演出のヤン・ジョンウン、「浦井さんはペール・ギュントのドッペルゲンガー」

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浦井健治がタイトルロールを務める「ペール・ギュント」の制作発表会が本日10月24日に行われた。

「ペール・ギュント」制作発表会より。前列左からヤン・ジョンウン、浦井健治、後列左から浅野雅博、趣里、ユン・ダギョン、マルシア、キム・デジン。

「ペール・ギュント」制作発表会より。前列左からヤン・ジョンウン、浦井健治、後列左から浅野雅博、趣里、ユン・ダギョン、マルシア、キム・デジン。

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ヤン・ジョンウン

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会見冒頭で、「はじめまして、ヤン・ジョンウンです」と流暢な日本語を披露したヤンに続けて、浦井は「アニョハセヨ」と挨拶。第一声から“日韓交流”を体現する。ヤン演出の「ペール・ギュント」は2009年に初演、2013年には第20回BeSeTo演劇祭にて来日公演も行われ、さらに大韓民国演劇大賞の大賞および演出賞を受賞した。日韓文化交流企画と銘打たれた今回は、浦井のほか、ワークショップオーディションなどから選ばれた14名の日本人キャストと、5名の韓国人キャストが出演。ペールの恋人ソールヴェイ役を趣里、彼の母親オーセ役をマルシアが演じるほか、韓国の舞台や映像で活動するユン・ダギョン、演出のヤン・ジョンウンが芸術監督を務める劇団旅行者の看板俳優たちが名を連ねている。

浦井健治

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ヤンは「稽古が始まって1週間経ちますが、もう1年以上皆さんと作業しているような気持ちがします」と稽古の充実を述べる。続けて「今回、国際交流公演をやらせていただきますが、アジア周辺国の情勢はあまりよくないことになっていますよね。そんな中、違う国の人が集まって作品が作れるのは文化だからこそ。稽古場で役者さんやスタッフと作業していると、我々にボーダーはないなと感じます。皆さんとどんな旅路を描けるか楽しみにしています」と笑顔を見せた。

左からヤン・ジョンウン、浦井健治。

左からヤン・ジョンウン、浦井健治。[拡大]

またヤンは「マルシアさんが必ず稽古の終わりに『愛してる』って言ってくれるんですけど(笑)、それこそ私が目指しているアンサンブルの作り方。この1週間の稽古の中で役者さんたちには、自分の内面に秘めていることなどを話してもらっています。(作者であるヘンリック・)イプセンの哲学的テーマや、私が本作のテーマとしている“自分探し”の旅ということが、観客の皆さんにとっても自分の人生とオーバーラップするような作品になればと思います」と思いを述べた。

続けてマイクを持った浦井は、「稽古場が、とにかくエネルギーに満ちています」と語る。「ボーダーを超えるということがいろんなところで巻き起こっていて、稽古が始まって1週間、みんな自分のつらい思い出とか人生で一番大変だったことなどを、オープンマインドに涙ながらに披露する稽古場になっていて。この“船旅”が、新大陸なのか理想郷なのかに辿り着くのは千秋楽になるかもしれませんが、日本も韓国も、ひいては国なんか飛び越えて“人間とは”というような地平に到達できれば」と熱く語る。

趣里

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昨年の夏にヤンのワークショップを受けたという趣里は「ワークショップのあともその体験が自分の中にずっとあって、出演できたらいいなと思っていたので、今日この日が迎えられてうれしい気持ちでいっぱいです」と頬をほころばせる。「稽古が本当に濃密で、1分1秒が身体に刻み込まれている感じがします。ヤンさんやキャストの皆さんがいろいろな世界を見せてくださり、どこに行くんだろうとワクワクしているのですが、このエネルギーはお客さんにも絶対に伝わると思います」と自信をのぞかせる。

