卯月ちゃんを抱っこする桂佑(DEVILOOF)。

猫と音楽家の二重唱 第3回 [バックナンバー]

デスコアバンドDEVILOOFボーカル桂佑の“日常”を癒すはっちゃん&うっちゃん

「こういう音楽をやっているから猫に癒しを求めているのかもしれない」

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猫を吸って制作の行き詰まり解消

それまで熱を込めて猫愛を語っていた桂佑の言葉が淀んだのは、こんな質問を投げかけたときだった──猫ちゃんたちの存在が歌詞や音作りに反映されることはありますか?

「うーん、あまりないかもしれない(笑)。励ましてくれるというぐらいですかね。制作で行き詰まっていたり、ストレスが溜まっているとき、猫を吸うことはあります」

じっとカメラを見つめる卯月ちゃんと花月ちゃん。

じっとカメラを見つめる卯月ちゃんと花月ちゃん。

では、質問を変えよう。DEVILOOFの強烈な世界観は普段どのように生まれているのだろうか。何かをモチーフにしているのだろうか?

「僕は映画が好きでして、作品からアイデアをもらって書くことが多いですね。基本的にどのジャンルの映画も観ますけど、中でもサスペンスやミステリー、ホラー、SFが多いかもしれない。クリストファー・ノーランやデヴィッド・フィンチャー、あとデヴィッド・リンチの作品も好きです」

最新シングル「因習」のイメージの元となったのは「村ホラー」。桂佑は「日本の悪き風習を発展させて、人喰いのイメージをもとに書きました」と話す。浅野忠信が特別出演したミュージックビデオは、まさにその世界観をビジュアライズした強烈な仕上がりだ。そこには見せ物小屋など日本的なホラー映画のイメージも重ね合わされているが、こうした日本的なエッセンスは2019年のアルバム「鬼」あたりから音楽面や衣装などに反映されてきた。こうした和テイストを導入するきっかけは何だったのだろうか?

DEVILOOF「因習」MV

「『鬼』を作っていた頃、バンドの中で『和装のテイストを衣装に取り入れるのはどうだろう?』というアイデアが出てきたんですよ。最初はそれだけだったんですけど、だったら曲にも和のテイストを入れても面白いんじゃないかと思ったんです。なんで和装を取り入れようと思ったのか、あまり覚えてないんですが……(メイク中のメンバーに向かって)覚えてる?」

「『鬼』のとき? 海外のバンドの真似事をするんじゃなくて、日本で生まれて日本でバンドをやっているからこそ、自分たちのオリジナリティを追求する必要はあるんじゃないかと思ったんです」

「そういうことらしいです(笑)」

DEVILOOFで表現する“非日常”と、猫たちのいる“日常”の間で

DEVILOOFはこれまでライブパフォーマンスやMVを通じて徹底的に“非日常“を追求してきた。メイクや衣装も“非日常”を生み出すための演出のひとつであり、オーディエンスはひとときの“非日常”を求めてDEVILOOFのライブに足を運ぶ。そして、桂佑にとってそうした“非日常“とは、猫たちとの“日常“の真逆にあるものでもある。

「ライブってひとつのショーだと思っていて、自分らはそこで“大きなもの”を表現したいんです。日常があるからこそ“非日常”に振り切れるんだと思うし、逆に言えば、こういう音楽をやっているからこそ猫に癒しを求めているのかもしれない」

世界中のメタラーが猫を愛する理由の1つがここにあるのではないだろうか。ライブという圧倒的な“非日常”と、猫がゴロンと転がる“日常”。そのコントラストを愛し、だからこそ互いを必要としている。“非日常”を生み出すためには“日常”が必要だし、“日常”を生きるために“非日常”を求めるのだ。桂佑もまた「まったく別の世界だからこそ、猫をモチーフにした曲を作ろうという発想にもならないのかもしれないですね」と話す。

桂佑の癒し、卯月ちゃんと花月ちゃん。

桂佑の癒し、卯月ちゃんと花月ちゃん。

愛猫家として知られるJudas Priestのロブ・ハルフォードは、海外メディアでのインタビューで「メタルコミュニティで猫が好かれている理由は、彼らが非常に独立心が強いからだと思う」という持論を語っている。確かに猫たちは好きなように生き、好きなように遊ぶ。ロブ・ハルフォードもまた、猫たちの自由奔放な姿に密かに憧れを持っているのかもしれない。

なお、今回の取材にあたって桂佑が「猫と一緒に聴きたいプレイリスト」を選曲してくれたのだが、送られてきたリンクを開いてびっくり、なんとトータル111曲、7時間56分の大長編である。ただし、すべて桂佑の好きな曲のみが選ばれており、その意味では桂佑の音楽的ルーツが見えるプレイリストとも言えそうだ。

桂佑(DEVILOOF )猫コラムプレイリスト

「最初はクラシックだけにしようかと思ったんですけど、それはそれでバランスがよくないかなと思って。かといって自分が興味のない音楽は入れていないし、全部好きな曲ばかりです。ただ、メタルやダンスミュージックなど低音のうるさいものは省きました。低音が好きじゃない猫も多いと思うので……」

フルメイクで卯月ちゃんと花月ちゃんと戯れる桂佑。

フルメイクで卯月ちゃんと花月ちゃんと戯れる桂佑。

やはりここでも猫ファーストなのである。「今頃コタツで寝てると思います(笑)」と自宅でくつろぐ花月ちゃんと卯月ちゃんのことを思い出しながら、桂佑は満員のオーディエンスが待つ渋谷CLUB QUATTROのステージへと飛び出していったのだった。

プロフィール

桂佑(ケイスケ)

香川県出身、12月30日生まれ。2015年に結成されたデスコアバンドDEVILOOFのボーカル。既存のデスボイス、オリジナルのデスボイスを豊富に扱うことから「メタル界の技のデパート」の異名を持つ。強烈な見た目とは相反して猫をこよなく愛し、自宅で2匹の保護猫を飼う愛猫家。

DEVILOOFオフィシャルウェブサイト
DEVILOOF 桂佑(@keisuke_dvlf)|X
桂佑(@keisuke_keisuke_neko)|Instagram写真と動画

大石始

地域と風土と音楽をテーマとする文筆家。主な著書・編著書に「異界にふれる」「南洋のソングライン」「盆踊りの戦後史」「奥東京人に会いに行く」「ニッポンのマツリズム」「大韓ロック探訪記」「GLOCAL BEATS」など。NHK-FM「エイジアン・ミュージック・ニュー・ヴァイブズ」出演中。2匹の保護猫と東京都下で生活中。

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🐈‍⬛アーティストと猫の関係を探るコラム🐈
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