3月に
稽古場の扉を開けると、割れるような大きな笑い声が耳に飛び込んできた。場面は戯曲の前半、
野上は2015年に、演劇系大学共同制作の企画で「カノン」の演出を手がけている。その経験からか、野上は作品や登場人物に対し、ある確信を持って演出に臨んでいるように見える。俳優たちは、野上の指示を聞いたうえで、さらに多彩なアプローチを試み、野上はそのアプローチをまずは笑顔で受け止めながら、自身も俳優たちの間に入って、より具体的にシーンを作り上げていた。中でもシーンの中心にいることが多いさとうは、野上の言葉に即座に反応して、クールで妖艶な沙金像を立ち上げる。そんな沙金の傍らで、猫役の
そんな色濃い登場人物が次々と現れる中、天麩羅判官役の
また本作には、これまで快快や野上の個人企画などにも携わったスタッフが多数参加している。彼らは、野上が「ここは麻婆豆腐(の画)が欲しいな」と言うとその場でパッと段ボールに絵を描いて即席の麻婆豆腐パネルを作り、「ここに高さが欲しいな」と言われればサッと木枠を取り出して、さらにキャストが怪我をしないようにテープでサッと補強して、スピーディかつ細やかに稽古を進行させる。さらにカンパニーには、野上をはじめ幼い子供たちを抱えるキャスト、スタッフが多いこともあり、休憩時間には子供を中心にメンバーが団欒する姿も見られた。稽古場には常に笑いと穏やかな空気が流れており、その稽古場の空気が作品をポジティブに膨らませていた。
「カノン」は3月2日から15日まで東京・東京芸術劇場 シアターイーストにて上演。なお本日、3月6日19:00開演回が追加公演として決定した。追加公演のチケットは2月15日10:00に発売。
「カノン」
2020年3月2日(月)~15日(日)
東京都 東京芸術劇場 シアターイースト
作:
演出:
出演:
※2020年2月28日追記:本公演は新型コロナウイルスの影響で中止になりました。
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