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細野ゼミ 補講4コマ目 [バックナンバー]

細野さんに聞きたい、あの曲この曲(後編)

安部勇磨が根掘り葉掘り尋ねる、“人間”細野晴臣の習性

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細野晴臣が生み出してきた作品やリスナー遍歴を通じてそのキャリアを改めて掘り下げるべく、さまざまなジャンルについて探求する「細野ゼミ」。ゼミ生として参加するのは、氏を敬愛してやまない安部勇磨(never young beach)とハマ・オカモト(OKAMOTO'S)という同世代アーティスト2人だ。

細野の活動55周年に際して、今回設けたテーマは「細野さんに聞きたい、あの曲のこと、この曲のこと」。ゼミ生の2人に細野がこれまで関わってきた楽曲の中からいくつか作品を挙げてもらい、それぞれの視点から細野本人にあれこれ疑問をぶつける企画だ。前編では、「最後の楽園」や「蝶々-San」、「恋は桃色」「ハニー・ムーン」の制作秘話、細野が手応えを感じた曲のエピソードなどを聞いた。しかし、取材の後半の突入すると安部の質問はだんだん脱線していき、それが細野の知られざる一面を炙り出すことに……。

取材・/ 加藤一陽 題字 / 細野晴臣 イラスト / 死後くん

毎日ダラダラ生きてるのが好き

──前回から、安部さんが細野さんに聞きたいことを直接質問していく企画をお届けしています。今回はその後編です。

安部勇磨 細野さんって、日常的に「曲を作りたいな」と思うタイプですか?

細野晴臣 いやいや、作るって決めなきゃできないの。陶芸作家みたいなもんで、陶芸って窯に火を入れて焼くでしょ。僕にとってはその火を入れないと制作のモードに入らない。だから普段はミュージシャンでもなんでもない。ただのおじいちゃんだよ。毎日ダラダラ生きてるのが好きだね。

安部 そのスイッチはどうやったら入るんですか?

細野 スケジュール(笑)。

ハマ・オカモト 一貫して「スケジュール」(笑)。

安部 自分から「出すぞ!」みたいなときってあまりないんですか?

細野 「HoSoNoVa」の頃はそうだったね。部屋でずっと曲を作ってたんだよ。それでいっぱいできたんで、アルバムにしたんだ。今は逆なの。「アルバム作りませんか?」というプレッシャーが1年くらいずっと続いてて(笑)。

安部 さっき「ダラダラ生きているのが好き」とおっしゃいましたけど、細野さんがダラダラしていても、その中から何かを得て、それが音楽に変わっていくんだろうな。ダラダラするときって、どんな時間の過ごし方をされてるんですか?

細野 昔はゲームにハマって、スタジオまで持ってったくらいだよ。今はゲームに興味はなくて、その代わりパソコン。YouTubeって世界の窓だと思ってるから、Macでいろんな情報を探してる。特にコロナ禍以来、ずっと映像を溜めてるんだよ。陰謀論とかも大好きだからね(笑)。

“人間”細野晴臣の習性

安部 以前、「細野観光」(※細野晴臣のデビュー50周年を記念して行われた展示会。東京、大阪、埼玉で実施された)があったじゃないですか。そこで細野さんのさまざまな私物が展示されていたことからもわかる通り、細野さんっていろんなものをストックしている。ああいう癖はいつ頃からあったんですか?

細野 遺伝だね。あと、僕が知らないものまで残っているのは、母親のせいなんだよ。捨てなかったから。

ハマ 確かにご自身で残すようなものじゃないもの、いっぱいありましたよね。

安部 そうそう! 「なんでこれが残ってるんだろう」みたいなものもあった。

細野 捨てるのが下手で。

安部 「使うかも」みたいなことなんですか?

細野 そうなんだよ。割り箸まで取ってあるしね。最近はコンビニでごはんを買うのをやめたんだけど、コンビニでごはんを買うと、プラスチックのトレーが付いているでしょ。ああいうのを全部取ってある。

安部ハマ えええええ!?

安部 使わないのに?

細野 いや、使ってるんだよ。

安部 何に使うんですか? ごはんを食べるときに?

細野 そうじゃないんだ。台所のシンクの底に直に物を置きたくないから、そこに敷いているの。すごく神経質なんだよ。

ハマ シンクにコンビニのトレーを敷いて、その上にコップを置いたり?

