尾上菊之助、中村梅枝・中村米吉と“恋の火花”散らす!国立劇場「妹背山婦女庭訓」

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令和5年10月歌舞伎公演「『妹背山婦女庭訓』<第二部>」の出演者である尾上菊之助、中村梅枝、中村米吉の取材会が、昨日9月22日に東京都内で行われた。

左から中村米吉、尾上菊之助、中村梅枝。

左から中村米吉、尾上菊之助、中村梅枝。

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これは、“初代国立劇場さよなら特別公演”として「妹背山婦女庭訓」を第一部、第二部と2カ月に分けて通しで上演する企画の後半。「妹背山婦女庭訓」は藤原鎌足が蘇我入鹿を討った大化の改新を題材にした作品で、第二部では純情な町娘・杉酒屋娘お三輪の恋を発端に、入鹿が討たれるまでを描いた、「布留の社頭の場」「道行恋苧環」「三笠山御殿の場」「三笠山奥殿の場」「同 入鹿誅伐の場」が上演される。菊之助はお三輪、梅枝は烏帽子折求女実ハ藤原淡海、そして米吉は入鹿妹橘姫を勤める。

尾上菊之助

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菊之助は、役について「『道行恋苧環』では橘姫を何度か演じさせていただきましたが、お三輪役で出演するのは初めて。金殿(「三笠山御殿」の通称)でのお三輪も、10年ぶりです。(お三輪は坂東)玉三郎さんに教えていただきました」と述べ、「『妹背山婦女庭訓』は、タイトルから“女性がどうあるべきか”というような作品だと捉えられてしまいがちですが、僕はそうではなく、“相手のことをどれだけ思えるか”ということを描いていると思っています。僕が演じるお三輪も、最初は嫉妬に狂いますが、その思いはやがて崇高なものに変わっていきます。彼女は来世ではきっと求女と添い遂げられると思って死んでいく女性ですので、そんな切なくはかない恋の物語をお客様と共有できれば」と言葉に力を込めた。

中村梅枝

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梅枝は、求女を初役で演じる。同役を父である中村時蔵から習うと明かしつつ「求女は、どんな人物なのか非常にイメージしづらいお役で、私自身悩んでいて。鎌足側の正義のために、橘姫の惚れた弱みに付け込むという嫌な役ではあるのですが、そうは見えないように作っていく必要があると思っています。また、王朝物としてもかなり風格のある作品ですので、物語の背景的な部分も、求女、橘姫、入鹿で表現していけたら。……ただあまり深く考えすぎても理屈っぽくなりますし、“雰囲気”が求められるお役でもあると思うので、私のことは菊之助のお兄さんと米吉くんが引っ張ってくれると信じております!」と菊之助と米吉に視線を投げかけた。

中村米吉

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米吉は「金殿での橘姫は、以前(中村)雀右衛門のおじ様がお三輪をおやりになられた際に勤めさせていただきましたが、道行での橘姫は初役ですし、また求女のために橘姫が死んでしまう『入鹿誅伐の場』も初めて。金殿は、以前雀右衛門のおじ様に教えていただいたことを元にし、道行は振付の(尾上)菊之丞さんにお伺いし演じます。また『入鹿誅伐の場』は、その時々でいろいろなやり方がございますが、入鹿を演じる父(中村歌六)とのやり取りになりますので、父とも相談しながら進めていきたい」と述べる。

尾上菊之助

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なお本公演をもって、国立劇場は建て替えのため閉場する。記者から同劇場での思い出を問われると、菊之助は「国立劇場では、岳父(中村吉右衛門)から時代物の大役をたくさん教えていただきましたので、そういった思い出は尽きないですね。あと、これは失敗した思い出なのですが……父(尾上菊五郎)が『京鹿子娘道成寺』を踊っていたときに所化として出ていたのですが、お腹が痛くなってしまって。あまりの痛さに、隣にいらっしゃった、今は亡き(市村)鶴蔵さんに『鶴蔵さん、お腹が痛いです……』とお伝えしたら、『坊っちゃん、1回引っ込んで!』と助けてくれました」と懐かしそうにエピソードを明かす。

