唐田えりか、濱口竜介ら映画賞の贈呈式に出席、大林宣彦は妻・恭子の受賞祝う
2018年11月30日 21:03
6 映画ナタリー編集部
第42回山路ふみ子映画賞の贈呈式が本日11月30日に東京・ヤクルトホールにて行われた。
山路ふみ子映画賞は、映画人の育成を図り、功績をたたえるために毎年発表される賞。映画賞に輝いた「寝ても覚めても」の監督・濱口竜介は、「本当に光栄です。ありがとうございます。先ほど『“溝口”さん座ってください』と言われて、大変光栄な間違いでした」と巨匠・溝口健二の名前と呼び間違えられたエピソードを交えて挨拶し、客席の笑いを誘う。そして、「新人女優賞をヒロインの唐田さんが受賞しましたが、見つけていただいてありがとうございます」と感謝する。
同作で新人女優賞を獲得した唐田えりかは「すみません、ちょっと泣きそう……」と目を潤ませながら、「このような歴史ある賞をいただき大変うれしいです」と挨拶し、共演者やスタッフへの感謝を述べる。「以前はお芝居が嫌いで逃げていたのですが、濱口監督に出会って、お芝居とは何かということを学ばせていただき、今は前向きな気持ちでいます」と本作に出会って変化したことを明かす。続けて「その瞬間瞬間、嘘がなく生きていたいなと思っています。いろんな方に映画を観ていただけるような女優になりたい、たくさんの人に映画を愛していただきたいなと今この場で思いました」と素直な思いを吐露すると、会場は大きな拍手に包まれた。
映画功労賞は大林宣彦の作品をプロデュースし続けてきた妻の大林恭子に与えられた。恭子は「数日前に80歳になりましたが、人生の大半を大林とともに映画の生活をして参りました。どの作品も毎回必ず想像のつかないサプライズがあるんですね。だから60年近く続いてきたんだと思います。監督もまだ30本は撮ると言ってますので、私のほうが息切れしちゃうのではないかと、がんばらねばと、この賞をいただいたことを大変重く感じております」と笑顔で語る。その後、「私の人生は7歳で経験した空襲の焼け野原から始まっております。そのときに亡くなったたくさんの方たちに守られて生きてきたような気がします。大林が元気でいることが一番と思っていますので、皆さんいろいろな面で応援してください」と真摯に話す。
ここで、客席に座っていた大林がスタッフに支えられながら登場。壇上に上がると、走るような素振りを見せて客席を大いに盛り上げる。大林は恭子を見つめると「今日もきれいだよ」と声をかけ、「何よりうれしい瞬間を過ごさせていただいています」と客席に向かって述べた。大林は妻について「失ったもの、愛おしいもの、記憶して伝えなければならないこと、そういうものについて懸命に夢を追ってきた人です。映画とはプロデューサーが作るものでありまして、私は敷いてくれたレールの上を進み、渾身の力を込めて映画にしてきただけであります」と柔らかな表情で語る。さらに「映画は過去の歴史を変えることはできませんが、未来の歴史を変えることはできます。庶民の味方である映画というものにはそういう力があります。戦争なんかのないみんなが仲良く暮らせる時代を作ってください。大林宣彦と恭子が映画に託する何よりの願いであります」と伝えた。
大矢英代と共同監督した「沖縄スパイ戦史」で文化賞を得た三上智恵は「今、大林さんにお言葉をいただいて感激しております。沖縄から必死になって物を作ってきました。くじけそうなこともありましたが、『映画は未来の歴史を変えることはできる』というその言葉を聞けただけでも宝物のような1日だなと思いました」と感激をあらわにした。
「万引き家族」で女優賞を獲得した安藤サクラは撮影のため欠席し、所属事務所ユマニテの社長である畠中鈴子が代理で登壇した。畠中は安藤を「本当に素晴らしい女優であり、女性です。全身全霊を打ち込んで演じ、現場を大事にする愛にあふれた人です。もっとすごいなと思うのは、演技が絶賛され、今日のような賞をいただいても安藤はまったく変わりません。今日も黙々と(連続テレビ小説「まんぷく」の)福子の役に取り組んでいると思います」と称賛した。続いて、安藤の「すべてのことが今まで通りにはいかない環境の中、撮影を乗り切れたのは是枝組だったからです。女優である前に母であることを受け入れてくださったすべての方に感謝してもしきれません。このご縁に感謝して精進していきたいと思います(※一部抜粋)」というコメントを代読した。
文化財団特別賞に選ばれた草笛光子は、受け取った楯をなでては頬を擦り寄せて喜び、花束を掲げてお茶目な仕草を見せる。「65年前に初めて映画に出させていただいて、先月85歳になりました。素晴らしい方々に出会って素晴らしいお仕事をさせていただいて、元気で楽しく今日まで育てていただいたことは本当に幸せ」とにこやかに女優人生を述懐する。次に「この頃はいよいよ正念場に来たなと思っております。あとの人生は、皆さんにお返しできるような女優で死にたい。おかしくて楽しい女優だったなと言っていただけるようにがんばりますのでお願いします」と高らかに宣言し、会場は温かな空気で満たされた。
うえだ城下町映画祭 @castletownFF
第42回山路ふみ子映画賞
映画功労賞は大林宣彦の作品をプロデュースし続けてきた妻の大林恭子さん。大林宣彦監督も壇上に上がってコメントを。
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