SPACの演劇版「ばらの騎士」開幕、宮城聰「音楽史上、かなり重要な闘いではないでしょうか」

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SPAC 秋→春のシーズン 2023-2024 #3「ばらの騎士」が昨日1月7日に静岡・静岡芸術劇場で開幕した。

SPAC 秋→春のシーズン 2023-2024 #3「ばらの騎士」より。(撮影:三浦興一)

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SPAC 秋→春のシーズン 2023-2024 #3「ばらの騎士」より。(撮影:三浦興一)

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本作では、リヒャルト・シュトラウス作曲のオペラとして知られるホーフマンスタール作「ばらの騎士」を、宮城聰寺内亜矢子の共同演出により、明治時代の日本を舞台にした演劇作品として立ち上げる。劇中では、俳優たちの生演奏に乗せ、貴族たちのラブコメディが展開。音楽を指揮者・作曲家の根本卓也が担当する。

SPAC 秋→春のシーズン 2023-2024 #3「ばらの騎士」より。(撮影:三浦興一)

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開幕に際して宮城と寺内のコメントが到着。宮城は、音楽は普通“流れる”ものであるにも関わらず、ホーフマンスタールの「ばらの騎士」は“停滞”がテーマとされている難しさに言及し、「流れないことを感じていただくには流れるものとの対比が要ります。ですから、今回の音楽で根本さんがなさったことは、まず『流れない音楽』をつくること。そしてそれを効果的に活かすための『流れる音楽』をところどころに挟むこと。これって、音楽史上、かなり重要な闘いではないでしょうか??」と問いかける。

SPAC 秋→春のシーズン 2023-2024 #3「ばらの騎士」より。(撮影:三浦興一)

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寺内は「今の自分達が生きている時代とは違う時代設定なんですけれども、違う部分や同じ部分、自分が共感できる部分や、どうしてこうなんだろうと違和感を感じる部分、そういったことを自由に感じながら観ていただけたら嬉しいです」と期待を込めた。

本作は今後、本日1月8日、13・14日、20・21日、3月10日に上演される。

宮城聰コメント

ついに初日が開きました!

ご来場いただいた皆さま、そして伴走してくださった皆さん、ほんとうにありがとうございます。今回初めての試みとして「『ばらの騎士』サロン」で稽古場を観にきてくださる方々がいることは、僕にとってとても励みになりました。

さて、初日の終演後にアフタートークがあり、大岡淳さんの司会のもと、根本さん・寺内さん・僕というメンバーでいくつかお話をしたのですが、大岡さんからの最後の質問として「根本さんの音楽は演出にとってどういう存在だったか」といったお尋ねがありました。そこで僕が喋ったことを改めて書いておこうと思います。

音楽というのは、基本的に「流れる」ものですよね。「ラジオから音楽が流れてきた」とか「店内で私の好きな歌が流れていた」と言うように、音楽は「鳴る」ものではなく「流れる」ものだ、というのが普通の認識だろうと思います。

「鳴る」と「流れる」の違いは、連続性、ですよね。流れる、と言うからには、「止まらない」という前提があります。そしてヒトは、心臓や肺が「止まらずに」動き続けることに(安心に伴う)気持ちよさを感じるわけで、最も始原的な音楽は心臓の鼓動と肺の息吹であり、世の音楽はみなそこから発展してきたものだと言ってもいいでしょう。

そしてそうだとすると、音楽にとっていちばん苦手な表現は「停滞」だということになりますよね。

しかし驚くべきことに、ホーフマンスタールの書いた「ばらの騎士」は、なんとその「停滞」をテーマにしているんですね。

世の中が激動しているときには、表現者は人間の中に「不変のもの」「不動のもの」を追求したくなる。しかし世の中が停滞しているときには逆に人間の中の「移ろうもの」「無常なるもの」を表現することに向かってゆく。日本の芸術で前者の代表は三島由紀夫であり、後者の代表は源氏物語──そして「ばらの騎士」も後者タイプの金字塔である、というのが僕が今回気づいたことで、つまりそれゆえに、「ばらの騎士」のテキストを十全に表現しようとするなら、そこには「流れない音楽」が必要になるわけです。

流れない音楽。

ただし流れないことを感じていただくには流れるものとの対比が要ります。

ですから、今回の音楽で根本さんがなさったことは、まず「流れない音楽」をつくること。そしてそれを効果的に活かすための「流れる音楽」をところどころに挟むこと。

これって、音楽史上、かなり重要な闘いではないでしょうか??

寺内亜矢子コメント

初日が明けて、思った以上にお客さまに温かく迎えていただけてほっとしたというのと、色々な世代の方々がそれぞれに楽しむポイントを見つけて楽しんでくださったように感じられたので、これからも色々な方に観ていただければ嬉しいです。

今の自分達が生きている時代とは違う時代設定なんですけれども、違う部分や同じ部分、自分が共感できる部分や、どうしてこうなんだろうと違和感を感じる部分、そういったことを自由に感じながら観ていただけたら嬉しいです。

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SPAC 秋→春のシーズン 2023-2024 #3「ばらの騎士」

2024年1月7日(日)・8日(月・祝)、13日(土)・14日(日)、20日(土)・21日(日)、3月10日(日)
静岡県 静岡芸術劇場

作:フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
演出:宮城聰寺内亜矢子
音楽:根本卓也
出演(五十音順):石井萠水、大高浩一、木内琴子、貴島豪、小長谷勝彦、榊原有美、佐藤ゆず、武石守正、永井健二、本多麻紀、牧山祐大、宮城嶋遥加、森山冬子、山本実幸、吉植荘一郎、若宮羊市

※出演を予定していた吉見亮は出演しないこととなりました。
※初出時よりコメントを一部変更しました。

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読者の反応

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SPAC-静岡県舞台芸術センター @_SPAC_

好評上演中🌹『ばらの騎士』
ご来場いただいた皆さま、気にかけていただいている皆さまありがとうございます!

隔週月曜配信「石井萠水は主役になりたい!」
今週はイレギュラーですがこのあと20:00~
インスタライブを行います!📣👇
https://t.co/nfWCaKAbCo
質問も受付中!👐@SPAC_moemi https://t.co/K0AgzYktyF https://t.co/Cju4qtgSCa

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