浅野雅博

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当初、言葉の壁が心配だったと話す浅野雅博は、「稽古の段階で、それは杞憂に終わりました」と安堵を見せる。「ヤンさんも韓国キャストも、みんなこんなに愛にあふれているのかと思うほどすごいんですよ。言葉の壁とか国境とかを芸術は簡単に越えてしまうものだということを、毎日目の当たりにしています」と実感を述べる。

キム・デジン

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「ペール・ギュント」に4回目の出演となるキム・デジンは「一度やった作品を繰り返すことは、個人的にはとても大変な作業です」と述べつつ、「今回は日本人の役者さんたちと一緒に出演できるので、楽しみにしていました。なので稽古はとても楽しいのですが、非常に集中力を必要とするので、先日は稽古帰りに、韓国の役者たちと肉を食べました……肉が心から欲しくなるくらい、とても疲れるんです!」と心境を明かし、会見場を笑いで包む。

ユン・ダギョン

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幼いころから日本文化に親しんで育ったと言うユン・ダギョンは、「日本の役者さんたちと仕事することを夢見ていて、今回それが叶いました」と笑顔を見せる。稽古について「古くからの友人たちがそれぞれどこかで遊んでいて、今グラウンドに集まってきたというような感じ」と評し、「今まで生きてきてこれほど他人の話に耳を傾けたことがあったろうか、これほど自分の胸のうちにあったことを人に伝えたことがあったろうかと思うくらい、一瞬一瞬が素晴らしくて感動的です」とカンパニーへの信頼を述べる。

そんな共演者たちの熱い思いを聞いていたマルシアは「それぞれの思い、作品については皆さんがおっしゃられた通り」と共感を語りながら、「実はこのカンパニーの中で、私が一番年上なんですよね(笑)」と苦笑い。「これまでいろいろなカンパニーに参加させていただいていますが、今までやったことがない、自分を裸にしないと表現できないことばかりをヤンさんがおっしゃるので、毎日毎日筋肉痛です。だって毎日稽古8時間よ! 信じられないでしょ(笑)」と記者に語りかける。さらに「これまでミュージカルばかりで、お芝居だけの作品は初めてです。素晴らしい“旅”にさせていただくつもりですので、お客様も遊園地に来たつもりでいろいろな体験をしにいらしてください。愛してる!」と笑顔を見せた。

記者がヤンに、ペール役を演じる浦井についての印象を問うと「今日の浦井さんのヘアスタイルが、すでにペールスタイルだよねって話をさっきしたんですけど(笑)」と笑いながら「浦井さんは遊び心もありますし、スマートで、ポイントをつかむのが早い。心で感じて経験する人ですね。私が考えているペールはまさにそういう人。なので、ペール・ギュントのドッペルゲンガーです」と語り、会場から大きな笑いが起きる。

また浦井は韓国キャストの印象を「愛にあふれ、エネルギーに満ちている。興味に対して純粋」と語り、その一例として「韓国キャストの男性陣がメイド喫茶に行ったらしいんです。そうしたら翌日“ラブラブキュン!”って稽古場でやっていて。“可愛かった?”と聞いたら“そうでもない”と。素直だなと思いました(笑)」とエピソードを披露し、会見場は再び笑いに包まれた。

公演は12月6日から24日まで東京・世田谷パブリックシアター、12月30・31日に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールにて上演される。

※初出時、本文に一部誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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日韓文化交流企画 世田谷パブリックシアター+兵庫県立芸術文化センター 世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演「ペール・ギュント」

2017年12月6日(水)~24日(日)
東京都 世田谷パブリックシアター

2017年12月30日(土)・31日(日)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

原作:ヘンリック・イプセン
上演台本・演出:ヤン・ジョンウン
出演:浦井健治 / 趣里万里紗、莉奈、梅村綾子、辻田暁、岡崎さつき / 浅野雅博、石橋徹郎、碓井将大古河耕史いわいのふ健、今津雅晴、チョウ・ヨンホ / キム・デジン、イ・ファジョン、キム・ボムジン、ソ・ドンオ / ユン・ダギョンマルシア ほか

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Takuro KIKUNAGA @takuandre

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