映画「敵」で自身の裸体を見た長塚京三「初めて自分が愛おしく思えた」

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映画「」の記者会見が本日1月14日に東京・日本外国特派員協会で行われ、主演の長塚京三、監督の吉田大八が出席した。

長塚京三

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映画「敵」ポスタービジュアル

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筒井康隆の同名小説をもとにした本作は、長塚扮する元大学教授・渡辺儀助のもとに「敵がやって来る」と不穏なメッセージが届くことから展開していく物語。第37回東京国際映画祭では東京グランプリ / 東京都知事賞のほか、吉田が最優秀監督賞、長塚が最優秀男優賞に輝き、3冠を獲得した。

長塚京三からプレゼントされた象のアクセサリーを胸に付け登場した吉田大八。京三の「三」と「象」をかけているそう

長塚京三からプレゼントされた象のアクセサリーを胸に付け登場した吉田大八。京三の「三」と「象」をかけているそう[拡大]

吉田は「脚本を書き終わって、最初に頭に浮かんだのが長塚京三さんでした。長塚さんに受けていただくことができなければ、かなり困ったことになると、切羽詰まった気持ちでお願いしたんです」とキャスティング経緯に触れ、「儀助という役は妻を20年前に亡くし、10年前に仕事を辞めた元大学教授です。キャリアがありながら、女性や名誉に対してちゃんと欲を持っている。知性と色気がつながっている俳優が、長塚さんのほかに思いつかなかったんです」と振り返る。

長塚京三

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長塚は「スーパーリアルな演技ができれば役作りに苦しむこともなかろうと。監督と2人で2回ほど本読みをして、いわゆる役作りではなく、歳を取るということの実感みたいなものをやり取りしながら、楽しく撮影に入りました」と回想。「ヌードになることにためらいはなかったか?」と問われると「なかったです。浴室でのシーンで鏡の中の自分と目が合った瞬間はある種、感動を覚えました。ごつごつした、美しくない裸体を見て、初めて自分が愛おしく思えました。『ああ、お前も生きていかなきゃ、つらいことはあるさ』って」としみじみと口にした。

吉田大八

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本作がモノクロであることに話が及ぶと、吉田は「古い家屋を舞台にすることは決まっていたので、これまでどういうふうに日本家屋を撮ってきたんだろうと、古い日本映画を観たんです。そうすると当然モノクロ映画が多い。そこで1つ気付いたのは、映画を見始めてしまえば、観客はモノクロだということを忘れるということです。さらに、感覚がより鋭くなり、没入感が増していく。これは使わない手はないなと思って、モノクロにしました」と話し、「モノクロで感度が上がっているので、より食べ物がおいしそうに見えて、編集していてすごくおなかが空きました。撮影前は想像していなかったんですが、“飯テロ映画”にもなったことが副産物でした」と続けた。

長塚京三

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「敵」記者会見の様子。左から吉田大八、長塚京三

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東京国際映画祭のスピーチで「引退かなと思っていた矢先でした。うちの奥さんは大変がっかりすると思いますが、もうちょっとこの世界でやってみようかという気にもなってます」と語っていた長塚。「引退しないように願ってます」という声が飛ぶと、長塚は「自分にできる役がある限りは1本、もう1本ずつとやっていけたらいいなと思っているんです。(妻には)『ごめんなさいね』と」と言って、笑みをこぼした。

「敵」は1月17日より東京・テアトル新宿ほか全国でロードショー。

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©1998 筒井康隆/新潮社 ©2023 TEKINOMIKATA

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