「Twinkle」「Nightmare」2つの幕開け
7月に結成5周年を迎えた今年、全国ホールツアー開催に2作のコンセプトEPリリース、2度目のアリーナワンマン成功と、精力的な活動を行ってきたげんじぶ。「GNJB Christmas Live 2024 Twinkle / Nightmare」は、そんな2024年を締めくくるワンマン公演で、「Twinkle」「Nightmare」と昼夜で異なるコンセプトを持つステージが届けられた。この記事では、23日の東京公演の模様をレポートする。
「Twinkle」公演のオープニングを飾ったのは、ポピュラーなクリスマスキャロルと同じタイトルを持つ「Joy to the world」。ブラスとピアノが踊る洒脱なブルーノートの旋律で華やかにパーティの幕を開け、杢代和人は「会いたかったぜ東京! 最高の1日にしよう」と観測者(原因は自分にある。ファンの呼称)に語りかける。7人が繰り出す軽やかなステップにフロアの熱気も急上昇する中、1曲目から気合い十分にフェイクを効かせる武藤潤は鮮やかなハイキックでも観る者を圧倒した。華やかなムードを加速させるべく、2曲目の「ギミギミラブ」では小泉光咲が「皆さん~、Twinkleっぽくクラップお願いします!」と観客にリクエスト。突然の高難度な要求に大倉空人が「どういうこと!?(笑)」と思わず声を上げるも、観測者はリズミカルな手拍子で小泉のオーダーに対応する。サビで思い思いの“口ハート”を見せたり、曲の節々でアイコンタクトを取りながらステージを楽しむ7人。その笑顔が会場全体へと伝播していく晴れやかな雰囲気が醸成される中、メンバーは「ネバーエンドロール」でも表情豊かに、ほろ苦くも甘酸っぱい2人の思い出を歌い描いていく。曲中には、「好きだよ」というフレーズに合わせて大倉が桜木雅哉の頬に唇を寄せるアドリブが黄色い歓声を誘うシーンも。そしてリーダーの吉澤要人は、ここで「今日は僕たちと一緒に最高のクリスマスを過ごしましょう」と観測者を歓迎し「夢に唄えば」へと導く。ストーリー性のある華やかなサウンドとミュージカルのように雄弁なパフォーマンスで、7人はホリデーシーズンにふさわしいロマンチックな世界観を描き出した。
きらめくように楽しいひとときが届けられた「Twinkle」に対し、「Nightmare」公演のオープニングブロックはがらりと表情を変えたものに。幕開けの曲にげんじぶのウインターソング「スノウダンス」を選んだ7人は、淡々と進んでいくビートの上、涼やかな中にも感情の機微がにじむボーカルで“君のいない”冬景色を浮かび上がらせた。ソロにペア、群舞と次々に組み合わせを変えながら舞う巧みなダンスでも魅了したこの曲を終えると、吉澤がセンターに躍り出て「J*O*K*E*R」へ。危険な世界観と華やなムードが共存するこの曲で、7人は息の合ったジャズステップを踏んで観測者を惹き付ける。続く「犬と猫とミルクにシュガー」は、ひさびさの披露となったヒップホップナンバー。ダウナーなフロウでビートに乗るラップパートと、躍動的な歌とダンスを見せるドロップパートの鮮やかなコントラストで圧倒し、オーディエンスの体温を上昇させた7人。すると今度は、突如鳴り響いたパイプオルガンの不協和音が空間を支配する。イントロのサウンドで観測者が沸き立った「Mania」でメンバーが見せたのは、曲の世界観にのめり込みながら“狂気の愛”を表現する迫真のパフォーマンス。2番のサビで1人躍動する長野凌大が自らの表現力を最大限まで高めるように、ドレープが広がる衣装の裾を操りながらダイナミックに舞う姿は美しく、また桜木や大倉がカメラに投げる挑発的な視線も観測者の悲鳴を誘っていた。
犬だらけ!奇跡のプレゼント交換会
「くるみ割り人形」に乗せ、ビジョンにメンバークレジットとライブタイトルが浮かび上がるとライブは次のシーンへ。ここで7人は、最新EP「テトラヘドロン」収録のラブバラード「小説ならば」を初披露した。ステージにはツリーや特大のテディベアが飾られた暖炉の部屋が再現され、窓の外には静かに降る雪。そして部屋のあちこちに佇むメンバーは、愛しい人との戻らない時間を思う愛惜を丁寧に歌い紡いでいく。諦めのような笑みを浮かべたり、声色に苦さを含ませたり、それぞれが豊かな表現を見せる中、「Nightmare」公演では感情があふれ出した桜木が涙で歌声に詰まってしまう場面がオーディエンスの胸を深く打った。“ここにはいないあなた”を思う歌「ダイヤモンドリリー」では、ひんやりとしたサウンドに小泉の澄んだ歌声が溶け合い、オーディエンスも彼らの歌声に静かに耳を傾ける。7人が丁寧に織り重ねてきたセンチメンタルなムードは、「幽かな夜の夢」で一気に加速。疾走感に満ちた晴れやかなサウンドに乗せてほろ苦い思いを歌うメンバーのパフォーマンスを、観測者は色とりどりのペンライトの光で彩っていた。
