「国宝」吉沢亮・横浜流星・李相日が半年ぶり集結、今も続く熱の理由は「映画と美の力」

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映画「国宝」のトークイベントが、本日12月16日に東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で行われ、キャストの吉沢亮横浜流星、監督の李相日が登壇した。

「カンヌ監督週間 in Tokio 2025」での「国宝」トークイベントにて、左から吉沢亮、横浜流星、李相日

「カンヌ監督週間 in Tokio 2025」での「国宝」トークイベントにて、左から吉沢亮、横浜流星、李相日

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本イベントは、同映画館で開催されている特集上映「カンヌ監督週間 in Tokio 2025」内で行われたもの。世界各国の監督たちを見出してきたカンヌ国際映画祭のセレクションである「監督週間」の最新ラインナップを紹介する上映企画で、第78回カンヌ国際映画祭に出品された本作も上映された。

吉田修一の同名小説を映画化した「国宝」は、任侠の一門に生まれながら歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生を捧げる立花喜久雄の一代記を描いた物語。吉沢が喜久雄、横浜が歌舞伎界の御曹司・大垣俊介を演じた。6月の全国公開から現在までロングランヒットが続き、11月末には邦画実写作品の歴代興行収入ランキング1位の記録を塗り替えた。

映画「国宝」場面写真

映画「国宝」場面写真 [高画質で見る]

「大河お疲れ」半年ぶりにそろった3人

吉沢・横浜・李がそろうのは6月に行われた初日舞台挨拶以来。イベント冒頭、吉沢は「公開から半年経って、またこうして皆様の前に立ててうれしいです。熱が落ちないまま、いろいろなプロモーションに参加させていただいていて、この作品が多くの方に広がっていると実感しています」と感慨深げに挨拶する。横浜は「また皆さんと作品の話ができてうれしいです」と続けた。すると李が横浜の肩を抱き「横浜くん、待ってたよ」と声を掛け、さらに吉沢も肩に手を回して「大河お疲れ」と「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の主演を務め上げた横浜をねぎらう一幕も。李は司会を務めるカンヌ国際映画祭「監督週間」アーティスティック・ディレクターのジュリアン・レジとの再会にも触れ、「再会組が多いので、今日はラフに行きましょう」と笑顔を見せた。

大河ドラマの主演を務め上げた横浜流星(中央)をねぎらう吉沢亮(左)

大河ドラマの主演を務め上げた横浜流星(中央)をねぎらう吉沢亮(左) [高画質で見る]

レジは、本作を監督週間に選出した理由を説明する。「こうした歴史的なメロドラマは近年とてもまれで、壮大な原作小説を映画化しようという試み自体が少なくなっていることもあって惹かれました」と前置きしつつ、「歌舞伎の映画だと思って観始めたら、ヤクザのシーンから始まって驚いた。でも全編を通してアクション的な動きが多く、とても素晴らしかった」と評価。さらに「父と子の関係性の悲しくも感動的な描き方」、そして「李監督の歌舞伎の映し出し方がディテールに忠実で、なじみのない人にもよく伝わった」点を挙げ、「尊敬する監督の作品を、こうしてカンヌで上映できてよかった」と賛辞を贈った。

トム・クルーズの「国宝」称賛が止まらない

先日、アメリカで本作の上映会をトム・クルーズが主催したことにも話題が及んだ。現地でクルーズと対面した李は「彼は映画に対する熱意と真面目さが本当にすごい。会った瞬間からずっと『国宝』がいかに素晴らしくて、美しくて、役者も素晴らしいかを語り出して止まらなかった。僕も言いたいことがたくさんあったのに、『Thank you so much』しか言えなかった」と振り返り、笑いを誘う。

