萩尾はパフォーマンスを観て「この世のものとは思えないものを観て、頭がどっかにいってしまいました……(笑)。なんと言っていいのかわかりません……」と感動しきりの様子。エドガーに扮した明日海が隣に座っていることについて「心臓がバクバク……」と顔を伏せ照れくさそうに笑うと、「イメージ以上に美しくって、小池先生のこだわりがよくわかります。ありがとうございます」と小池と出演者一同に感謝を述べ、「私のイメージを超えた美しい世界が目の前に広がるのが予感できて今からドキドキワクワクしております」と改めて舞台化へ期待を寄せる。
一方、原作者を前にパフォーマンスを終えた明日海は、「マンガのキャラクターを立体化してしまうことの重大さを感じて、大変緊張いたしました」と恐縮しきり。「エドガーの存在すべてに魅力を感じています。先生の描かれる表情。目の寂しさであったり、結んだ口の薄そうなところだったり、後頭部に感じるオーラ、立っているときの背骨のラインとか。少年なのにセクシーでもありすごく惹きつけられるものがある。それをどう佇まいで表現したらいいものかと困っているところですが、エドガーの持つ独特の葛藤が表現できたらいいなと思います」と本作にかける意気込みを真摯に語った。
小池にとって、約30年ごしの夢の実現となる「ポーの一族」舞台化は、1985年に小池と萩尾の2人が偶然席を隣り合わせたことがきっかけだと言う。小池は「新人公演『哀しみのコルドバ』が終わったあと、劇場向かいの喫茶店で隣の席に萩尾先生が座っていらっしゃって。もう二度と会えないかもと、初対面ですが『ファンなんです』と話しかけて、図々しく名刺をお渡しました。そしたら2カ月しないうちに、そのときたまたまミュージカルの脚本を書いていらした先生が、意見を求めるお手紙を送ってくださったんです。びっくりしました」と当時のエピソードを披露する。
萩尾は「お店でお花をいっぱい持ってらしたんですよ。お花に囲まれてるなあって(笑)。宝塚の人だよねと一緒にいたスタッフと話をしていたら、立ち上がってご挨拶されました。男の人から『ファンです』と言われることはあまりないので、ちょっとびっくりしてお名刺いただいてしまいました。そして演出家の方だって言うので、図々しくご意見うかがってしまい……」と当時を振り返り、「小池先生の作品は『蒼いくちづけ』『華麗なるギャツビー』を拝見して、どちらも私好みの作品で素晴らしいセンスでした。先生ならいつでも舞台化OKですよ。いつでも、OKですよ!って言ってたのですが、こんなに待たされたという話でございます(笑)」と冗談めかして語り場を和ませる。
なお中学高校と大阪の吹田市に住んでいた萩尾は、中学生のときに観た歌劇団の「霧深きエルベのほとり」に衝撃を受けたと言う。「主役の男の方が美しくて。カッコいい男の人は見たことがあったんですけど、美しい男の人は初めてで。『男にも美しい人がいるんだ』と思いました。いや、女の人なんですけどね」とニコリ。近年は1年に2本か3本のペースで宝塚を鑑賞していると話す。また司会からの「舞台版への注文は?」という問いに萩尾は「ない。ありません」と断言し、「『お願いします』と全部丸投げしています(笑)」と小池に視線を送る。隣の小池はこれを受け、「先生にご報告がてらメールをお送りしてご意見を伺うんですけど、何を伺っても『いいんじゃないですか!』という感じなので(笑)。すべてお任せいただいて……ありがとうございます」と頭を掻いた。
また小池は本作のポスター撮影時の様子を振り返り、「明日海の扮装を見たスタッフが『何十年も待った甲斐がありましたね』と言ってくれて、僕もすごくそう思いました。彼女がやるときのために、運命の神はそれまでやらない状況を作られたのかなと思った次第です」と、明日海が演じるエドガーへの手応えを語る。一方の明日海は「小池先生はメイクにもアドバイスくださいましたし、お衣装も生地感までこだわって選んでくださったと聞きました」と小池の本作に賭ける思いを間近で実感している様子だ。
明日海は続けて「エドガーと呼ばれて返事することも恐れ多いくらい特別な役ですが、自覚を持って萩尾先生と小池先生と原作のファンの皆様にご納得いただけるような作品を作りたいと思っております。マンガというのは音声が無いので、エドガーはどんな声をしてるんだろうと、そこから自分のイマジネーションをフル活用して、先生とお話し合いしながら組子と共に力を合わせていきたいです」と意気込む。
続く柚香も「本当にたくさんの方に愛されて大事にされてきている作品ですので、誠意を持って、宝塚のファンにも、作品のファンの方にも喜んでいただける作品作りができたら。心を込めて役に向き合っていきます」とコメント。仙名も「小池先生の作品への愛と夢が詰まったその思いを受けて、私たちもこの作品の中で役として息づけるように責任を感じています。大切に大切に作り上げていきたいです」と挨拶した。
なお本作では原作の「メリーベルと銀のばら」のエピソードがメインになり、年齢設定は明確化されない。初の舞台化にあたりさまざまな意見をもらったと言う小池は、「いただいたお手紙の中に『原作の設定を変えるのは、例え萩尾望都が許しても私が許しません』という熱烈なファンの方からのものもありました。自分が思い込んでいるものと違うと反発があると思いますが、それぞれの『ポーの一族』があると思うし、明日海ファンにはそれぞれの明日海像があると思う。すべての方の期待通りにはならないかもしれない」と前置きし、「ただ、今は、私たちで、花組でできるベストの作品を作りたい」と思いを明かす。
またエドガーの妹、メリーベルの扱いについて、「必ずしもメリーベルがヒロインという形でなくても成立すると思い、宝塚娘役のキャリアのある人間にとってやりがいのある役という点で、仙名はシーラを演じます。宝塚版では仙名の役者としての魅力を生かしていくほうが大事だと思った。それぞれの組のメンバーと合わせていく、それが宝塚と作品の設定かと思う。そういった調整にさまざまなご意見が出ると思いますが、より“宝塚”の舞台で生かすための算段だと思っていただければ」と観客にメッセージを送った。
公演は、2018年1月1日から2月5日まで兵庫・宝塚大劇場、2月16日から3月25日まで東京・東京宝塚劇場にて。兵庫公演のチケットは12月2日、東京公演のチケットは2018年1月14日より一般販売を開始する。
宝塚歌劇団花組「ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』」
2018年1月1日(月・祝)~2月5日(月)
兵庫県 宝塚大劇場
2018年2月16日(金)~3月25日(日)
東京都 東京宝塚劇場
原作:
脚本・演出:
出演:
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