中村梅枝

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中村米吉

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梅枝は「国立劇場では、菊之助のお兄さんの相手役として、大きなお役を幾度もさせていただきました。また、小劇場で関の扉(「積恋雪関扉」の通称)に出演した際、関兵衛を播磨屋のおじ様(吉右衛門)が、菊之助のお兄さんに教えていらっしゃったのですが、稽古場でのダメ出しのとき、おじ様が自ら全部演じられて。それを間近で拝見し、感動しましたね。貴重な経験でした」、米吉は「僕は吉右衛門のおじ様の公演に出させていただくことが常でしたので、おじ様が手がけた復活狂言にも数多く出させていただきました。また伝統歌舞伎保存会での研修発表会で、『一条大蔵譚』の常盤御前、(「仮名手本忠臣蔵」)七段目のおかる、『神霊矢口渡』のお舟、『本朝廿四孝』の八重垣姫といった大役を勉強させていただけたことは、自分にとって大きなことでした」とそれぞれ思い出を話す。

またそれぞれの印象を問われると、梅枝は「菊之助の兄さんは、古典を深く愛する一方で、新しいこともたくさんなさる方。こういう場でお話を伺っていて、作品の解釈など『その考えは僕にはなかったな』と気付かされることが多く、非常に勉強になります。米吉くんとは、実はそんなに共演がなく。プライベートではよくご飯を食べに行ったりしますが、よくしゃべる子だな、と(笑)。彼が雪姫を勤めた「祇園祭礼信仰記 金閣寺」を先日拝見しましたが、彼のかれんなところは、私にはないもの。改めて、女方としての長所だと感じました」と語る。

米吉は「今回梅枝兄さんは立役ですが、お二人共、数々の大きなお役をなさっている女方の先輩です。いつもお二人の舞台を拝見して勉強させていただいていますし、ご一緒できることが本当にありがたい」と言葉に尊敬の念をにじませ、さらに「梅枝兄さんはおモテになるので、求女らしい方だなと」とコメント。これに対して梅枝はすかさず「ありがとう(笑)」と返答し、周囲の笑いを誘った。2人の発言を優しげな眼差しで見つめていた菊之助は「梅枝くんは本当に研究熱心。何度も『お兄さんどうですか』と聞きに来て、どんどん(演技を)改良していく。米吉くんは大役が続いておりますし、三十代になって吸収盛り。そんなお二人に負けないように、また道行から恋の火花を散らせるよう(笑)、一緒に作っていきたいですね」と思いを述べた。

公演は、国立劇場 大劇場にて10月4日から26日まで。なお、現在同劇場では「『妹背山婦女庭訓』<第一部>」が9月26日まで上演されている。

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令和5年10月歌舞伎公演「『妹背山婦女庭訓』<第二部>」

2023年10月4日(水)~26日(木)
東京都 国立劇場 大劇場

通し狂言「妹背山婦女庭訓」

作:近松半二

第二部
序幕「布留の社頭の場」「道行恋苧環」二幕目「三笠山御殿の場」大詰「三笠山奥殿の場」「同 入鹿誅伐の場」

脚本:戸部銀作

出演
藤原鎌足:尾上菊五郎
豆腐買おむら:中村時蔵
杉酒屋娘お三輪 / 采女の局:尾上菊之助
宮越玄蕃:坂東彦三郎
烏帽子折求女実ハ藤原淡海:中村梅枝
荒巻弥藤次:中村萬太郎
入鹿妹橘姫:中村米吉
大判事清澄:河原崎権十郎
漁師鱶七実ハ金輪五郎今国:中村芝翫
蘇我入鹿:中村歌六
ほか

令和5年9月歌舞伎公演「『妹背山婦女庭訓』<第一部>」

2023年9月2日(土)~26日(火)
東京都 国立劇場 大劇場

通し狂言「妹背山婦女庭訓」

作:近松半二

第一部
序幕「春日野小松原の場」二幕目「太宰館花渡しの場」三幕目「吉野川の場」

脚本:戸部銀作

出演
太宰後室定高:中村時蔵
蘇我入鹿:坂東亀蔵
久我之助清舟:中村萬太郎
腰元小菊:市村橘太郎
采女の局:坂東新悟
太宰息女雛鳥:中村梅枝
大判事清澄:尾上松緑
ほか

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六条亭 @rokujoutei

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