MCタイムには、「プレゼント交換会」というクリスマスライブらしい企画で盛り上がったげんじぶメンバー。「Twinkleっぽいもの」「Nightmareっぽいもの」と、公演ごとにテーマを決めて購入してきたプレゼントを、7人はくじ引き形式で贈り合うことに。「Twinkle」公演で最初にクジを引いた桜木が吉澤からのプレゼント・可動式の子犬のぬいぐるみを引き当てると、長野は桜木が選んだミニサイズの柴犬のぬいぐるみ、大倉は杢代が選んだパグと黒豆柴のミドルサイズのぬいぐるみ、吉澤は武藤が選んだビッグサイズの柴犬のぬいぐるみを引き当てる。長野、大倉、吉澤のぬいぐるみはサイズ違いの同じキャラクターとあり、この奇跡に会場は大盛り上がり。メンバーの思わぬチームワークを目の当たりにした吉澤は「げんじぶの“Twinkle”は、犬なの……?」と笑いながらつぶやいた。そして「Nightmareっぽいもの」を持ち寄って行われた夜公演のプレゼント交換会では、袋の大きさを見定め「光咲のプレゼントをください!」とクジを引いた武藤が見事小泉のプレゼントをゲット。その中身はブタの顔の特大クッションで、武藤は「やったー!」と大喜びしながらクッションを抱きしめていた。
スペシャルユニット登場、そして“深淵”へ
桜木が「次は皆さんに曲をプレゼントしたいなって。素敵な思い出を作っていきましょう!」と観測者に呼びかけてライブを進めると、ここからはクリスマスライブだけのスペシャルユニットで2曲を届けたげんじぶ。先攻を取った大倉、武藤、吉澤はハイエナジーなロックチューン「Lion」で会場の空気を瞬時に熱く塗り替えてみせる。真っ赤に染まったステージの上段に現れた3人は、スタンドマイクをダイナミックに操りながらエッジーなボーカルとラップの応酬を披露。勢いのままに階段を降りると、今度はスモークと風の演出の中でオーディエンスのすぐそばまで乗り出し歌声を響かせる。まるでブリザードの中で歌い叫んでいるような姿で、3人は楽曲の新たな解釈を見せた。一方、小泉、桜木、長野、杢代の4人が見せたのは「美しい人」の新たなパフォーマンス。これまでのステージでは7人それぞれがチェアダンスを披露していたが、この日4人は1つのロングソファに腰掛け、これまでよりも濃密な絡みで観測者を翻弄する。顔を寄せ合って歌う長野と杢代、背後から長野を抱きしめる桜木、杢代とペアになって踊る小泉……。目まぐるしく移り変わっていくポージングと艶やかに響く歌声を、観測者は息を呑むように見つめていた。
「Twinkle」公演では赤と黒のカジュアルな衣装、「Nightmare」公演では緑と黒のシックな衣装に7人が着替え、「貴方に溺れて、僕は潤んで。」で始まったライブ後半。勢いよく切り込んでいく大倉のラップがフロアのボルテージを引き上げた「ケイカクドヲリ」では、ラウドロック調のハードなサウンドに全身で躍動するメンバーの気迫と“小泉ボルケーノ”とメンバーから称される小泉の荒々しく力強いロングトーン、武藤の熱いフェイクが聴く者の心を熱くする。そして、このシーンではライブのテーマ曲として制作された最新ナンバー「アビスと清らな銀世界」が初披露された。大倉が「曲調はNightmareに、振付はTwinkleに」と語った通り、不穏なストリングスがダークな雰囲気を醸し出すサウンドときらめく光を放つようなメンバーのパフォーマンスが渾然一体となるこの楽曲の世界観は“クリスマスソング”と形容するにはアバンギャルドすぎるもの。観る者を“げんじぶらしさ”の深淵へと引き入れるような精緻かつダイナミックな表現で魅了した7人は、曲を終えるなり「7人であんなにキラキラと踊りながら歌うことないじゃん。だからすごい新鮮でした!」と充足感をにじませた。
観測者とは“素敵な夢”を
「今年もありがとうございました、そして来年もよろしくの気持ちを込めて、ここから盛り上げていきたいと思います」。長野が告げて7人が横1列のポジションに着くと「原因は自分にある。」で「Twinkle」公演はクライマックスへと突き進んでいく。武藤の歌声に合わせて7人と観測者がテンポよく両腕を振り上げる、げんじぶのライブには欠かせない一体感が広がると、「P-P-P-PERO」ではバンドネオンの軽快なリズムに歌声を弾ませ、シュールポップな世界観を描き出した7人。曲中に登場する「金平糖の精の踊り」のサンプリングや操り人形のような7人の仕草、武藤が指揮を執る合唱風のフォーメーションもホリデーシーズンのムードを盛り上げていた。すっかりライブ定番曲となった「推論的に宇宙人」では、大倉の「声出していきましょう!」という呼びかけに応じた観測者が息の合った大きなコールを飛ばし、7人が見せる“宇宙人”との不可思議なラブストーリーをにぎやかに盛り上げた。7人と観測者が楽しく笑顔を共有したラストシーンを締めくくったのは、「テトラへドロン」収録のスカナンバー「Go to the Moon」。軽快な裏打ちのリズムに合わせ、勢いよくタオルを回して大きな一体感を形成したメンバーと観測者。長野は「来年も一緒にクリスマス過ごしたいです。これからもよろしく!」と笑顔で訴えてステージをあとにした。
