本作は、炭鉱夫の画家集団アシントングループの実話をもとにした作品。1934年のイギリス北部を舞台に、絵画を学ぶことで自己を解放していく炭鉱夫たちの姿をコミカルに描いた。映画「リトル・ダンサー」「戦火の馬」の脚本家リー・ホールによる戯曲で、2007年にイギリス・ニューカッスルにて初演。その後、全英を周って注目を浴び、ブロードウェイを経てカナダ、アルゼンチン、ペルー、ニュージーランド、韓国などを巡り、今回日本で初上演となる。
本作の演出を手がける兒玉庸策は「暗い穴倉に潜って働きづめの炭鉱夫たちが、こぞって絵筆をとる。リー・ホール脚本のドラマは痛快で清々しくもあり、現代に生きる我々に多くのことを強く語りかけてきました」とコメントした。
兒玉庸策コメント
1934年、イギリスの片田舎のとある炭鉱町に画家集団が誕生しました。彼らは町の名前をとって“アシントン・グループ”と呼ばれました。私がその存在を知ったのは、2009 年のロンドンのナショナル・シアターで「炭鉱の絵描きたち」の舞台を観たからです。暗い穴倉に潜って働きづめの炭鉱夫たちが、こぞって絵筆をとる。リー・ホール脚本のドラマは痛快で清々しくもあり、現代に生きる我々に多くのことを強く語りかけてきました。劇のモデルとなった働く男たちの画家集団“アシントン・グループ”にも、大いに興味をかきたてられたというわけです。グループが誕生した1934年といえば第二次大戦前。労働者への福利厚生などまだまだ推して知るべしですが、炭鉱町のアシントンはわりと活発で、さまざまな文化講座やスポーツクラブ、音楽サークルなどが開講されていました。美術鑑賞講座もその一つですが、生粋の炭鉱夫たちは生まれてこのかた絵画なんて見たこともないわけです。戯曲の第一幕でも授業は立ち往生。どうしたものかと頭をひねった講師のライアン先生が思いついたのが「自分たちで描いてみたら?」。肉体的にも経済的にも困難な生活状況のなかで、彼らは絵筆をにぎり独自の作品群を生み出していきます。研究者で画家でもあるライアン先生は、描く対象を身近な生活の中に絞り、自分が本当に好きな事柄やモノや人物を、技巧に走ることなく描いてみることを勧めました。出来上がってみれば、技術的には稚拙かもしれません。でも鉱山での仕事や寒風吹きすさぶ街角の情景をとらえた絵からは、彼ら自身の飾らない心と創造への喜びが伝わってきます。これらの作品は舞台上でもご覧いただくつもりです。 また、お互いの作品を彼らは真摯な気持ちで批評しあってもいます。それは労働現場での上下関係を超えた自由な精神の場として、グループの結束と人間らしい友情を強めていったように思いますね。
劇団民藝「炭鉱の絵描きたち」
2016年6月15日(水)~26日(日)
東京都 紀伊國屋サザンシアター
作:リー・ホール
訳:丹野郁弓
演出:兒玉庸策
出演:安田正利、
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- 炭鉱の絵描きたち|2016年上演作品|劇団民藝公式サイト
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【炭鉱の絵描きたち】
ニュースサイト「ナタリー」の「ステージナタリー」で本作が紹介されました。演出家・兒玉庸策の談話も全文お読みいただけます。
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