2021/2022 シーズン 新国立劇場バレエ団「不思議の国のアリス」が、本日6月3日に東京・新国立劇場 オペラパレスで開幕。これに先駆け、昨日2日に舞台稽古見学会が行われた。
これは、ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」を題材に、
幕が開くと、舞台上には、ガーデンパーティを控えたアリス一家の庭が。庭師の青年ジャックから赤いバラをプレゼントされたアリスは喜び、パーティのため運ばれてきたジャムタルトを1つジャックに贈る。しかしアリスの母は、ジャックがタルトを盗んだと誤解し、彼を解雇してしまう。一家の友人であるルイス・キャロルは、悲しむアリスを慰めようと、彼女を写真撮影に誘うが……。
アリスが、カメラ機材が入っていたカバンから“不思議の国”に飛び込むと、ストライプ状に渦を巻く円の連なりが、アニメーションとして紗幕に映し出される。円の奥に、アルファベットや、ジャムタルトといった物体が吸い込まれていく中、アリスがスクリーン中央に現れると、渦巻きが加速。アリスが穴の奥底に“落ちていく”様が表現された。このほか劇中では、紗幕に投影された平面の扉が、立体的な“本物”の扉になる仕掛けや、アリスが巨大化したことを、錯覚を利用した舞台美術で表す演出など、観客を“不思議の国”にいざなうギミックが随所に盛り込まれていた。
舞台稽古見学会では、アリス役を
木下は、白ウサギを演じている間、頭や後ろ脚をせわしなく掻く仕草で“ウサギ”らしさを表現。その愛らしさで観客の笑いを誘う。益田は、アリスの母を演じているときは、きびきびとした、美しくも冷徹な印象を感じさせる踊りで魅せるが、ハートの女王を演じているときは一転、女王の度を越した傲慢さを強調するため、オーバーな動きでコミカルに舞い、会場を笑いで包んだ。中島が演じる、鮮やかな衣裳に身を包んだマッドハッターの見どころは、お茶会のテーブルで披露するタップダンス。オーケストラのドラマティックな演奏に、中島の靴底で鳴らす音が重なり、奇妙なお茶会のムードを盛り上げた。
舞台稽古見学会の開幕前には、吉田都より挨拶が。吉田は「『不思議の国のアリス』は、世界中で上演されていますが、アジアでは新国立劇場のみでの上演となっておりまして、このことを光栄に思っております」と述べつつ、「今回は久しぶりに、海外からたくさんの先生にお越しいただけました。この作品では、振付の1つひとつに意味が込められているのですが、先生方が本当に細かく教えてくださったおかげで、ダンサーたちは作品をより深く理解したうえで、本番に臨むことができます。ダンサーたちがみるみる成長していく様子を目の当たりにできたのは、私もとてもうれしかったですし、先生方には本当に感謝しております」と言葉に力を込める。
また今回の上演版では、オーストラリア・バレエのジャレッド・マドゥンと、英国ロイヤルバレエの
最後に吉田は「2020年6月に、『不思議の国のアリス』がキャンセルになってから、2年間。新国立劇場バレエ団にとっても、暗いトンネルに入り込んでしまったような時期ではございましたが、その間、ダンサーたちを取り巻く環境の改善や、スタジオの新築など、少しずつ前進することができました。ようやく、トンネルの出口が見え始めてきたところ。(トンネルを)抜けたあとは、バレエ団として新たなチャレンジも考えております」とほほ笑んだ。
上演時間は休憩ありの約2時間50分で、東京公演は6月12日まで。なお本作は、6月18・19日に群馬・高崎芸術劇場 大劇場でも上演される。
2021/2022 シーズン 新国立劇場バレエ団「不思議の国のアリス」
2022年6月3日(金)~12日(日)
東京都 新国立劇場 オペラパレス
2022年6月18日(土)・19日(日)
群馬県 高崎芸術劇場 大劇場
台本:
振付:クリストファー・ウィールドン
音楽:ジョビー・タルボット
美術・衣裳:ボブ・クロウリー
指揮:ネイサン・ブロック、冨田実里
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
出演(3、5、10、12日 / 4日13:00開演回、8日、11日13:00開演回 / 4日18:30開演回、9日、11日18:30開演回)
アリス:
庭師ジャック / ハートのジャック:
ルイス・キャロル / 白ウサギ: 木下嘉人 / 速水渉悟 / 中島瑞生
ほか
※初出時、内容に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
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【公演レポート】観客を“不思議の国”にいざなうギミック満載、新国立劇場バレエ団「不思議の国のアリス」開幕(舞台写真あり) https://t.co/WTdI5Rimb5