日韓文化交流企画および世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演と銘打たれた本作。
なお今回の日韓版「ペール・ギュント」では、ペールの恋人ソールヴェイ役を
真の自分をどこまでも追い求めるペール・ギュントの、壮大な“自分探し”の物語が繰り広げられる本作。闇からの声に導かれ、世界を放浪するペールは、財産を築いては、また一文無しになることを繰り返す。数奇な冒険の果て、再び故郷を目指す彼だったが……。
浦井は夢見がちで型破りながら、純朴に己自身を探し続け、歳を重ねていくペールをエネルギッシュに演じる。趣里はそんなペールの無垢な魂に魅了されたソールヴェイの可憐さと芯の強さを細やかな演技で表現した。またマルシアは放蕩息子のペールに手を焼きながらも最後まで愛し抜く母親のオーセを激しさと優しさを用いて好演。そしてユンはトロール王の娘・緑衣の女を活発に全身で体現した。
作中では日本と韓国、両国の母国語が飛び交う。村人たちやペールが訪れることになるトロールの国の住人、富を得たペールにインタビューをする記者たちなど、さまざまな場面で2つの言語が混じり合い、ときに喜劇的なやり取りが展開される。身体表現を駆使し、豊かな色彩を織り成すヤンの演出に加え、日韓キャストによるパワーがぶつかり合うことで、祝祭的な舞台空間が立ち上がった。
音楽は、作曲家でボーカリストの国広和毅が担当。国広とパーカッションの関根真理による生演奏が随所に取り入れられ、さらには国広自身の声も音の一部となり、現実と幻想が交差する作品にさらなる奥深さを与えた。
乘峯雅寛が担当した舞台美術は、舞台両サイドに重厚なコンクリートの壁と、そこにまとわりつく雑草や苔などの植物を配し、廃墟のような場所を連想させる。場面ごとに開閉する鏡のような壁は、自問自答するペールの姿を時折写し返した。また意表を突くように登場するLEDライトのバーは、各シーンの印象を一変させた。
公演は12月24日まで東京・世田谷パブリックシアター、12月30・31日に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールにて。なお12月20日の18:30開演回では全国各地の映画館でライブビューイングが実施される。
日韓文化交流企画 世田谷パブリックシアター+兵庫県立芸術文化センター 世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演「ペール・ギュント」
2017年12月6日(水)~24日(日)
東京都 世田谷パブリックシアター
2017年12月30日(土)・31日(日)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
原作:
上演台本・演出:ヤン・ジョンウン
出演:
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