モーリス・ベジャール
音楽:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン

Bプロ「コンセルト・アン・レ」

振付:モーリス・ベジャール
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

Bプロ「ボレロ」

振付:モーリス・ベジャール
音楽:モーリス・ラヴェル

出演

芸術監督:ジュリアン・ファヴロー

Aプロ

エリザベット・ロス / キャサリーン・ティエルヘルム / 大貫真幹 / ジャスミン・カマロタ / クウィンテン・ギリアムズ / ドノヴァーヌ・ヴィクトワール / 大橋真理 / オアナ・コジョカル / ヴィト・パンシーニ / アンジェロ・ペルフィド / ヴァレリア・フランク / フェデリコ・マテティッチュ / キアラ・ポスカ / ドリアン・ブラウン / ソレーヌ・ビュレル / ビアンカ・ストイケチウ / フロリアーヌ・ビジョン / アントワーヌ・ル・モアル / クララ・ボワテ / 岸本秀雄 / イ・ミンギョン / シプリアン・ブヴィエ / アレッサンドロ・カヴァッロ / ダニエル・アグアド・ラムサイ / オスカー・シャコン / リアム・モリス / 武岡昂之介 / エドアルド・ボリアーニ / ユール・ドイチュマン / アンドレア・ルツィ / カテリナ・ケビキナ / オスカー・フレイム / ジョルト・コヴァッチ / イエロニマス・クリヴィツカス / ゴハール・ムコルトチヤン / エマ・フシェ / カロリナ・フレニャン

Bプロ

エリザベット・ロス / キャサリーン・ティエルヘルム / 大貫真幹 / ジャスミン・カマロタ / クウィンテン・ギリアムズ / ドノヴァーヌ・ヴィクトワール / 大橋真理 / オアナ・コジョカル / ヴィト・パンシーニ / アンジェロ・ペルフィド / ヴァレリア・フランク / フェデリコ・マテティッチュ / キアラ・ポスカ / ドリアン・ブラウン / ソレーヌ・ビュレル / ビアンカ・ストイケチウ / フロリアーヌ・ビジョン / アントワーヌ・ル・モアル / クララ・ボワテ / 岸本秀雄 / イ・ミンギョン / シプリアン・ブヴィエ / アレッサンドロ・カヴァッロ / ダニエル・アグアド・ラムサイ / オスカー・シャコン / リアム・モリス / 武岡昂之介 / エドアルド・ボリアーニ / ユール・ドイチュマン / アンドレア・ルツィ / カテリナ・ケビキナ / オスカー・フレイム / ジョルト・コヴァッチ / イエロニマス・クリヴィツカス / ゴハール・ムコルトチヤン / エマ・フシェ / カロリナ・フレニャン

公演・舞台情報
モーリス・ベジャール・バレエ団2024年日本公演

モーリス・ベジャール・バレエ団2024年日本公演

2024年9月21日(土)~2024年10月6日(日)

出演:ジュリアン・ファヴロー、エリザベット・ロス、キャサリーン・ティエルヘルム、大貫真幹、ジャスミン・カマロタ、クウィンテン・ギリアムズ、ドノヴァーヌ・ヴィクトワール、大橋真理、オアナ・コジョカル、ヴィト・パンシーニ、アンジェロ・ペルフィド、ヴァレリア・フランク、フェデリコ・マテティッチュ、キアラ・ポスカ、ドリアン・ブラウン、ソレーヌ・ビュレル、ビアンカ・ストイケチウ、フロリアーヌ・ビジョン、アントワーヌ・ル・モアル、クララ・ボワテ、岸本秀雄、イ・ミンギョン、シプリアン・ブヴィエ、アレッサンドロ・カヴァッロ、ダニエル・アグアド・ラムサイ、オスカー・シャコン、リアム・モリス、武岡昂之介、エドアルド・ボリアーニ、ユール・ドイチュマン、アンドレア・ルツィ、カテリナ・ケビキナ、オスカー・フレイム、ジョルト・コヴァッチ、イエロニマス・クリヴィツカス、ゴハール・ムコルトチヤン、エマ・フシェ、カロリナ・フレニャン、エリザベット・ロス、キャサリーン・ティエルヘルム、大貫真幹、ジャスミン・カマロタ、クウィンテン・ギリアムズ、ドノヴァーヌ・ヴィクトワール、大橋真理、オアナ・コジョカル、ヴィト・パンシーニ、アンジェロ・ペルフィド、ヴァレリア・フランク、フェデリコ・マテティッチュ、キアラ・ポスカ、ドリアン・ブラウン、ソレーヌ・ビュレル、ビアンカ・ストイケチウ、フロリアーヌ・ビジョン、アントワーヌ・ル・モアル、クララ・ボワテ、岸本秀雄、イ・ミンギョン、シプリアン・ブヴィエ、アレッサンドロ・カヴァッロ、ダニエル・アグアド・ラムサイ、オスカー・シャコン、リアム・モリス、武岡昂之介、エドアルド・ボリアーニ、ユール・ドイチュマン、アンドレア・ルツィ、カテリナ・ケビキナ、オスカー・フレイム、ジョルト・コヴァッチ、イエロニマス・クリヴィツカス、ゴハール・ムコルトチヤン、エマ・フシェ、カロリナ・フレニャン

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“[Informe de la rueda de prensa] “Heredaremos la filosofía de Maurice Béjart”, reflexiona el director artístico de BBL, Julien Favreau” https://t.co/jTDsJ4p19L

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