音楽ナタリー編集部が振り返る、2021年のライブ
赤い公園、Maison book girl、超特急、まふまふ、Perfume、さくら学院、ZORN、百田夏菜子、ウォルピスカーター、ヤバイTシャツ屋さん、カネコアヤノ
2022年1月17日 21:30 3
コロナ禍2年目となった2021年。第4波・第5波の急速なウイルス感染拡大の影響により、大型フェスを含む多くのライブが相次いで中止や延期となりました。しかし一方で、この先どうなるのかと思われた有観客ライブも、各種ガイドラインに基づく徹底した対策のもと徐々に再開。11月には大規模イベントでの人数制限も撤廃されました。世界的に猛威を振るうオミクロン株により、年が明けてから国内の感染者数がまた急増しており、まだまだ予断を許さない状況ではありますが、ライブエンタテインメントは本格的な復活を目指して一歩ずつ歩み始めています。
この記事ではそんな2021年に開催されたさまざまなライブの中から、音楽ナタリーの編集部員たちが個人的に印象に残ったライブを時系列に沿って振り返ります。
目次
- 赤い公園(5月28日)
- Maison book girl(5月30日)
- 超特急(6月4日)
- まふまふ(8月1日)
- Perfume(8月14、15日)
- さくら学院(8月29日)
- ZORN(9月12日)
- 百田夏菜子(10月16、17日)
- ウォルピスカーター(10月24日)
- ヤバイTシャツ屋さん(11月14日)
- カネコアヤノ(11月29日)
赤い公園「赤い公園 THE LAST LIVE『THE PARK』」2021年5月28日 中野サンプラザホール
文 / 田中和宏
私が初めて
赤い公園の解散ライブは現地での取材が叶わず、配信で観ました。バンドの解散は実に残念だったけれど、解散を決めたメンバーの言葉にはどこか潔さがあって、当日のステージで見せる表情は朗らか。実際にはいろんな思いが巡ったんだろうと思いますが、ステージにいる全員の愛が音に宿っているような、そんな演奏でした。ボーカルの石野理子さんは、先代Voの佐藤千明さんとは違った形で新旧の楽曲を表現していたし、とても凛々しかったです。
解散ライブには、観ている側としてもいろいろな思いが巡ることはありました。それでもライブ中はパフォーマンスに釘付け。こんなに素晴らしいライブをするバンドがこの日に解散するなんて信じられない気持ちだったけど、メドレーを含む全29曲に赤い公園の歴史と津野さんの人生が詰まっているような感じがしました。本当に素敵な時間をありがとう。いつかまた。
Maison book girl「Solitude HOTEL」2021年5月30日 舞浜アンフィシアター
文 / 高橋拓也
終演後に、すでにグループが“削除 ”されている(活動終了している)ことが告げられた本公演。6年半近く活動を追ってきただけに、突然の別れに相当落ち込んでしまったのですが、“ブクガだからこそできること”、そして“活動を終えるためにやらなければならなかったこと”が的確に示されたワンマンでした。
「Solitude HOTEL」は2015年3月にスタートしたブクガの主催企画で、初回「B1F」ののち「1F」からワンマンシリーズ化し、回を重ねるごとにタイトルの階数が増えていきました。2017年12月に行われた「Solitude HOTEL 4F」では未来 / 過去 / 現在を行き来するというコンセプチュアルな演出を展開。「4F」以降はポエトリーリーディングや映像のみならず、ライブという枠にとらわれないギミックが盛り込まれていきます。「10F」にあたる最後の「Solitude HOTEL」ではさらにスケールアップした、現実世界にも影響を及ぼすような演出が用意されました。2021年4月開催の「Solitude HOTEL 9F」終了後、グループのオフィシャルサイトでは謎のカウントダウンがスタート。時間が経つにつれ一部ページが開けなくなる、表示が崩れてしまう、といった変化が起きました。この時点で活動終了は発表されていませんでしたが、多くのファンが不吉なものを感じていたようです。
ライブ本編、前半7曲ではメンバーが暗がりの中でパフォーマンスを繰り広げているように見えましたが、実は事前収録した映像をスクリーンに投影する、という仕掛けが施されていました。さらに「夢」披露時には、ハンドクラップのみに差し替えられたバックトラックを使用。ほかにも終わりや崩壊を想起させる演出が随所に見られます。そして暗闇の中披露されたラストナンバー「last scene」の途中でメンバーはいなくなり、突如楽曲がストップして終演。会場出口では青い紙が配布され、そこに書かれたURLにアクセスすることで、来場者はグループの活動終了を知ることになりました。
振り返ると最後の「Solitude HOTEL」はサイトのカウントダウンで始まり、“HPにアクセスする”という観客のアクションをもって終了する公演だったように思います。一連の演出は「終わりは覆せない」「ただ見守ることしかできない」という恐ろしさを突き付けられるようでした。
ちなみにこの公演は「last scene」という曲をSEにしてスタートし、同じく「last scene」が途切れる形で終了します。冒頭と結末がつながるような構成は、このライブの中でブクガは永遠にループし続けている……というふうに読み取ることもできそうです。HPに書かれている「あなたは完全にそれを見つけました」の“それ”は、「Solitude HOTEL」の中でループし続けるブクガを指しているのかもしれません。
