hydeの咆哮で幕を開けた誕生祭
ラルクの東京ドームライブ開催は、2022年5月にバンドの結成30周年を記念して行われた「30th L'Anniversary LIVE」以来約3年ぶり。今回の公演は1月29日に誕生日を迎えるhyde(Vo)が自らの“誕生祭”として「今hyde自身がかっこいいと思うラルク」をテーマにしたプロデュースを手がけた。ラルクがメンバーの誕生祭ライブを行ったのは30年のキャリアの中で今回が初。2日間合わせて約10万人の観客が集結し、hydeに祝福を送った。この記事では初日18日公演の模様をレポートする。
バンドの公式キャラクター・ルシエルちゃんが務めた開演直前の影アナウンスでは、「今日はパパの誕生祭に来てくれてありがとう!」と生みの親を祝ってファンの歓声を浴びる。和やかな演出に続いて開演時刻を迎え、ステージ後方にそびえる巨大なLEDスクリーンではガラッと雰囲気を変えるオープニング映像が流れた。目の前のガラスに頭を打ちつけて割り、この世に現れたhydeは力強い咆哮ののちにろうそくの火を吹き消す。そして「Happy birthday, hyde!」という低い声が轟くと、ドーム中から祝福の大歓声が起こった。
レーザー光線が明滅する中でメンバーがステージに現れ、最初に披露されたのは「DRINK IT DOWN」。この日の主役hydeは鋭い視線を飛ばしながら鮮烈な歌声を響かせる。さらに妖艶なアンサンブルが印象的な「X X X」、そして「CHASE」といった楽曲をダイナミックな映像演出に乗せて連投。しかし「CHASE」の大サビでは、カメラ目線をキメながら歌っていたhydeが歌詞を飛ばして「間違えた……」とステージに倒れ込み、傍らで演奏していたtetsuya(B)も思わず笑顔に。hydeは仕切り直しとばかりに「ラルク来たぜ、東京! 楽しもうぜ!」とドームに呼びかけ、改めてクールなパフォーマンスを繰り広げた。
歌詞間違いにkenからのアドバイスは
「fate」「花葬」でken(G)が幻想的なギターをたっぷりと聴かせたあとは、不穏な鐘の音に乗せて緑色のレーザー光線がゆっくりとドーム内を行き来する。ここでkenが「浸食 -lose control-」のイントロを奏でると、客席からは喜びの声が起こった。yukihiro(Dr)を中心にアグレッシブに変拍子を刻む4人の姿がドローンカメラを通じてスクリーンに大きく映し出される。ここからは「EVERLASTING」「forbidden lover」と、よりダークかつ幻想的な世界観のナンバーを連投し、観客を深淵へと引き込んでいった。「接吻」の間奏ではkenがエモーショナルなソロを奏でながら花道を歩きセンターステージへ。ファンとのコミュニケーションを楽しみつつのパフォーマンスを繰り広げた。
kenがメインステージへと戻った次の瞬間、ディストーションが効いた激しいベース音が会場に鳴り響き、tetsuyaがセンターステージへと向かいながらベースソロを繰り広げた。センターステージでもベースソロが繰り広げられ轟音と大歓声が広がったあと、今度は優美な高音の和音が会場を包み、それはやがて「In the Air」のイントロへとつながった。さらなる大歓声の中、衣装を変えて登場したhydeは、旗が付いたマイクスタンドを高らかに掲げ、ファンが手にした自動制御型ペンライトのL'ライトが作り出す空色の中に歌声を届け、曲の世界を彩った。
ここまで10曲を駆け抜けたあと、hydeはようやくこの日初めてのMCへ。自身の選曲について「どうですか? ずっと暗い曲が続いて(笑)。これからちょっとだけ明るくなりますけどね、歌詞は相変わらずな感じですね(笑)」と観客にユーモラスに呼びかけて笑いを誘う。一方、冒頭の「CHASE」でのミスを「いきなり間違えて……どうしようかと思ったよ、kenちゃん」と痛恨の表情で振り返ると、kenやtetsuya、yukihiroも思わず笑顔に。kenは「間違えた言わんかったらわからへんかったかもと思うんよね?」と思わず自白してしまったhydeにアドバイスし「そうかー、ダメだな……(笑)ちょっと立ち直れなかった」と苦笑させた。
「東京、楽しもうぜ! 祝ってくれ!」というhydeの言葉、そして「the Fourth Avenue Café」でライブが再開し、観客のハンドクラップとhydeの妖艶な歌声が溶け合った「metropolis」へと続く。「get out from the shell」「HONEY」と疾走感に満ちたロックチューンを届けたあとは「いばらの涙」の情熱的なアンサンブルをドームに響かせた。yukihiroのパワフルなスネアの連打から「Shout at the Devil」が始まると、場内は再び狂乱状態へ突入。マイクスタンドをステージに叩きつけたhydeとken、tetsuyaが去ったのち、yukihiroは力強いドラムパフォーマンスを披露して大歓声を浴びた。
yukihiroが贈った赤い花束
