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「わたしは光をにぎっている」中川龍太郎、小杉湯メンバーと青学でトーク

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左から中川龍太郎、塩谷歩波、平松佑介。

左から中川龍太郎、塩谷歩波、平松佑介。

わたしは光をにぎっている」のトークイベントが11月11日に東京・青山学院大学で行われた。

本作では祖母の入院を機に上京し、銭湯で働き始める20歳の宮川澪が主人公となっている。松本穂香が澪役で主演。渡辺大知、徳永えり、吉村界人、忍成修吾、光石研、樫山文枝もキャストに名を連ねる。

“特別講義”と銘打った本日のイベントには、監督の中川龍太郎に加え、東京・高円寺にある小杉湯を経営する平松佑介、同所で番頭を務めるイラストレーター・塩谷歩波が出席した。中川はまず製作のきっかけを「以前は大岡山に住んでいて、商店街にやたらおまけしてくれるおばちゃんがいたり、食堂にきれいなお姉さんがいたりして。でも気付いたらどこの店もなくなっていた。すべてがなくなる前に映像として残しておかなければいけないと思ったんです」と明かす。続けて「僕の親友は大学を出てすぐに自殺しました。そのことがあったから『走れ、絶望に追いつかれない速さで』『四月の永い夢』という作品を撮りました。彼と一緒に行った場所がなくなったとき、思い出を切断された気がしたんです」と場所と人とのつながりを語った。

平松は小杉湯に86年の歴史があることに触れ、「今、若い世代がすごく集まってきてるんです。入浴というずっと変わらない文化の中で、変わったことをやっているからだと思う」と経営者の立場から話す。中川も同意するように「ただのノスタルジーだけで運営していくのは不可能だと思う。若い人が集まることでお年寄りも明るくようなコミュニティを築いていくのが大事」と意見を述べた。塩谷はもともと建築家を目指しており、多忙な日常を栄養ドリンクで乗り切っていたが、あるとき体を壊してしまったという。「銭湯にふらっと行ったら、おばちゃんから『寒いわね』みたいなことを言われて涙が出てきたんです。同世代のきらきら活躍している人たちには会いたくない時期でもあって。真っ昼間の銭湯は気持ちがよくて心身ともによくなりました。それで銭湯の魅力を発信したいと思いました」と自身の体験を伝える。

イベントでは学生が登壇者へ質問する時間も設けられた。「なぜ銭湯に人が集まるのか?」という質問に対し、塩谷は「銭湯は弱さを受け入れてくれる場所なんです。みんな裸で同じ風呂に入るから。社長だったり、肌の色が違っても全然関係なくて、1つの浴槽に弱さがにじみ合っている。だから私も救われたんだと思う」と回答。中川も数年前に精神的に病んでいた時期があったと言い、「銭湯に行くとそこにいる人が絶対に話しかけてくれるんです。一人旅の最中に大阪の銭湯に入ったとき、隣にものすごく立派な刺青のお兄さんがいたんですけど、僕が何か言う前にシャンプーとかを貸してくれて。そういう交流ができる場所」と銭湯への思い入れを明かした。

「わたしは光をにぎっている」には、澪がふとしたことからエチオピア人たちのパーティに参加するシーンがある。この場面を入れた理由を聞かれた中川は「ロケハンしてるときに、エチオピアの方がたまたまパーティに参加させてくれて。これは実体験がもとになっているんです。『外国人を孤立させちゃいけない』って言われることがあるけど、そもそもこの言葉にかなり違和感があります。別のものが入ってきてるとかではまったくないし、僕たちは彼らから学ばないといけない」と力強く発言。「この映画の中で明確な希望は描いていないけど、あのシーンには希望のよすががあると思います」と真摯に語った。

「わたしは光をにぎっている」は11月15日より東京・新宿武蔵野館ほか全国でロードショー。

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(c)2019 WIT STUDIO / Tokyo New Cinema

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