EGO-WRAPPIN'インタビュー|アナログ2タイトル同時リリース、来たるべき最新アルバムに向けて放つブランニューサウンド

EGO-WRAPPIN'が7月2日に12inchアナログ「Treasures High / AQUA ROBE」と7inchアナログ「Sunny Side Steady / Sunny Side Dub -Prince Fatty Dubwise-」を同時リリースした。

1996年の結成以来、多様なジャンルを昇華した独自のサウンドをクリエイトし続けてきたEGO-WRAPPIN’。12inchアナログには、90年代初頭のクラブサウンドの雰囲気が漂う「AQUA ROBE」と、アフロテイストのダンスナンバー「Treasures High」を収録。一方の7inchには、ライブ定番曲「サニーサイドメロディー」をロックステディにセルフリメイクした「Sunny Side Steady」と、UKレゲエシーンのプロデューサー / エンジニア、プリンス・ファッティによる同曲のダブミックスが収められる。

現時点での最新アルバム「Dream Baby Dream」のリリースから早6年。ニューアルバムを熱望する声が高まる中、待望の新作をリリースする2人に話を聞いた。

取材・文 / 宮内健撮影 / 斎藤大嗣

大盛況だった中国での初ワンマン

──ここ数年、EGO-WRAPPIN'は精力的なライブ活動を展開してきましたよね。最近のトピックでいえば、中国・上海と北京にてワンマンライブを行いました(6月5日に北京、7日に上海にて単独公演を開催)。

中納良恵(Vo) 17年前に上海のイベントに出演したことはあったんですけど、ワンマンは初めてで。中国でライブをやるときには、事前に歌詞の審査があるんです。上海は4月に審査が通ったけど、北京がギリギリまで通らなかったんですよ。だから事前告知があまりできなかったんですけど、思った以上にお客さんが来てくれて。いやー、感動的なぐらいに盛り上がりましたね。

──ある意味、観客のほとんどが初めてEGO-WRAPPIN'のステージを目撃するわけですもんね。

中納 だから冒頭の数曲は、お客さんもちょっと構えてる感じでしたね。

森雅樹(G) うん。体を揺らすとか、そこまでの感じにもなってへんというかね。

中納 私たちも最初のほうは、中国のお客さんのノリってこういう感じなんかな?と思って演奏してたんですけど、途中から「行ってまえ!」と思ってお客さんを煽りまくったら、めちゃくちゃ盛り上がってくれて。フロアにも降りてしまいました(笑)。

EGO-WRAPPIN'

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──それは大丈夫だったんですか?

中納 たぶん(笑)。煽りに煽って盛り上がってたときに、舞台袖のマネージャーをちらっと見たら無言で頷いてたので。これは行ってまえと。フロアでハイタッチしまくって、みんな喜んでくれましたね。お客さんの反応も新鮮で、ちょっと不器用そうなメガネ男子が「今、何が起こってるんだ!?」みたいな感じで、目を見開いて固まっていたり。あと裏打ちの曲をやっても、皆さん表のリズムで乗るんですよね。そういうのも全部、めっちゃかわいかったー!

──この日のライブが、ロックンロールの原体験のように感じた人も多かったのかもしれませんね。

中納 そうだとうれしいですけどね。とにかく今回はジャパニーズスタイルを押し通してみました。

凄腕&キャラ立ち抜群のサポートメンバー

──その中国ツアーも同じメンツでしたが、ライブのサポートメンバーもだいぶ定着していますよね。以前から参加している真船勝博(B)さん、武嶋聡(Sax)さん、icchieこと市原大資(Tb)さんに加えて、2020年から伊藤大地(Dr)さん、2022年からTUCKER(Key)さんが加わって。

 普段、都内でリハーサルしているときなんかは音楽を通してのコミュニケーションしかないですけど、ツアーやフェス、海外公演なんかは一座として移動するから、メンバー同士の結び付きがより強くなりますね。各々のコミュニケーションも生まれてきて、TUCKERさんが大地くんと博物館に行ったり、icchieさんとは骨董市を覗きに行ったりとか(笑)。

中納 TUCKERさんは1人でごはん食べたりするのが苦手みたい。寂しいんかな?(笑) だから、いつも誰かを誘ってますね。私、TUCKERさんって1人でサウンドを組み立てていって、1人で成立する音楽をやってきた人というイメージがあったから、森くんがTUCKERさんをバンドにお招きしたいって最初に提案してきたときに「大丈夫なんかな?」と思ったんです。でも、TUCKERさんが入った結果、バンドがすごくよくなって。だから、やっぱり森くんの人選はすごいなと思った。私じゃわからへんかった。

EGO-WRAPPIN'

EGO-WRAPPIN'

──TUCKERさんもそうだし、幅広いジャンルのアーティストを横断して演奏する伊藤さんのように、演奏が抜群なのはもちろんのこと、異分子というか、違った視点やセンスみたいなものがバンドに加わることで化学反応が起きるというか。現メンバーになってからの数年間で、バンドとしての表現の幅がさらに多彩になった印象があります。

 メンバーみんな音楽が大好きやし、ジャンル問わずなんでも聴きますからね。バラードも聴けば、ダンスミュージックも聴く。だから、いろんな表現をしたいと思うし、そういう表現ができる場所を作っていきたい。バンド主催のライブで言えば、春はホールでしっとり聴いてもらって、夏は野外でダンスミュージック中心に踊ってもらう。そして、年末はルーツミュージックに根ざした、大所帯のオールドスタイルなサウンドで盛り上がってもらって。EGO-WRAPPIN'には、いろんなタイプの楽曲があるから、お客さんに広く楽しんでほしいなと思ってます。

──そういう意味でも、春に開催された「HALL LOTTA LOVE ~ホールに溢れる愛を~」は、うっとりと聴き惚れるようなナンバーがたくさん聴けた素晴らしいツアーでしたよね。

中納 最近は曲順とかも全部森くんが決めてくれるし、いろんなことを安心して任せられるというか。私は私で、自分の立ち位置にグッと集中できるようになって、歌に徹することができる。昔とはちょっと変わってきた感じはしますね。「この曲をやりたい」とか細かい部分は相談したりするんやけど、全体の構成は森くんに委ねてるから、それをみんなが汲み取っていく。メンバーみんな音楽に対して真面目やし、与えられたテーマに対して「どう表現したらいいんやろう?」って真剣に向き合ってくれて。今はそのバランスが、すごくいいなと思いますね。

EGO-WRAPPIN'

EGO-WRAPPIN'

──エゴの2人はもちろん、ステージに立っているメンバーたちの佇まいが、観ていて楽しいというか。全員が全員キャラ立ちしてるし、バラバラなルーツを持ち寄って演奏してる感じが、今のEGO-WRAPPIN'にハマっている気がするんですよね。このメンツだったら間違いなく楽しいだろうなという安心感があるし、意外性も含めて驚かせてくれるだろうという期待を感じさせてくれる。

中納 すごくわかります。それこそ大地くんも武嶋くんも、真船くんも、いろんなミュージシャンと一緒にやっていて。例えばハナレグミとはライブのサポートメンバーが重なることもあるんですけど、どちらも観てる人に言わせると全然違うらしいんですよ。楽曲が違うのは当然としてあるけど、見え方も聞こえ方も全然違うみたいで。すごく不思議なんですけど。