インターバルを経て、メインステージには赤いバラの花束を抱えたyukihiroが現れて観客を騒然とさせた。すさまじいどよめきに包まれながらyukihiroは花道を歩いていき、センターステージに用意されたドラムセットの前に花束を置く。yukihiroがゆったりとしたリズムを刻む中でhyde、ken、tetsuyaも登場。hydeはyukihiroが置いた花束を手に取ると、「真実と幻想と」をじっくりと歌い上げた。
hydeはラルク結成からの約34年を振り返り「考え方も生き方もどんどん変わり、そのときどきの歌詞を書いてきました。『あのときこういうことを思ってたな、こういう考え方をしてたな』というのが今日も歌っていて浮かぶし、皆さんも思ってると思います」と語る。そして「僕らの人生、皆さんの人生はいつ終わるかわからないです。でもだからこそ愛らしいこの世界だと思います」と言葉をつなげた。ここで「最後を考えなければ大切なことに気付かないんじゃないかと、そう思い詰めていた頃に次の曲の歌詞を書きました」というhydeが紹介した曲は「ALONE EN LA VIDA」。ラテンのサウンドに乗せて哀切なメッセージを歌い、観客を感動に導いた。
「このままクールにやりたいところなんですけど、ここからエンタテインメントしていきたいと思います」と話したhydeは、その後の演出を懇切丁寧に説明し観客を巻き込んだリハーサルまで敢行。準備万端のオーディエンスは「Happy Birthday to You」の大合唱に続き、準備していたクラッカーを鳴らした。5万人の祝福を受けたhydeは「ありがとう、うれしい。こんなことが人生であるとは思いもしませんでした。この光景は忘れないようにしたいです」と穏やかな笑顔を浮かべ、「心を込めて歌いたいと思います」と言葉を添えて「叙情詩」のイントロのアカペラを高らかに響かせた。
ラストを飾ったtetsuyaからのプレゼント
感動的なパフォーマンスのあと、メンバーたちは誕生日プレゼントにまつわる和やかなトークを展開。tetsuyaは過去のうれしかったプレゼントを「ここでは言われへんけど、この世にないものを作ってもらったことがある」と説明。一方、yukihiroにはhydeが「もし動物を飼うなら、毒グモかうさちゃんのどっち?」と質問。マイクを握ったyukihiroが「いや、うさちゃんでしょ」とかわいらしいワードをチョイスすると客席からは大歓声が起こり、hydeも満足げに「いただきました!」と笑顔を見せた。
その後は1月15日にCDリリースしたばかりの最新曲「YOU GOTTA RUN」をライブで初披露。客席には巨大なバルーンがいくつも投げ込まれ、華やかなサウンドを彩った。さらに「Caress of Venus」「Link」とライブに欠かせないナンバーを演奏したのち、hydeは「こんな眺めを見られることなんてなかなかないと思います」とドームを見渡し、祝福してくれたメンバーやスタッフ、ファンへの感謝を改めて述べる。そして「皆さん1人ひとりが生まれてきてくれて、ラルクを好きになってくれて、ここまで足を運んでくれた。それが僕にとって一番のプレゼントです」と語り、5万人の熱い拍手を浴びた。
そんなhydeの、そしてメンバーの思いを表したラストナンバーは「あなた」。センターステージにひざまずいたhydeは、5万人の大合唱に目を閉じて耳を澄ませた。アウトロではkenが「Happy Birthday to You」のメロディを奏で、5万人による盛大なバースデーパーティのエンディングを飾った。hydeがステージ両翼の花道を往復してファンに挨拶していると、tetsuyaが花束と「リアルなのを探した」というレッサーパンダのぬいぐるみを手にステージへ現れ、「おめでとう!」と盟友を改めて祝福。最後にhydeは「その気持ちが最高のプレゼントです。ありがとうございました」と目を潤ませながらオーディエンスに感謝し、手を振りながらステージを下りていった。
今回のライブの模様は4月にWOWOWで放送されることが決定。詳しい放送日等は後日発表される。
セットリスト
「L'Arc-en-Ciel LIVE 2025 hyde BIRTHDAY CELEBRATION -hyde誕生祭-」2025年1月18日 東京ドーム
01. DRINK IT DOWN
02. X X X
03. CHASE
04. fate
05. 花葬
06. 浸食 -lose control-
07. EVERLASTING
08. forbidden lover
09. 接吻
10. In the Air
11. the Fourth Avenue Café
12. metropolis
13. get out from the shell
14. HONEY
15. いばらの涙
16. Shout at the Devil
17. 真実と幻想と
18. ALONE EN LA VIDA
19. 叙情詩
20. YOU GOTTA RUN
21. Caress of Venus
22. Link
23. あなた
Hiro|エバンジェリスト|ITコーディネータ @hiro_endo
【ライブレポート】ラルクhyde誕生祭、東京ドーム2DAYSで10万人が祝福「好きになってくれたことが一番のプレゼント」(写真24枚) https://t.co/S7SNPzX8oP