超特急「BULLETTRAIN ARENA TOUR 2021 SPRING『Hoopla!』」2021年6月4日 ぴあアリーナMM
文 / 三橋あずみ
私がこれまでに取材してきたライブの中で“客席を観ている時間”がきっと一番長かったのが、
コロナ禍において有観客のライブイベントが軒並み中止・延期となった2020年を経て、感染状況を注視しながらもアーティストとファンとの“再会”の機会が増えてきた2021年。6月に神奈川・ぴあアリーナMMで行われた「Hoopla!」もまた、超特急にとって約1年4カ月ぶりの有観客公演でした。超特急の5人と8号車(超特急ファンの呼称)のひさびさの対面を見届けるにあたって1つ気になっていたのは、感染拡大防止のための措置として観客の発声が禁止されたこと。超特急のライブにおいて“もう1人のメンバー”である8号車のコールは欠くことのできないピースであり、客席の1人ひとりが声の限りにメンバーへ送るエールが舞台上のパフォーマンスの爆発力を何倍にも大きくする瞬間を、これまでに何度も目の当たりにしてきたからです。
コールのない超特急のライブ……いったいどうなってしまうんだろう。私のそんな懸念は1曲目にして粉々に吹き飛ばされます。ポップアップで勢いよくステージに現れた超特急がオープニングナンバーに選んだのは、2020年12月にリリースされた「What's up!?」。有観客公演ではもちろん初披露ながら、8号車はぴったりと息の合ったペンライトの動作で楽曲を彩りました。あまりにも一体感のある動きに「どこかで予習した!?」と驚きつつ、それぞれが両手のペンライトの光に込めた思いが集まり広がった壮観は、無条件に心を躍らせるものでした。
どんな状況下にあっても積極的にライブを楽しむ心を忘れない8号車の真価が発揮されたのは、前半のハイライトとなったメドレーコーナー。タイトル通り“手を叩く”ダンスが特徴的な「Clap Our Hands!」、メンバーが涼しげな表情でパラパラを踊る「PUMP ME UP」など、印象的な振り付けの曲が目まぐるしく展開されるこのメドレーに8号車は即座に対応し、ステージ上の5人と寸分違わぬ手振りで盛り上がります。楽しいムードが充満する客席にどうしても目が行ってしまうため、レポート原稿でこのセクションに触れる際は「8号車」を主語に置き、文章を組み上げることに決めました。
そんな客席の熱を受け取った超特急のパフォーマンスが活気に満ち、いつにも増して輝いていたのは言うまでもなく、MCでタクヤさんが口にした「(有観客ライブができない)1年半、自分たちの時間は止まったままだった」という言葉や、ユーキさんの「やっぱり俺らの居場所はライブをしている今、ここなんだって痛感しました」という言葉にも、メンバーとファンの間に結ばれた強固な関係性が表れていたように思います。
無観客配信というライブの形に心も体も慣れつつあったときに、客席も含めたライブ空間をまるごと楽しむことの醍醐味、“現場”でしか得ることのできない高揚感を再認識させてくれたこの日のライブは、2021年の取材活動の中で印象に強く残るものとなりました。誰もが不安を感じることなく、“現場”を思い切り楽しめる日が早く戻ってくることを願って。
まふまふ主催「ひきこもりたちでもフェスがしたい!~世界征服II@東京ドーム~ONLINE」2021年8月1日 東京ドーム
文 / 倉嶌孝彦
「NHK紅白歌合戦」にも出演し、2021年に大躍進を遂げたインターネット出身のアーティストが
これら2公演は本来2020年3月に有観客で実施予定だったが、まふまふは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で開催自粛を決断。無観客でのライブ配信にもかかわらず、まふまふは東京ドームを会場に単独公演を完遂した。さらに8月の主催ライブも東京ドームを会場に無観客でのライブ配信を行うと発表し、ファンを驚かせる。
ファンの間で「ひきフェス」と呼ばれる「ひきこもりたちでもフェスがしたい!」は、まふまふが2017年から開催しているもので、これまでさいたまスーパーアリーナ、幕張メッセ、メットライフドームといった国内有数の大規模会場で行われてきた。このライブには、まふまふと親交の厚いそらる、うらたぬき、志麻、となりの坂田。、センラ、天月-あまつき-、少年T、あらき、un:c、めいちゃん、luzといった“仲間たち”が出演。インターネット出身のアーティストとして最大規模の会場でのライブに挑んだ。ライブ当日、東京ドームの客席1つひとつにペンライトがセットされ、ステージから見渡す景色はまるで満員のドームそのもの。さらにこの公演はVeepsやWeiboを通じて海外在住者向けにも配信されており、ドームの客席以上の観衆がこの公演を見守ることになった。
ライブタイトルに「世界征服」とあるように、まふまふはかなり早い段階から「世界」という言葉を口にし、ワールドワイドであることを目標に掲げてきた。東京ドームという国内最大規模の会場を制覇し、「NHK紅白歌合戦」にも出場するなど破竹の勢いでその知名度を上げているまふまふが世界に手をかける日はそう遠くないだろう。
Perfume、さくら学院、ZORN
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