「表現の現場調査団」による「ジェンダーバランス白書2022」の発表記者会見が、本日8月24日に東京都内で行われ、映画分野からは監督・
自由で平等な創作の場を築くため活動する団体「表現の現場調査団」は2020年11月に設立され、5年間の継続を前提に調査・発信に取り組んできた。今回の「ジェンダーバランス白書2022」では美術・演劇・映画・文芸・音楽・デザイン・建築・写真・マンガの分野を対象に、2011年から2020年に開催された賞の審査員と受賞者を集計。9分野すべての賞におけるジェンダーバランス(男女比)の平均値は審査員が男性77.1%、女性22.8%。受賞者が男性65.8%、女性28.4%という結果となった。
映画分野の代表・深田は「映画監督有志の会」にも名を連ね、これまでもハラスメント防止に向けての提言書を日本映画製作者連盟に提出するなど現場の声を届けてきた。今回の調査では日本アカデミー賞をはじめとした18団体(19賞)が調査対象に。日本アカデミー賞などの商業映画を対象とした映画賞、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)のような自主映画を対象とした賞、東京国際映画祭などの海外作品も含む映画祭から選出された。映画分野における審査員の人数合計は男性74.3%、女性25.5%。大賞受賞者は男性84.2%、女性15.4%、副賞など含めた全受賞者は男性82.9%、女性16.8%で不均衡な実態が確認できる。
今回の調査では約4000人いる日本アカデミー会員も審査員扱いとしており、同会員の割合が突出して大きくなっている。これについて深田は「日本アカデミー会員は映画業界に携わる人たちで構成されているので、業界全体の男性の多さに直結する」と考察する。また深田の報告によれば、特に女性受賞者が少数なのは、日本アカデミー賞や毎日映画コンクールといった商業映画を対象とした賞。男性受賞者が100%という賞もあり、商業映画を対象とした女性受賞者は9分野の全体平均値より少ない結果となった。
一方、男性優位には変わらないが、自主映画を対象とした賞は女性受賞者の比率がわずかながら上がる傾向にある。主催が同じところでも女性受賞率は、若手作家を対象としたTAMA NEW WAVEが35%、商業映画含め幅広く対象としたTAMA映画賞が16.1%と大きな差があることがわかった。深田は「低予算映画では女性がたくさん活躍しているのに、商業映画では減ってくる実情を表している」と指摘し、「女性の新人が増えているとも捉えられるが、労働環境の悪さ、女性の働きづらさやキャリアを継続しづらい実情が反映されている」と述べた。
また「女性審査員が多いと女性受賞者が多くなる傾向にあると感じられる」という声に対して、深田は次のように発言。「自分も審査員をすることがありますが、自分が男性であることを意識はしません」と答えたうえで、「ですがそこには無意識のバイアスが働くはず。人間は生まれ持った属性から完全に自由になることはできず、それは絶対に判断に関わってくるはず。『自分が男性であることを意識していない』と主張することは、この議論のうえで大きな意味をなさない」と慎重に語った。そして最後に「表現の当事者の多様さが民主主義の根幹であると考えれば、バランスを整えていくのが直近の課題だと考えます」と伝えて報告を終えた。
「ジェンダーバランス白書2022」は「表現の現場調査団」公式サイトで公開中。深田は「このデータを業界がどう活用していくか(が課題)。公共の財産として使っていってもらいたい」と呼びかけた。
深田晃司の映画作品
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小田原のどか┊8/10-12/22『この国[近代日本]の芸術』連続講義開催 @odawaranodoka
映画ナタリーさんでも本日の記者会見の記事を出していただきました。
映画賞受賞者は男性が約8割、深田晃司ら「表現の現場調査団」ジェンダー比を報告 https://t.co/wycJFIIyx9