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稽古場にポジティブな風、カンパニーが一丸となり挑む野上絹代演出「カノン」

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「カノン」稽古場の様子。

「カノン」稽古場の様子。

3月に野上絹代演出「カノン」が上演される。1月下旬、ステージナタリーはその稽古場を取材した。

稽古場の扉を開けると、割れるような大きな笑い声が耳に飛び込んできた。場面は戯曲の前半、大村わたる演じる海老の助が、さとうほなみ演じる沙金に挑発されて、アドリブを交えながら対抗するシーンだ。大村が顔を赤らめながら熱演するその様に、稽古場にいたキャストとスタッフが一緒に笑い声を上げた。中でも一番大きな声で笑っていた野上が、「そのアドリブは毎日違うものが見られるんですか?」と大村にツッコむと、大村は「えっと……がんばります!」と答え、さらに大きな笑いが起きた。

野上は2015年に、演劇系大学共同制作の企画で「カノン」の演出を手がけている。その経験からか、野上は作品や登場人物に対し、ある確信を持って演出に臨んでいるように見える。俳優たちは、野上の指示を聞いたうえで、さらに多彩なアプローチを試み、野上はそのアプローチをまずは笑顔で受け止めながら、自身も俳優たちの間に入って、より具体的にシーンを作り上げていた。中でもシーンの中心にいることが多いさとうは、野上の言葉に即座に反応して、クールで妖艶な沙金像を立ち上げる。そんな沙金の傍らで、猫役の名児耶ゆりは小柄な身体を生かしてキュートさを振りまき、さらに沙金に翻弄される太郎役の中島広稀は、「もっと動揺して!」「純朴な感じで!」という野上の声で、朴訥とした愛すべきキャラクターへと変貌していった。

そんな色濃い登場人物が次々と現れる中、天麩羅判官役の渡辺いっけいは、一言発しただけで場をさらい、貫禄を見せつける。渡辺は、ごく短いセリフの中にも多彩な表現を盛り込み、判官の大きさ、掴みどころのなさを体現した。

また本作には、これまで快快や野上の個人企画などにも携わったスタッフが多数参加している。彼らは、野上が「ここは麻婆豆腐(の画)が欲しいな」と言うとその場でパッと段ボールに絵を描いて即席の麻婆豆腐パネルを作り、「ここに高さが欲しいな」と言われればサッと木枠を取り出して、さらにキャストが怪我をしないようにテープでサッと補強して、スピーディかつ細やかに稽古を進行させる。さらにカンパニーには、野上をはじめ幼い子供たちを抱えるキャスト、スタッフが多いこともあり、休憩時間には子供を中心にメンバーが団欒する姿も見られた。稽古場には常に笑いと穏やかな空気が流れており、その稽古場の空気が作品をポジティブに膨らませていた。

「カノン」は3月2日から15日まで東京・東京芸術劇場 シアターイーストにて上演。なお本日、3月6日19:00開演回が追加公演として決定した。追加公演のチケットは2月15日10:00に発売。

「カノン」

2020年3月2日(月)~15日(日)
東京都 東京芸術劇場 シアターイースト

作:野田秀樹
演出:野上絹代
出演:中島広稀さとうほなみ / 名児耶ゆり永島敬三大村わたる山本栄司、長南洸生、緒形敦、川原田樹中林舞、手代木花野、佐々木美奈、前原麻希、本多遼、湯川拓哉、小田龍哉、村田天翔、佐野功木津誠之家納ジュンコ佐藤正宏 / 渡辺いっけい

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