感謝と悔しさを感じた日々…中村勘九郎＆中村七之助、父・中村勘三郎への思い語る

十八世中村勘三郎十三回忌追善興行に関する合同取材会が昨日11月28日に東京都内で行われ、出演者の中村勘九郎と中村七之助が出席した。

十八世中村勘三郎十三回忌追善興行では、2012年に死去した勘三郎をしのび、彼の長男である勘九郎、次男の七之助をはじめとした出演者たちがさまざまな演目を披露する。来年2月には東京・歌舞伎座で「猿若祭二月大歌舞伎」、3月には愛知・同朋高等学校の体育館で「名古屋平成中村座 同朋高校公演」を上演。また3月以降には、「中村勘九郎 中村七之助 中村勘太郎 中村長三郎 陽春歌舞伎特別公演2024」「中村勘九郎 中村七之助 春暁歌舞伎特別公演2024」「中村勘九郎 中村七之助 錦秋歌舞伎特別公演2024」といった全国巡業公演が開催され、10月には鹿児島県三島村硫黄島で三島村歌舞伎「平家女護島 俊寛」が上演される。

勘九郎は「以前、祖父（十七世中村勘三郎）が父に『追善興行ができるような俳優になっておくれ』と言っておりました。ですので、歌舞伎座をはじめとする会場で父の追善興行をやらせていただけるのは、本当にうれしいこと。父が生きていた頃は親孝行をすることができなかったのですが、今は少し恩返しができているのかな」と亡き父への思いを語る。七之助は「1年を通して父の追善興行を行えるということは、息子として非常にうれしいですし、身の引き締まる思いです。1公演1公演、精一杯勤めますので、皆様どうぞよろしくお願いいたします」とあいさつした。

勘九郎はまず「猿若祭二月大歌舞伎」に触れ、「『籠釣瓶花街酔醒』で、祖父も父も大好きだった佐野次郎左衛門を初役で勤めます。長男の勘太郎が『猿若江戸の初櫓』で勤める猿若は、年齢的に難しいお役だと思うんですけれども、今、一生懸命稽古をしております。また、次男の長三郎とは『連獅子』を踊らせていただきます」と紹介。七之助は同じく「猿若祭二月大歌舞伎」の「新版歌祭文」に言及し、「丁稚久松を初役で勤めさせていただきます。久作娘お光は（中村）鶴松にぴったりな役だと思うので、彼が演じるお光に会えることがとても楽しみ。父もどこかで喜んでくれているのではないでしょうか」と優しい笑顔を浮かべる。

「名古屋平成中村座」の会場となる同朋高校は、初代中村勘三郎生誕の地とされる愛知県名古屋市中村区にあり、2006年には、十八代目勘三郎襲名披露公演が同朋高校の体育館で行われた。勘九郎は、けがのため2006年公演に出演できなかったことを振り返り、「父から高校生たちとの楽しい思い出をたくさん聞いていたので、今回上演することができてとてもうれしい。若い方々に歌舞伎の底力をお見せできれば」と意気込む。また勘九郎は、俊寛僧都の流刑地・硫黄島で上演される「平家女護島 俊寛」について、「父が70歳になる2024年に、硫黄島で本作を上演したいと話していました。実現できず悔しい思いはあるのですが、父の意志を継いで、精一杯勤めます」と決意を新たにした。

父である勘三郎を亡くしてから気付いたことや、今後の歌舞伎界への思いを問われた勘九郎は「（父が亡くなってから）感謝と悔しさを感じた日々でした。これからも祖父や父が残してくれた演目を手がけてきたいと思っています」と回答。七之助は「父が愛した歌舞伎を自分の身体で表現し、後輩たちにつないでいくこと、それが私たちの使命だと感じるようになりました」と真摯に述べた。