細野 そう。みんなやらないんだね。だからボコボコしているものはすぐ捨てる。シールが付いていたりすると、もうイヤなんだよね。キレイにするか、そのまま捨てちゃう。あと、使えそうなプラスチックの容器があるでしょ。小物入れに使えるかもしれないし。輪ゴムも取っておくから。

安部 「捨てたほうがいいんだろうけど」とは思うんですか?

細野 思うよ。でも半々だね。「なんだろう、この癖」とは思ってて。

ハマ 面白いですね。細野さんの音楽家の側面とは違う、人間本来の面。

安部 その“人間”の部分もあって、音楽が形成されるから。

細野 コロナの2、3年の影響ってすごくあるんだよ。だってあの頃は、コンビニでごはんを買うしかなかったから。自分で料理をするわけでもないしね。それでそういうものが増えたんだ。昔からの癖じゃないんだよ。あとね、2人はペットボトルは取っておかないよね?

ハマ まあ、溜まったら捨てるって感じですかね。

細野 あれ、いい音がするんだよ(笑)。

安部 あー(笑)。ポンポンって叩くってことですか?

細野 うん。あとはトイレットペーパーの芯ね。

安部 どう使うんですか?

細野 糸電話が作れるなって(笑)。

安部ハマ あははは!

安部 普通だったら捨ててしまうようなものも、「楽器にならないかな?」って(笑)。

細野 そういうものはそう多くはないんだけど。ほかは全部平気で捨てちゃうし。それとね、ペットボトルのお茶を買うでしょ。口をつけて車で飲んだりするじゃん。それ、帰るともう中が汚れてんだよね。雑菌が増えてる。それが嫌だから、小さいペットボトルにお茶を小分けにして車に入れておく。そうすると本体は汚れない。でも厄介なのは、今度は小さいペットボトルをいっぱい集めておくという癖がね……。

ハマ マトリョーシカみたいになって(笑)。

細野 だから蓋も取ってある。つまり、なんて言ったらいいんだろう……カラスが針金のハンガーを集めたり、アライグマが何でも集めてきたりするでしょ。それと同じだよ。自分じゃよくわかってないけど習性だね。

ハマ 想像以上でしたね。細野さんに収集癖があるのは知ってましたけど、そのレベルなんだ。すごいな。

安部 そういう几帳面なところ、音楽でもあったりしますか?

細野 あるある。ずいぶん前だけど、安田成美さんの「風の谷のナウシカ」をレコーディングしたときに、時間に制限がないので、何度もミックスを修正して。何バージョン作ったかわからないくらいデータがあるんだよね。それを自分で顧みて、「漆磨きみたいなもんだな」と。職人なんだよね。職人気質があることを、より最近自覚しているよね。

ハマ 細野さんの周りのミュージシャンにも、その気質がある方は多いじゃないですか。誰に影響されたというよりも、みんなそういう感じなんでしょうね。山下達郎さんや大瀧詠一さんも、インタビューなどを拝見すると、締め切りがあるから制作が終わってるだけで。なければ一生ミックスやってるっておっしゃってるし。細野さんもそういうことですよね。

細野 音楽を作る人であれば、その気質はみんな持っていると思う。画家もそうだと思うし、どこで終わらせたらいいかわからないよね。

安部 細野さんが音楽制作で一番シビアになるのは、ミックスですか?

細野 ミックスだね。それがあまりにも度が過ぎてて、ミックスをやりたくないんだよ。いろんな可能性があるのに、最終的に1つを選ぶのは酷だなとも思う。そのときは「こうすることでよくなる」って自分で思っていても、あとで聴くとわからないこともあるし。なんでもそう。作るものって、最後は1つになるでしょ。でも作る前は、無限なんだよ。そのときが一番楽しいんだよね。

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読者の反応

細野晴臣 Haruomi Hosono _information @hosonoharuomi_

【連載】「#細野ゼミ」補講開講中🖋

テーマの「細野さんに聞きたい、あの曲のこと、この曲のこと」から大脱線❗️

ゼミ生・安部勇磨が根掘り葉掘り尋ねる、“人間”細野晴臣の習性

#細野晴臣 #安部勇磨 #ハマ・オカモト

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