「FACE / FAITH」は、2017年に同劇場で「フェイス FACE / FAITH」のタイトルで上演され、昨年にライブ動画配信サービス・PIA LIVE STREAMで配信されたもの。工場地帯の一角で対峙する、青年と精神科医の姿を描く二人芝居だ。今回、出演者にはオリジナルキャストである
上演に向け、西森は「時を経て力強さを増したこの作品が、劇空間にどんな情動を立ち昇らせるのか。どうかその瞬間の、目撃者となってください」とコメント。伊藤は「2021年の『フェイス』は劇場空間で皆様にお届けします。あの刹那の事件の“目撃者”になってください。心を込めて作品に当たる所存です」と思いを述べ、坂元は「『逃げ道のないフェイス』思いっきり悩んで、挑戦して、楽しみたいと思います。おそらくまだコロナ禍が続く中での公演になりそうですが、よろしければ観に来て……目撃しに来てください!!」と来場を呼びかけた。上演時間は約1時間5分。チケットの販売は、2月27日にスタート。
西森英行コメント
「フェイス」は数奇な作品である。
プロデューサーと、「濃密な二人芝居を創りたい」、と話したことから始まったこの作品は、伊藤裕一くん、坂元健児さんという、優れた俳優さんを思い描きながら、二人に宛てて創り始めた。演劇作品を作っていると、期せずして、「巡り合う」と言う経験をする。思いがけず、自分の心の奥の大切なものが、作品に注がれることがある。そう言う作品は、「書く」ことが「書かされる」ことになり、「演出する」ことが、「演出させられる」ことになる。執筆も時間がかかり、俳優さん二人には、大変な迷惑をかけてしまった。(この場をお借りして、改めてごめんなさい!)あまりに無我夢中で作ったために、今思い返しても、記憶が定かではないところがある。けれど、二人を思いながら作ったこの「フェイス」と言う作品には、思いもよらず、そして間違いなく、自分の「魂」が乗ったことを感じた。
コロナ禍で、「演劇に携わる人間として、表現を止めないこと」を目指してプロデューサーと共に始めたリモート演劇レーベル「エンゲキノマド」も、この「フェイス」がきっかけだった。平野良、谷佳樹、安西慎太郎、林田航平、力のある俳優さんによって、「フェイス」は新たな表現の息吹を注がれた。このエンゲキノマド「フェイス」を創りながら、新たな発見があった。同じ役を3人が演じ、3組の作品が出来上がる。そこに浮かび上がるものは全く異なり、あたかも違う作品を見ているかのような錯覚を覚えた。役は、演じる俳優を映す鏡だ、と言われる。演者が真にその役の持つエモーションと密接した時、そこに立ち現れてくるのは、技術を超えた、俳優自身。俳優の内奥の、形のない、魂のようなものなのだと、改めて気づかせてもらった。
今回、そんな経験を経て、改めてこの「フェイス」で、二人と向き合う。再演となる本作は、劇空間に、研ぎ澄まされた二人の存在そのものが立ち現れるような作品を産み出したい。演劇は、その空間にどれだけ「ほんとうの瞬間」を立ち昇らせることが出来るか、と言う芸術だ。この作品は、その極限に挑む戦いを、創り手である私たちに突きつけてくる。全身全霊で、face(向き合う)ことを、求められる。そうでなくてはならない。だからこそ、この再演を、決意した。
密を避け、距離を取る。私たちは今、そんな日常を生きている。この作品が描く、肉薄し、向かい合う、と言うテーマは、この時代にあって、お客様に、そして創り手に、どんなエモーションを生み出すのか。作品創りを通して、その有りようを、見つめていきたい。そして、観客の皆さんと一緒に、演劇への理屈を超えた信頼(faith)を、共有したい。
時を経て力強さを増したこの作品が、劇空間にどんな情動を立ち昇らせるのか。どうかその瞬間の、目撃者となって下さい。
伊藤裕一コメント
「フェイス」という作品が僕にとってどれだけ特別かということは、千言万語を費やしても表現し得ないのではないかと思います。
この作品は、僕の“出発点”であり“永遠の目標”です。
2017年の初演時は、自分がどうやってあの場に立っていたのかも思い出せないほどに無我夢中でした。それが、昨年“エンゲキノマド”として、新たな形で復活し、この作品を、もっと多くの方に、長い年月愛して欲しいという気持ちが生まれました。
「フェイス」という作品が、より色濃く、具体性を増して僕の前に顕れて、そして自分の俳優としての在り方を問いかけて来たように感じました。
脚本演出の西森英行さんとの出会いも「フェイス」でした。
1秒1秒学びを頂き、作品を共にしていないときでも、常に次にお会いするときまでに絶対クリアしておくと決めた課題を自らに科しております。
坂元健児さんは、高校時代からの憧れの人であり、またご一緒できることがとても嬉しいです。僕の演技の至らなさも全て受け止めてくださいます。
「フェイス」は一筋縄ではいかない作品です。
行き詰まり、己の余裕のなさから頭と身体が思うように動かなかったりすることも多々ありました。ですが、「フェイス」の世界に呼び戻してくださったスタッフの皆様が様々なサポートで支えてくださったお陰でぼくはいまここにいます。
そしてまた、心から「この作品に出演したい!」と言うことが出来ます。
2017年、エンゲキノマドを経て2021年の「フェイス」は劇場空間で皆様にお届けします。
あの刹那の事件の“目撃者”になってください。
心を込めて作品に当たる所存です。
坂元健児コメント
「フェイス」再演! 大変嬉しいです。
初演での、お客様が四方に、しかも至近距離にいらっしゃる空間は、普段の舞台とは全く違う、ヒリヒリする、とてつもない緊張感でした。ただそれが逆に、胆が座ると言いますか、捨て身と言いますか、裸で舞台に立つ感覚? とにかく凄くいい経験をさせて頂きました。そんなこんなで「フェイス」は、大好きな作品のひとつとなりましたので、自粛期間「フェイス」の配信のお話を頂いた時は、本当に嬉しかったです。オンラインでの稽古を経ての、本番一発撮りでは、更に新たな発見もあり、尚更もう一度舞台で演りたい! と密かに思っていました。その願いが通じ、待ちに待った再演!
思い起こせば初演の顔合わせ時、台本が1ページも出来ていませんでした。
脚本演出の西森さんから謝りメールを頂きました。僕は西森さんの作る作品が好きで、絶大なる信頼感を持っていますので「妥協せずにじっくり書いてください。」と返信させて頂きました。その後、いっこうに台本が届かない日々。約1週間後に3ページ出来たと聞いた時の喜び。数ページずつしか送られてこない日々。数ページずつでも稽古出来る喜びを噛み締める日々。そしてついに台本が完成したのは本番の約1週間前! その台本を引っ提げての初めての通し稽古を終えた後、西森さんに「まだお客様に観せられない!」と言われた時は、あんなメール返すんじゃなかったとつくづく思いました。
でも今回は違います。既に立派な台本があります。配信フェイスもやりました。「台本が出来てなかったから」という、紋所のような言い訳は一切通用しません。「逃げ道のないフェイス」思いっきり悩んで、挑戦して、楽しみたいと思います。おそらくまだコロナ禍が続く中での公演になりそうですが、よろしければ観に来て……目撃しに来てください!!
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伊藤裕一 @McGuffin_11
“目撃者”となって、西森英行「FACE / FAITH」に伊藤裕一・坂元健児ペア再び(コメントあり) https://t.co/NPWOQd3hmy