一方、「Nightmare」公演のライブ後半戦は、「原因は自分にある。【別解】」の荘厳なイントロで幕を開ける。デビュー曲「原因は自分にある。」のニューバージョンとして今年リリースされたこの曲で、7人は長野がMCで語った「ここからのライブも、昔の自分たちに挑戦するつもりで真摯にパフォーマンスに向き合っていきたい」という言葉を証明するような力強いパフォーマンスを示した。「テトラヘドロン」収録の「Operation Ego」では楽曲のテーマである“支配”とその抑圧に抗う思いを、緻密かつダイナミックな感情表現で見せた7人。ポエトリーリーディングを取り入れた「灼けゆく青」で流れるような言葉のリレーを展開し、真摯に訴えかける語り口でオーディエンスを熱くさせたメンバーが曲を終え暗闇の中に姿を消すと、明転してファンの前に現れた彼らの目元には銀縁のメガネが。本編ラストを飾ったロックナンバー「遊戯的反逆ノススメ」を、同曲のMVで演じた“天才ハッカー集団”のメガネ姿で歌い踊り、アッパーなサウンドとアグレッシブなパフォーマンスで駆け抜けてみせる。曲中のダンスブレイクで華麗なダブルターンを決めた吉澤がセンターでクールにメガネのブリッジに手をかけたラストシーン。曲を終えるなり表情を緩ませたメンバーは、何度も観測者に手を振ってステージ袖へと姿を消した。
観測者の熱い声に応じて始まったアンコールでは「原因は君にもある。」が届けられ、7人と観測者は「ららら……」のシンガロングで熱狂を共有。杢代は自身のセリフパートを「観測者、メリークリスマース!」とアレンジし、“指ハート”でファンに思いを伝えた。ライブ中のMCで2024年を振り返ったリーダー吉澤が語っていたのは「今年を一文字で表すと、“絆”だったなって」という言葉。7人が絆を深めた今年最後のライブを終え、杢代は「2025年もみんなで最高の1年にしよう!」と約束する。そしてメンバー最年長の武藤は「世界観を感じられたNightmareでしたが、観測者とは“素敵な夢”を見て過ごしたい! 素敵なクリスマスを!」と言葉を贈り、「以上、原因は自分にある。でした!」とライブを締めくくった。メンバーが順に舞台袖へと退場していく中、両公演ともラストメッセージを任されたのは吉澤。彼は「Twinkle」公演では「原因は自分にある。はワンちゃん大好きグループです!」と、「Nightmare」公演では「右も左も下も上も、まとめて全員……愛してる!」と思いを伝え、ステージをあとにした。
セットリスト
「GNJB Christmas Live 2024 Twinkle / Nightmare」2024年12月23日 Zepp DiverCity(TOKYO)
Twinkle
01. Joy to the world
02. ギミギミラブ
03. ネバーエンドロール
04. 夢に唄えば
05. 小説ならば
06. ダイヤモンドリリー
07. 幽かな夜の夢
08. Lion / 大倉空人、武藤潤、吉澤要人
09. 美しい人 / 小泉光咲、桜木雅哉、長野凌大、杢代和人
10. 貴方に溺れて、僕は潤んで。
11. ケイカクドヲリ
12. アビスと清らな銀世界
13. 原因は自分にある。
14. P-P-P-PERO
15. 推論的に宇宙人
16. Go to the Moon
<アンコール>
17. 原因は君にもある。
Nightmare
01. スノウダンス
02. J*O*K*E*R
03. 犬と猫とミルクにシュガー
04. Mania
05. 小説ならば
06. ダイヤモンドリリー
07. 幽かな夜の夢
08. Lion / 大倉空人、武藤潤、吉澤要人
09. 美しい人 / 小泉光咲、桜木雅哉、長野凌大、杢代和人
10. 貴方に溺れて、僕は潤んで。
11. ケイカクドヲリ
12. アビスと清らな銀世界
13. 原因は自分にある。【別解】
14. Operation Ego
15. 灼けゆく青
16. 遊戯的反逆ノススメ
<アンコール>
17. 原因は君にもある。
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「観測者とは素敵な夢を見ていたい」げんじぶが2つの顔見せたXmas、“犬の奇跡”で絆の1年締めくくる https://t.co/qnL72n5Hpz