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母と娘の間に隠された、ある真実を巡る本作。ドヌーヴが自伝を出版する国民的大女優ファビエンヌ、ビノシュが脚本家として活躍する娘リュミール、イーサン・ホークがリュミールの夫であるハンクを演じた。
是枝らはまず、記者会見に登壇。本作を作ったきっかけを、是枝は「もともとは、楽屋のシーンだけでできあがる舞台を考えていました。実際に映画が動き出したのは、ジュリエット・ビノシュさんから『一緒に映画を作る冒険をしないか』と、2011年に提案をいただいたのがきっかけです」と説明する。是枝とは14年ほどの付き合いだというビノシュは「是枝監督と仕事をすることは数年前からの夢でした。さらにカトリーヌとの共演も夢のようです。『ロバと王女』は私が子供の頃に大好きな映画でした。この映画は私にとって夢の実現なのです」と喜びを語る。またドヌーヴは「私もジュリエットと共演したいと思っていました。彼女の映画はほとんど全部観ています。でも不思議なことに、これまで一度も共演したことがなかったのです。初めての共演はうれしい驚きであり、待ち望んだものでした」とコメントした。
フランスで撮影が行われた本作。是枝との現場をドヌーヴは「彼は英語もフランス語も話さないので、いつも通訳を挟んでの会話です。それも悪いことではありません。大事なことを話すように促されるからです」と振り返る。さらに「とてもユニークで複雑な経験でした。最初の週は少し大変でしたね。でも時間が経つと、質問するときや何か言いたいときは、肝心なことに絞って話すようになります。撮影についてのおしゃべりがないのです。それは特殊なことですが、監督が通訳を通してコメントを伝える前に、彼の顔を見て感じました」とコミュニケーション方法を明かす。ビノシュは「私は撮影前にしっかり準備したいタイプなのですが、『是枝監督は役者が準備することをあまり好まない』と聞いたので、戸惑いました。撮影中は彼が私と一緒に演じていることに気付きました。私と一緒に呼吸し、言葉が理解できなくても、一緒に演じていたのです」と現場を回想した。
これまでの作品で、子役には台本を渡さずに演出してきたことでも知られる是枝。今回リュミールの娘役を演じたグルニエへの演出については「日本での撮影と同じように、事前に台本を渡さずに、『おばあちゃんの家に遊びに行く話だよ』ということだけ伝えて、あとは現場で通訳を介して『おばあちゃんにこう言ってごらん』『ママの言ったことを繰り返してごらん』と、口伝えでセリフを渡して全編撮影しました。彼女の存在が大人たちの芝居にいい風を吹かせてくれたと思っています」と解説する。グルニエは「最初はよくわからなかったけど、途中から何を求められているのかわかってきました。どこに立って、何を言えばいいのかも」と振り返った。
その後是枝らはレッドカーペットイベントとオープニングセレモニーに出席。1030席が満員となった公式上映では、本編終了後に6分間ものスタンディングオベーションが起こった。上映後の囲み取材で是枝は「上映が終わったあとにカトリーヌさんが『とても温かい、いい上映だったわ』と笑顔で語りかけてくれたので、よかったなと思いました。ジュリエットさんも『感情の層が厚い映画になっていて楽しめた』とおっしゃっていたので、まず2人の感想にホッとしました」とコメント。自身は編集のことを気にしながら観てしまったというが「最初のつかみがよくて、笑ってほしいところで笑いが起きていました」と安堵の表情をのぞかせる。また是枝は、記者会見で感じたことを「ヨーロッパの映画祭ってヨーロッパの文化の中で育ってきたものだから、日本を含むアジアの映画ってどこか違う目線で観られている。でも今回は日本映画ではなく、こちら(ヨーロッパ)の土俵で作った作品として観られていると、ちょっと感じました」と話した。
そして授賞式への意気込みを聞かれた是枝は「言葉の選び方が難しいですが、僕はオープニングで満足ですね。作るたびにコンペでの受賞を期待されるのは、作り手にとってはプラスではなくて。今回は軽いタッチで秋のパリの水彩画を描くように作った作品で、観客には日差しにあふれてほかほかするような読後感で劇場を出ていってほしいなと思っています。偏見を持っているわけではないのですが、三大国際映画祭のコンペの受賞って、もう少しこってりした油絵のほうが好まれる傾向があると思うんです。今回はそことは違うところに球を投げているというか」と答えた。
「真実」は10月11日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国でロードショー。ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門の授賞式は、現地時間9月7日の19時から開催される。
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