峯田和伸インタビュー|銀杏BOYZと共鳴する「ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。」

峯田和伸(銀杏BOYZ)と若葉竜也がダブル主演を務める映画「ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。」が劇場公開された。

「ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。」は写真家・地引雄一による自伝的エッセイを宮藤官九郎脚本、田口トモロヲ監督で実写化した“音楽青春映画”。1978年、偶然ラジオから流れたSex Pistolsに突き動かされた青年カメラマンのユーイチが田舎から上京して、バンド・TOKAGEを率いるモモと出会い、やがて“東京ロッカーズ”と呼ばれるムーブメントを巻き起こしていく様子が描かれる。

田口監督、宮藤脚本の映画「アイデン&ティティ」(2003年公開)の主演を務め、俳優デビューを果たした峯田。23年ぶりに田口と宮藤のタッグによる作品に出演する彼は今回、地引雄一がモデルとなった響ユーイチを演じる。モモ役の若葉とは初共演となった峯田だが、彼との撮影は大きな刺激になったという。音楽ナタリーのインタビューに峯田が単独で登場するのは2009年11月のシングル「ボーイズ・オン・ザ・ラン」特集以来、約16年ぶり。「ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。」への参加で彼が得たものとは。また、銀杏BOYZの今後の動きについても語ってくれた。

取材・文 / 小野島大撮影 / 森好弘

「アイデン」から23年、みんなを包み込むようなポジションに

──峯田さんは過去にバンドマン役で何度か映画出演されていますが、「ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。」ではバンドマンたちを見守るカメラマン・ユーイチ役です。田口トモロヲ監督から本作への出演オファーがあったとき、どう思われました?

地引さん役で出てほしいと言われてドキッとしたんです。バンドマンの役じゃないんだって。でもトモロヲさんにはきっとその配役に勝算があって、うまくいくんだろうなと思いましたね。トモロヲさんからは「いつも通りでお願いします」と言われたので、カメラマン役だから今までとは違う感じでやろう、みたいな考えはあんまりなかったですね。

──田口監督、宮藤官九郎さん脚本、峯田さん主演という座組は2003年公開の映画「アイデン&ティティ」以来ですが、あのときは峯田さん演じるバンドマンが、理想と現実のギャップに悩むお話でした。今回はその“悩んでいるバンドマン”を見守る役でしたね。

そこはやはり違いを感じました。僕は40代後半。そこに「アイデン&ティティ」の頃の僕のような20代、30代の若い人……若葉(竜也)くんとか(仲野)太賀くんとか間宮(祥太朗)くんみたいな人たちが出演して、自分はみんなを包み込むような、そういうポジションになってきたんだなと思いました。

峯田和伸

まるでセッションのようだった若葉竜也との撮影

──バンドマンとして、若葉さん演じるTOKAGEのモモの悩みや情熱に共感する部分はありましたか?

悩むモモにユーイチが「新曲、きっと売れるよ」って話しかけるシーンがあるんです。するとモモが気色ばんで「何言ってんだ! 売れるとか売れないとか、そんなことのために俺らはやってるんじゃない!」と言い返す。あれはかつて僕が自分のマネージャーに何度も言ってきたことでした。マネージャーはきっと「いい曲ができたから、売れたらいいね」と純粋な気持ちで言ってくれてるんだけど、僕は「売れたくて音楽をやっているわけじゃないのに、なんでお前がそんなこと言うんだよ」って怒っちゃうんですよ。台本を読んだときも、完成した映画を観たときも「あ、これいつも言ってるな」「俺も怒ったことあるな」と身に染みました。

──私も一番グッときたのはあのシーンです。若葉さんも「最初は淡々とやるつもりだったけど、ついつい気持ちが入りすぎて大声になっちゃった」とおっしゃっていました。

そういうシーンがほかにもいくつかありました。台本を読んで、「たぶんこういう感じなんだろうな」と想像しながら現場に入っていざ撮ってみたら、まったく違う感じになっちゃった、みたいな。モモの部屋にユーイチが来てTOKAGEのロンドンライブのカセット音源を一緒に聴くシーンがあるんですけど、あそこは特に変わりましたね。もともとはあんなに情感たっぷりなシーンじゃなくて、もっとあっさり終わるはずだったんですけど。

──監督からそういう指示があったわけではなくて?

若葉くんと僕があの空気を作っちゃった感じですね。2人の演技を見てから監督が「もっと感情たっぷりでいいよ。時間を気にせずに、その感じでもう1回やってみようか」って言ってくれたんです。

──その場の空気でアレンジが変わるなんてことは、音楽のライブの現場ではよくありますよね。映画でもたびたびあるものなんですか?

映画の撮影現場ではあんまりないと思います。「ストリート・キングダム」がそれを許してくれる現場だったというだけ。それは監督がトモロヲさんだからっていうのもあるし、相手が若葉くんだったからというのもあると思います。

峯田和伸

──事前に若葉さんとそういう話をしたわけじゃなくて、その場のお芝居の成り行きでそうなっていったと。

「ストリート・キングダム」の場合、現場に入って、まず役者だけでリハーサルをやって、そこから監督を交えて10回ぐらいリハーサルをやってから本番に入るんですよ。今回は3回目ぐらいから2人の雰囲気が変わって、たぶん監督もカメラマンもそれに気付いたんでしょうね。どんどん2人の顔のアップのシーンが増えていった。若葉くんとのシーンではそういう場面が何回かありましたね。監督も現場に入る前からある程度カメラ割りとかカット割りは決めてきてると思うんですけど、役者の動きを見ていろいろ変えていった。カメラマンの鍋島(淳裕)さんが、監督の撮りたいように撮ることを優先する方だったこともあり、それが許された現場だったんですよね。僕としてはすごく動きやすかったし、遠慮せずお芝居ができた感じがありました。

──10回もリハーサルを繰り返すと慣れてきてダレそうな気もしますけど、むしろどんどん気持ちが高まっていく感じがある。

そうです。セリフはもう決まってるので、言わなくちゃいけない言葉は外さない。そのルールの中で、若葉くんはテイクが変わると、まったく違う表情で同じセリフを言うんです。それを受けると自分も次のセリフの言い方が変わってくる。僕は演技経験が多いわけじゃないですけど、若葉くんみたいな俳優にはあまり出会ってこなくて。若葉くんとは、音楽のセッションをするみたいにお芝居ができてやりやすいです。