初めてのカンヌで得た手応え

カンヌ国際映画祭の思い出を聞かれた吉沢は「初めてのカンヌで、映画の聖地である場所に立てたことがうれしかった。現地の皆さんに日本の映画を観ていただき、深く受け止めてもらえたことが何よりでした」と率直な思いを語り、「面白いことが言えなくてごめんなさい」と照れ笑い。横浜も「役者として憧れの地にこの作品を持って行けたことがうれしかったし、何より観客の皆さんと一緒に観るあの空気感……。作品に没頭したいのに周りの反応が気になってソワソワしました」と述懐し、「上映後に歓声が上がって、ちゃんと届いたんだと胸が熱くなった。また行きたいですね。がんばります」と力を込める。吉沢もその言葉に深くうなずいた。

吉沢亮

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幅広い世代に響いた理由

本作がここまでヒットした理由を問われると、李は「年齢層がとても広いのが特徴」と分析。「若い方にとっては、こういう映画体験が初めてだったのでは。自分自身が『さらば、わが愛/覇王別姫』や『ラストエンペラー』を観て映画の力を浴びた経験があるけれど、この映画でも同じことが起きたのかもしれない」と述べ、「とにかくこの2人が美しいというのも大事な要素だったのでは。映画の力と美の力ですね」とまとめた。これに吉沢は「まあ……我々が美しいので(笑)」と冗談めかしつつ、「歌舞伎という、知っているようで深くは知らない伝統芸能を、映画としてもしっかり描けたことで、歌舞伎ってすごいんだなと感じてもらえたのでは」と熟考しながら解説する。李から「日本文化への誇りに火が着いたみたいな?」と助け舟を出されると、「それです!」と即答した。

李相日

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“自分たちの美”を冗談混じりに自画自賛して笑う吉沢亮(左)と横浜流星(右)

“自分たちの美”を冗談混じりに自画自賛して笑う吉沢亮(左)と横浜流星(右) [高画質で見る]

「やるしかない」短期間で追究した歌舞伎

役者への厳しい演出指導で知られる李だが、レジから「撮影の大変さ“正直に”教えて」という質問も。吉沢は「何回もやらされるのに、なぜやらされるのかがわからない(笑)。監督は『もう1回』しか言わない。でもそれは厳しさでもあり愛情で、自分でわかるまでやらせるということなんだなと受け止めていました。……なかなか絞られましたけど」と苦笑混じりに回想する。李作品には2度目の出演だった横浜も「最初は暗闇の中で答えを探しているようだった」と振り返りながら、「でもここまで役者を信じて、妥協せず向き合ってくれる監督は多くない。それって幸せですよね」と信頼を口にした。吉沢はさらに「後半になると、監督が『きくちゃん、今からすごく難しいこと言うね』ってうれしそうに近付いてきて。ああ、喜久雄はこういう悪魔と契約したんだなと思いました」と続け、李を笑わせた。

横浜流星

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短期間で稽古を重ねた歌舞伎シーンについては、横浜が「やるしかないんだよね」と即答し、吉沢も「何十年も稽古している本物の役者さんになるのは不可能だと途中でわかった。だからひたすら稽古を重ねて、映像も観て、どうにかでした」と苦労をのぞかせる。横浜は「(映画の役としての)感情を宿すことは大事にしていた」と補足し、吉沢は「様式美としての稽古を重ねてきたのに、本番で監督に『美しくやるのはわかったから、喜久雄でやってくれ』と言われて(笑)。でも、そのおかげで『国宝』という映画の中では歌舞伎役者になれた気がしました」と思いを込めて語った。

左から吉沢亮、横浜流星

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最後にディレクターズカット版の可能性を問われると、吉沢と横浜は「観たい」と声をそろえるが、李は「歌舞伎のシーンはもっとあるけど……やりたくないな(笑)」と渋る。吉沢が「観たい思いもありつつ、僕たちのいいカットを使ってもらっているだろうから恥を晒す感じが……」と尻込みすると、李は「ピークを保ったまま4時間にするのは難しい」と慎重な姿勢を見せ、最後まで和やかなムードの中でイベントは幕を閉じた。

「国宝」は全国で上映中。「カンヌ監督週間 in Tokio 2025」は12月25日まで開催されている。

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©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

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