結成15周年!SILENT SIREN「SHE SCREAM ROCK」開催記念インタビュー

SILENT SIRENが結成15周年を迎える2025年9月7日、神奈川・KT Zepp Yokohamaで新たなライブイベント「SHE SCREAM ROCK」を開催する。初回はガールズバンドの盟友・SCANDALをゲストに迎えた初のツーマンライブだ。

メンバー自身で会社を立ち上げ、活動休止を挟みつつも真摯に音楽と向き合い続けたSILENT SIREN。音楽ナタリーは結成15周年に向けて動き出した3人にインタビューを行い、サイサイらしさと時代の流れをバランスよく取り込みながら成長し続けるバンドの今に迫りつつ、「一生青春」の決意を込めた「SHE SCREAM ROCK」への思いを語ってもらった。

取材・文 / 阿刀“DA”大志撮影 / 星野耕作

活休~会社設立~活動再開を経て

──活動再開から1年以上が経過していますが、改めて言わせてください。よくぞ戻ってきてくれました。活休直前に行ったインタビューではまだ言えないこともあったかと思いますが、当時、すぅさんはバンド再開の画は思い描けていたんですか?

すぅ(Vo, G) いや! あのときは私も本当にわかんなかった。バンドを手放したくないという思いはあったから何かしらの形で帰りたいとは思ってたけど……いつになるのか、それがどういう形なのかっていうのは自分たちもわかんなかった。

すぅ(Vo, G)

すぅ(Vo, G)

山内あいな(B) 確信はなかったけど、ファンのみんなを見ていて「また絶対に戻りたいな」という思いだけはありました。でも、その確証はない。「いつなんだろうな」くらいの気持ちでしたね。

──ゆかるんさんは活休中、どんなことを考えていましたか?

黒坂優香子(Key) 活動休止とともに自分たちで会社を立ち上げて新しいことを始めたので、それまで全然触ってなかったパソコンを使い始めたり、事務的なことも自分たちでやるようになったり、初めてのことが一気に増えたんですよ。最初の頃はもう、そっちでいっぱいいっぱいでした。

山内 社会人1年目みたいな(笑)。

黒坂 わからないことはとにかく調べまくって、得た情報をみんなでシェアして。そうやって学びながら、ちょっとずつ成長するっていう感じでした。タイピングのスピードも最初は死ぬほど遅くて(笑)。

──今はだいぶ速いんじゃないですか?

黒坂 もう、「カタカタカタカタ、ターン!」って(笑)。

山内 エンターキーだけ強いです(笑)。

──活休中の時間は3人にとってどんな意味がありましたか?

すぅ 私たちはSILENT SIRENという大切なものを守るために事務所から独立して、自分たちで会社を経営していかなきゃいけなくて。そういう「自分たちが動かなかったら誰も動いてくれない」という状況が初めてで……。でも、初めてだったからこそ、バンドが活動してた頃とはまた別の形で結束力が強くなったし、「これまで音楽ができてたことって当たり前じゃなかったんだな」と再認識できた時間でもありました。あとは、一時的にバンドから離れたことで、自分たちがどれだけサイサイのことが好きだったのか、メンバーのことをどれくらいリスペクトしていたのか、改めて実感しました。

──あいにゃんさんは、活休中にどういうことを考えながら個人活動をしていたんでしょう?

山内 活動休止してバンドが動かなくなったときは、正直、「自分は何者になるんだろう……?」という不安に襲われました。でも、すぅが言ったように、活動休止してからも変わらずメンバーと顔を合わせていたことがけっこう励みになったというか。あと、会社を立ち上げたことには、音楽に留まらず、個々のいろいろな可能性を見つけていこうという意味もあったので、その中で「今、自分に何ができるのか」をまず考えましたね。だから、ベース1本というよりも、バンドをやっていたからこそこれまでやらなかったこと……絵とか、もともと興味があったものにチャレンジしていこうという気持ちでした。そういったことを経て活動を再開したので、よりベースのありがたみや楽しさに気付けたし、すごく大事な時間だったと思います。

山内あいな(B)

山内あいな(B)

「今はがんばってTikTokをやってます」

──こうしてまた音楽シーンの表舞台に戻ってきて、どんな変化を感じていますか?

すぅ これはちょっと角度が違うかもしれないんですけど……自分たちもお客さんも歳を重ねたなと(笑)。

──まずそこですか(笑)。

すぅ ずっと応援してくれている人たちが私たちと一緒に歳を重ねてくれているというポジティブな面もあるんだけど、それと同時に、バンドが活動していないと新しいお客さんは来ないという当たり前のことも感じて。ライブを止めず、音楽を生み続けることが大事なんだということを改めて思いました。あと、流行りのスピードが平成の頃よりもずっと早いなって。あの頃は、「こういうテーマで、こういう曲調でいこう」っていう感じで曲作りをしてたけど、今はそうじゃなくなってる。

──というと?

すぅ 昔は、「サイサイといえば四つ打ち」というイメージがあったけど、今の音楽シーンは全然そういう視点じゃなくて、いかにギミックを入れるか、いかに文字にしたときにインパクトを与えられるか、という視点に変わってきているから、悩むことが増えたかもしれない。

黒坂 あと、サイサイのデビュー当時にはまだなかったTikTokというものが今はあって、ここでバズると一気にいろんな人に認知されて、メディアにもたくさん出られるようになるじゃないですか。それに合わせて、曲も短いほうが再生されやすいとか、そういうところも以前とは全然違うと思いますね。しかも、「最近TikTokでこの曲流行ってるなー」と思ってたらもう次の曲に流行りが移ってたりして。だから、TikTok世代の若い人たちにもサイサイを知ってもらうために、がんばってTikTokの更新頻度を上げてみたりしています。そうやって、音楽の届け方もCDを作って売るだけじゃなくて、SNSから広げていくことがすごく重要になっているから、私たちも変化していかなきゃいけないなとすごく感じています。

黒坂優香子(Key)

黒坂優香子(Key)

──時代に追いつくことと、自分たちのスタイルを貫くことのバランスは、どう取っているんでしょう?

すぅ これは半々かもしれないですね。感情的には、TikTokでバズるかどうかで音楽を作るのってバンドマン精神に反してるような気がして。私は正直、TikTokに対して最初はちょっとした違和感があったんですよ。“映え”とか、曲の一部だけを切り取って流行ることに対して。「あ、あの曲だよね。でもフルは知らない」みたいな。「いや、CD買ってよ!」「ライブ来てよ!」って思ってた。でも、Ken(Yokoyama)さんとか、WANIMAさんとか、BUMP(OF CHICKEN)さんとかがサブスクを解禁し始めて。あの頃(2015年)に、KenさんがMステに出たのとかもめちゃくちゃ熱かったじゃないですか。本人はライブシーンをすごく大事にしている人だから葛藤があったとは思うけど、若い子たちにも知ってもらいたいし、「バンドってカッコいいんだぞ!」っていうことを知ってもらうためにメディアに出始めたと思うんです。そういう姿を見ていて、「これをやらないからカッコいい」じゃなくて、「バンドがカッコいいっていうことを知ってもらうためには、今あるツールをうまく使っていかないとどんどん衰退していくだけだ」という考えになってきて。それで今はがんばってTikTokをやってます(笑)。