上村聡史演出・文学座「中橋公館」中橋家の引き揚げと葛藤描く

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文学座「中橋公館」が6月30日から7月9日まで東京・紀伊國屋ホールにて上演される。

文学座「中橋公館」チラシ

文学座「中橋公館」チラシ

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本作は文学座創立メンバーの1人である真船豊による1946年の戯曲。中国・北京で終戦を迎えた日本人一家が引き揚げを前に葛藤する姿を通して、祖国という概念に囚われた日本人を、シニカルに描く。

上演に際し演出の上村聡史は、「作者がタイトルに『公館』と名付けた皮肉、すなわち私人たちの集まりである家族という共同体が、愚かしく、そして勇ましく外界と対峙するさまこそが、“公”という恐ろしくも利便的なものを多角的に浮かび上がらせる。そしてその“私”と“公”の間の振幅にこそ、演劇的な妙味があるのではないか。この妙味を丹念に、そして滑稽に見せていくことが、この作品をこの時代に上演する意味だと思う」とコメントを寄せた。

チケットは5月27日に発売。なお本公演は7月15・16日に兵庫・兵庫県立尼崎青少年創造劇場 ピッコロシアター 大ホールでも上演される。

上村聡史コメント

本作品において、作者は「敗戦という大きなテーマをみんな吐き出した思いがした」と語っている。敗戦のその日から帰還するまでの中橋家の各人の思いは、“家族”という結びつきの中で饒舌に吐き出されていく。そこには同時に“祖国と人”との結びつきを象徴するかのように、個人と国、個人と世界、個人と他者という関係の根深さが表わされているよう思う。敗戦という大きな舞台装置の底に、どうも個がその外なるものと対峙する生まれ持っての業、すなわち断ち切れないヒューマニズムが潜んでいるようにも感じる。
『中橋公館』を上演することは、祖国という概念と向き合うことになるのは大前提ではある。しかし個人が死に向う“生”という時間の中で、どう己以外のものと粘り強く対峙していくか、同時に内なる自分の中のヒューマニズムとどう付き合っていくかを問うことである。作者がタイトルに『公館』と名付けた皮肉、すなわち私人たちの集まりである家族という共同体が、愚かしく、そして勇ましく外界と対峙するさまこそが、“公”という恐ろしくも利便的なものを多角的に浮かび上がらせる。そしてその“私”と“公”の間の振幅にこそ、演劇的な妙味があるのではないか。この妙味を丹念に、そして滑稽に見せていくことが、この作品をこの時代に上演する意味だと思う。

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文学座「中橋公館」

2017年6月30日(金)~7月9日(日)
東京都 紀伊國屋ホール

2017年7月15日(土)・16日(日)
兵庫県 兵庫県立尼崎青少年創造劇場 ピッコロシアター 大ホール

作:真船豊 
演出:上村聡史

キャスト

中橋徹人:石田圭祐
中橋あや:倉野章子
中橋勘助:浅野雅博
名越志保、浅海彩子、吉野実紗(「吉」はつちよしが正式表記)、福田絵里、前東美菜子、内堀律子 / 木津誠之、相川春樹、越塚学

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読者の反応

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ごいんきょ @goinkyo_M

舞台中央に置かれた飛行機の模型。あれは雷電じゃないかな。上村聡史演出・文学座「中橋公館」中橋家の引き揚げと葛藤描く - ステージナタリー https://t.co/uAVyipMXAB

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