十一代目豊竹若太夫襲名に呂太夫「77歳をもって継がせていただけるのは光栄」

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豊竹呂太夫が4月に大阪・国立文楽劇場で上演される「令和6年4月文楽公演」、5月に東京・シアター1010で上演される「令和6年5月文楽公演」において、豊竹若太夫を襲名する。それに向けて昨日3月8日に東京都内で会見が行われた。

豊竹呂太夫

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豊竹呂太夫

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呂太夫は「豊竹若太夫は、竹本義太夫の次に大きな名前で、私の祖父が十代目でした。このたび57年ぶりに私が十一代目として継がせていただくことになりました」とあいさつ。続けて「文楽は世襲制度ではなく、実力主義でありますから、私の祖父が若大夫だったからと言って自然に継ぐことができたわけではありません。2年前に切語り(重要な場を語る太夫に与えられる最高の資格)になり、やっと若太夫を継げるという自信のようなものが芽生えまして(笑)。現在76歳ですが4月16日の誕生日で77歳になります。70歳のときに呂太夫になり、77歳をもって若太夫を継がせていただけるのは光栄です。しかし襲名がゴールではなく、若太夫を襲名してからもお客様と共に、みんなで感動し合えるような義太夫を作り出していきたいと思っております。私は二十歳で入門しましたが、2・3年前からまた深く(文楽を)理解できるようになってきました。まだまだこれから成長していきたいなと思っておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします」と一息に語り、笑顔を見せた。

豊竹呂太夫

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記者から、襲名についてはいつ頃から意識していたかと問われると、呂太夫は「私はもともと、大江健三郎や倉橋由美子などシュールレアリスムのものが好きで、小説家を目指していました。義太夫は祖父がやっていたので観てはいましたが、当時は“義太夫は流行らん、訳がわからんものだ”と思っていたんです(笑)。でも二十歳で入門してからは、祖父の若太夫ということはやっぱり朧げながらに目標にはなっていましたね。その後、竹本住太夫兄さんが段取りしてくださって、70歳のときに呂太夫を襲名させていただくことになり、その時の口上で(豊竹)咲太夫兄さんが『五十音でロ(呂)の次はワ(若)ですから』と言ってくださったことがありがたく、その時から『よっしゃ、若太夫継いだる!』と思いましたね(笑)」と茶目っ気を交えて語り、会見場を笑いで包んだ。

声音の違いを実演してみせる豊竹呂太夫。

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また「具体的に“2・3年前にわかり始めたこと”とは?」と問われると、呂太夫は「かしらごと、役柄ごとに声の音程がいろいろあって、入門してから50年くらい経ち、やっとその整理ができてきました」と返答。そしてその場で、同じセリフを「娘だったらこう、おばあちゃん、良い侍、悪い侍、武家のおじいちゃん、町のおじいちゃんだったらこう……」と多彩な声音で演じ分けてみせた。

なお襲名披露狂言に「和田合戦女舞鶴 市若初陣の段」を選んだことについて、「初代の若太夫がこの演目を有名にし、私の祖父も昭和25年に若太夫を襲名した際、『市若初陣』を襲名狂言に選びました。ですので私も披露狂言の演目とするならこれだと決めていました」と思いを語る。2009年に早稲田大学でも披露したことがあり、昨年末には素浄瑠璃でも披露した演目だが「祖父のテープを聞いていて、10数年前にわかっていなかったことが、今になってわかるようになったり、祖父自身も襲名のときとその後ではまた違っていたり……そういうことがわかるようになってきました」と思いを込める。

声音の違いを実演してみせる豊竹呂太夫。

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会見後半で、記者から改めて、なぜ小説家の道ではなく、文楽の道を選んだのかと問われると、呂太夫は笑みを浮かべながら、「文楽は、実は1年くらいでおさらばするつもりだったんです(笑)。でも入門前に改めて客席で観ることになって。三味線は聞き慣れない音だし、人形1つを大の大人3人で遣っているし、人形の隣の顔が邪魔だなあ……なんて最初は思っていたんですけれど(笑)、だんだんと『美術の色使いがちょっといいな』と思うようになって、そうしたら徐々に舞台全体が抽象画に思えたんですね。これこそシュールレアリスムだ、アバンギャルドだな! こんなすごい芸能ないやんか!と(笑)」と文楽から受けた衝撃を熱っぽく語る。さらに海外で公演したときの外国人の観客の熱狂的な反応を語りながら「日本人として古典芸能はすごい武器になると思います。そういう点で、届け方次第で、文楽を魅力的に感じてくれる人はまだまだたくさんいると思います」と言葉に力を込めた。

豊竹座の紋を説明する豊竹呂太夫。

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最後に呂太夫は着物の豊竹座の紋を見せながら「これは豊竹若太夫だけに許される紋です。これを着けるのは身に余る光栄で、着ているだけでドキドキします(笑)。初代の若太夫が考えた、江戸時代の紋なんですけど斬新ですよね」とうれしそう語った。

「令和6年4月文楽公演」は4月6日から29日まで国立文楽劇場、「令和6年5月文楽公演」は5月9日から27日までシアター1010にて行われ、「令和6年5月文楽公演」のチケットは4月14日10:00に販売をスタートする。また襲名披露に向けて、5月6日に東京・西新井大師にて公演の成功祈願とお練りが行われるほか、西新井大師書院でミニイベントとして「二人三番叟」が上演される。

さらに5月8日はシアター1010にて「襲名披露公演前夜祭~“サスペンス浄瑠璃”『市若初陣の段』の魅力に迫る!!~」を開催。作品の魅力を、水谷彰宏アナウンサーの司会で、若太夫と山村紅葉が語る。こちらのイベントは4月10日に国立劇場公式サイトにて受付開始予定。

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「令和6年4月文楽公演」第1部

2024年4月6日(土)~29日(月・祝) ※公演終了
大阪府 国立文楽劇場

スタッフ

「絵本太功記 二条城配膳の段」

補曲:鶴澤清治

「令和6年4月文楽公演」第2部

2024年4月6日(土)~29日(月・祝) ※公演終了
大阪府 国立文楽劇場

「令和6年4月文楽公演」第3部

2024年4月6日(土)~29日(月・祝) ※公演終了
大阪府 国立文楽劇場

「令和6年5月文楽公演」Aプロ

2024年5月9日(木)〜27日(月) ※公演終了
東京都 シアター1010

「令和6年5月文楽公演」Bプロ

2024年5月9日(木)〜27日(月) ※公演終了
東京都 シアター1010

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さいごうポン太 @saigoh_ponta

@rodayu6th 拝読致しました!無知で不勉強な私が申し上げるのも何ですが、くれぐれもご自愛頂いて頑張ってください。応援しております!https://t.co/wqwH8BDh59

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